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| 木口 永翔(上武大4年)投手 185/91 右/右 (筑陽学園出身) | |||||||||||||||||||||||||||||||
回転数の多い、キレのある球には定評がある 木口 永翔。しかし私には、むしろ簡単に打ち返されてしまう「球威のなさ」の方が気にかかる。プロで生き抜くために最も重要な要素は、キレや伸びよりも、ボールそのものの強さだと考えるからだ。 (投球内容) それを強く実感させられたのが、4年春に出場した全日本大学野球選手権大会だ。函館大戦に先発し、6回を投げて5安打・9奪三振・3四死球・2失点と無難にまとめては見せた。しかし、リーグ戦で見せた圧倒的な投球内容に比べると、物足りなさが残った。チームも敗れ、初戦で姿を消す結果となった。今回は、3年秋と4年春の成績を比較して分析してみたい。
ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★(3.5) 昨秋の横浜市長杯では、MAX151キロを記録するなど確かな勢いが感じられた。空振りを奪えるボールのキレは健在だが、甘く浮くと簡単に打ち返される球威のなさを、全国大会の舞台で痛感させられた。右打者には両サイドに投げ分け、左打者には外角中心にボールを集めるスタイルだが、函館大戦では制球がややアバウトな印象を受けた。これは昨秋の横浜市長杯でも感じたことだが、四死球を出さない制球力はあるものの、ゾーン内での精緻な制球には甘さを残している。 横の変化 スライダー・カット・ツーシーム ☆☆☆★(3.5) 横に小さくズレるカットボールと、低めのボールゾーンに切れ込むスライダーで空振りを奪うのが持ち味。本来ならば、右打者外角ギリギリのゾーンに出し入れできる投球術が武器である。その一方で、右打者の内角を厳しく突く投球も見られたのは収穫だ。 縦変化 スプリット? 昨秋は縦の変化も見られたが、大学選手権では確認できなかった。元々、投じても見逃されるケースが目立っていた。現状は横の揺さぶりで勝負するピッチングスタイルになっている。 投球以外の技術 ☆☆☆(3.0) クイックタイムは1.05~1.15秒と及第点。特別鋭いわけではないが、適度に牽制を織り交ぜる。外角の出し入れが真骨頂の投手であり、投球術という点では持ち合わせている。 (投球のまとめ) 球威のなさに加え、縦の変化が乏しく、緩急の差も小さい。そのため、単調な投球が続くと苦しくなる。完成度は高い投手に見えるが、プロの世界ではさらに球種を増やし、投球の幅を広げることが求められるだろう。 1. 指標で見る変化と用語解説 3年秋と4年春の成績を比較して、その変化についてセイバーメトリクスの観点から考えてみました。 WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched) 解説: 1イニングあたりに何人の走者を出すかを示す指標。1.00を切ると非常に優秀(エース級)とされます。 変化: 1.07から0.76へと劇的に向上しました。イニングが伸びても走者を許さない「安定感」が飛躍的に増しており、先発としての適性が高まったことを証明しています。 K9(奪三振率) 解説: 9イニングを投げた場合に何個の三振を奪えるか。10を超えると非常に高い三振奪取能力があることを示します。 変化: 12.54から11.08へ低下。短イニングで全力投球していた秋に比べ、春はスタミナ配分を考慮し、モデルチェンジを図った結果と考えられます。 BB9(与四球率) 解説: 9イニングを投げた場合に何個の四死球を出すか。投手の「制球力」の目安です。 変化: 1.93から1.99へとわずかに悪化。これは「誤差の範囲」と言えます。投球回数が増えても四球を増やさなかった点は、先発投手として非常に大きな評価ポイントです。 K/BB(奪三振÷与四球) 解説: 奪三振と四死球の比率。投手の安定感と制球力の総合力を示します。3を超えると優秀と言われます。 変化: 6.50から5.57へ低下。依然として極めて高い数値を維持しており、高いレベルで安定した投球ができていることを示しています。 2. 成長と「球威」の考察 【成長点】 3年秋の木口投手は、限られたイニングで「三振を奪うこと」に特化したパワーピッチャーでした。しかし、4年春は投球回数をこなす必要に迫られたことで、単なる全力投球だけでなく、ストライクゾーンを広く使