26kp-29
| 前田 侑大(高岡第一3年)投手 173/72 左/左 | |
昨年から全国でも注目を集める左腕ではあったが、この1年で想像以上の成長を遂げた 前田 侑大。今やドラフト会議でも、最初の1回目の入札(1位指名)で名前が呼ばれる可能性すらある存在へと急成長を遂げた。 (投球内容) 3年夏は2試合に先発。23回2/3イニングを投げ、被安打5、奪三振41、与四死球12、防御率0.38 という圧倒的な成績を残した。続くU-18の日本代表にも選出され、国際大会でも2試合に登板している。 ストレート 140キロ台後半〜156キロ ☆☆☆☆(4.0) 球速という観点においては、高校生のみならず大学・社会人を合わせても、現在最も速い球を投げられるサウスポーかもしれない。そのボールの勢いもさることながら、両サイドに投げ分けるコントロールも身についてきている。特に、右打者内角へのクロスの球筋は一級品。ただし、3回戦の富山北部戦では9回を投げて9四死球を記録した。昨年も指摘したように、本当の意味でのコマンド能力や安定した制球力が身についているかといえば、まだ疑問が残ると言えそうだ。 横変化 ☆☆☆(3.0) 横滑りするスライダーでカウントを整えていく。打者の空振りを大きく奪うような鋭い曲がりではなく、小さく横方向へ滑るような軌道のスライダーだ。 縦変化? チェンジアップ ? 昨年の時点ではまだ発展途上ながらチェンジアップを投げていた。しかし、今大会のチェック試合ではそういった球種は確認できなかった。少なくとも現状は、彼の投球においてそこまで大きな役割を果たしているわけではなさそうだ。 緩急 カーブ ☆☆☆(3.0) その代わりに、緩いカーブは比較的よく使ってくる。現状この球も、カウントを稼いだり打者に緩急を利かせたりするためのものであり、フィニッシュの決め球として使うような性質のものではない。 投球以外の技術 クイックタイムは0.9秒台と非常に高速である。ただし、走者への目配せは「見ていそうで見ていない」ような面があり、盗塁を仕掛けられやすい隙はある。そのため、もう少し牽制球を交えるなど、走者への注意やケアはプロで磨いていきたい。フィールディングなどの動きはまずまずで、野球選手としての総合的な運動能力はかなり高そうなタイプだ。 (投球のまとめ) まだマウンド上で自分の球速表示を確認してしまうなど、精神的には「普通の高校生だな」と思わせる愛嬌や幼さを覗かせる場面もある。しかし、この1年でこれほど劇的に球速を引き上げてきた背景には、間違いなく「努力できる才能」があるのだろう。良い指導者に恵まれたり、自身の環境がフィットしたりすれば、今後さらに投球術や野球への探求心も深みを増していくのではないか。 (投球フォーム) セットポジションから、勢いよく高く足を大きく引き上げていく。最初から高いエネルギーの捻出が見られ、リリーフタイプによく見られる力強い入り方だ。ただ、軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸びてしまい、やや力みが感じられる。こうなると、バランスを保とうとして余計な力が入ることで制球を乱す要因になったり、体が突っ込みやすくなったりする。彼自身、力んだ際には体が前に突っ込む姿が見受けられる。もっとも、昨年の時点では膝がピンと伸び切ることなく余裕のある立ち方ができていただけに、当時の立ち方に戻すことは十分に可能だろう。 <広がる可能性> ☆☆☆☆(4.0) 引き上げた足を少し二塁側へ送りつつも、比較的高い位置でしっかりと伸ばせている。多少の甘さは残るものの、お尻は三塁側(左投手の場合)へきれいに落とせている。 「着地」までの地面の捉えにも適度な粘りがあり、体を捻り出すタメの時間が十分に確保されている。将来的には、曲がりの大きな変化球の習得なども大いに期待できるはずだ。 <球の行方> ☆☆☆☆(4.0) グラブは最後まで体の近くに収まっており、外に逃げようとする遠心力をしっかりと内に留めることができている。そのため軸はブレにくく、両サイドへのコントロールもつけやすいと考えられる。 足の甲での地面の捉え自体は深いものの、膝が地面につきそうになるほど重心が深く沈み込んでしまい、そこから浮き上がろうとする力を十分に抑え込めているかは微妙なところだ。それでも「球持ち」は非常に良く、これだけの圧倒的な速球派でありながら制球の不安が少ない点は大きな魅力である。 <故障のリスク> ☆☆☆☆(4.0) お尻が適度に落とせているため、カーブやフォークといった球種を投げても体に窮屈さは生まれにくそうだ。現状、そういった捻り出して投げる球種は見られない、この点は特に気にする必要はないだろう。 腕の送り出しにも無理な感じは一切なく、肩への過度な負担も少なそうだ。普段はそこまで力んで投げようとしていないため好印象だが、どうしても速い球を投げようと力んでしまう場面では、疲労を蓄積させないように注意したい。昨年と比較しても、体への負担がより少ない洗練されたフォームへと進化しているのではないか。 <実戦的な術> ☆☆☆☆(4.0) 「着地」までの粘りが適度に利いており、ボールの出どころもしっかりと隠せている。これだけの球速がある上に、打者の見えにくいところから「ピュッと」球が手元に出てくるとなれば、対戦する打者は相当な厄介さを感じるはずだ。 腕もしっかりと振れているため、ストライクゾーンからボールゾーンへ逃げていくような切れ味鋭い変化球を自分のものにできれば、変化球でもより多くの三振が奪えるようになるだろう。ただ、膝が地につきそうになるほど重心が沈み込んでしまうことで体重が後ろに残りやすくなっているため、ここが改善されれば、さらに球持ちが増して「手元に迫って来る」ような圧倒的な球質へと化していきそうだ。 (フォームのまとめ) 投球フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」のうち、「体重移動」の面にはまだ改善の余地がありそうだ。制球を司る動作の質は高く、故障へのリスクも少ない。将来的には、さらなる球種の習得によって投球の幅を広げていくことが大いに期待できる素材だ。 (最後に) 実際のピッチングにはまだ若さや粗さを残すものの、フォームの技術論としては非常に理にかなった素晴らしい形へと仕上がってきている。現状は、投球の幅が狭く、リリーフの色彩が強い投手との印象が強い。ここから、いかに投球を膨らませて行けるかに懸っている。 進むべき方向性も良いため、プロ入り後も優れた指導者や育成環境に恵まれれば、まだまだ天井知らずに伸びていける器であることは間違いない。個人的にも、今年のドラフトにおける「1位の12名」に相応しいと言い切れる投手だと高く評価したい。 蔵の評価:☆☆☆☆(1位指名級) (2026年夏 富山大会) |
| 前田 侑大(高岡第一2年)投手 173/65 左/左 | |
ボールの勢いもマウンドセンスもありながら、意外に走者を背負ってピンチになることが多い 前田 侑大。その原因はどこにあるのか? 検証してみたい。 (投球内容) 2年夏の大会では3回戦で敗退。しかし、続く秋の大会ではチームを富山大会準優勝に導いた。続く北信越大会では日本文理の前に敗れ、選抜出場の夢は断たれた。 ストレート 常時140キロ前後 ☆☆☆ 3.0 適度に勢いのある真っ直ぐを、両サイドに散らせてきます。特に立ち上がりを中心に速球が暴れ、日本文理戦では苦しみました。二回以降は球筋が安定したものの、かえってボールが揃い出したところを打たれ、9回で11安打を浴び、自責点5と打ち込まれました。 横変化 スライダー ☆☆☆ 3.0 横滑りするスライダーで、しっかりカウントを整えてきます。真っ直ぐよりも制御できている印象で、この球でカウントを稼げるのは大きな強みです。 縦変化 チェンジアップ ☆☆ 2.0 まだ使ってくることは少なく、精度・キレとも発展途上。どうしても真っ直ぐやスライダーなど、中に入ってくる球にヤマを張りやすい配球だけに、右打者にとって逃げていく球の向上が必須となってくるでしょう。 緩急 カーブ ☆☆★ 2.5 投球の中でもそれなりに投げてくる球種で、スライダーを多く使うなかでのアクセントとしての役割を果たしています。しかし、まだ精度やブレーキは並なだけに、十分な効果を得るまでには至っていません。 その他 ☆☆☆★ 3.5 クイックは1.05秒とまずまずで、走者にも適度に目配せをしてから投げられています。左腕ということも相まって、走者としてはなかなかスタートを切りにくそうです。 牽制などは確認できませんでしたが、フィールディングの動きは悪くありませんでした。ピンチの場面でもスッとマウンドを外すなど危険回避能力があり、投手としてのセンスの良さや運動神経の高さが感じられます。 (投球のまとめ) ボールが揃い出すと一気に失点してしまう傾向が見られます。これはマウンドさばきに課題があるというよりも、使える球種が限られているために狙い打たれやすいからではないでしょうか。あるいは、ゾーン内の制球の甘さを突かれているのかもしれません。別の可能性としては、フォームが打者に合わせられやすい(タイミングを取られやすい)懸念もあるので、そのあたりをフォーム分析から考えてみたいと思います。 (投球フォーム) セットポジションから足を引き上げる勢いや高さはそれなりです。軸足一本で立った時も、膝から上がピンと伸び切ることはなく、力みは感じられません。そのため、適度なバランスを保って立てています。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に向けがちなため、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としに甘さは残りますが、カーブやフォークが投げられないほどではありません。ただし、体を捻り出すスペースが十分とは言えないので、少し曲がりが鈍くなる恐れはあります。 「着地」までの地面の捉えもそれなりで、適度に体を捻り出す時間も確保できています。武器になるほどの変化球を習得できるかは未知数ですが、変化球全般でキレのある球を投げられるようになる可能性は十分にあります。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めています。したがって軸がブレにくく、両サイドのコントロールも安定しやすいです。足の甲での地面の捉えもできていますが、まだ少し浅い印象。そのためボールが高めに集まりやすい部分はありますが、「球持ち」も悪くないので抜け球は多くありません。もう少し体ができてくれば、球筋も安定してくるタイプではないでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としに甘さは残るものの、カーブやフォークなどを投げてもそこまで大きな負担にはなりそうもありません。この点に関しては、それほど神経質になる必要はなさそうです。 腕の送り出しを見る限り、肩への負担もそれほど大きくはならないでしょう。テイクバックの際に少し背中のラインより後ろまで肩が入ることや、顔と腕の角度が開き気味で「ブン」と振る傾向がある点は、肩への負担がゼロとは言えませんが、こちらも過度に心配するほどではないと思われます。決して力投派というわけでもないので、疲労を溜め込みすぎることもなさそうです。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りはそれなりに作れており、ボールの出どころも隠せています。適度に腕も振れて体に絡んでくるので、打者は勢いに釣られやすいでしょう。ボールにもある程度体重を乗せてからリリースできており、ウェートがついてくれば打者の手元での球威もさらに増してきそうです。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」は、どれも高い水準でまとめられています。強いて言えば、さらに股関節の柔軟性を養いつつ下半身の筋力強化をすれば、より良くなる余地があるでしょう。故障のリスクも高くなく、制球を司る動作も良好です。体ができてくれば球筋も安定してくるはず。何より、将来的には質の高い変化球を習得していける可能性を感じさせるフォームでした。 (最後に) 冒頭に書いたように、ボールの勢いやセンスがある割に打ち込まれやすい点をどう改善できるかが今後の鍵です。ただ、それは決してフォームが打ちやすいからではなく、現状の制球のアバウトさと、球種の少なさから狙い打たれている面が強いからだと考えられます。 そうした投球をどこまで改善できるかで、高卒でのプロ入りも現実味を帯びてくるでしょう。一冬越えれば大化けしていても不思議ではない素材であり、高部 陸(聖隷クリストファー)投手あたりと遜色のない存在になり得る、楽しみな投手です。 (2025年秋 北信越大会) |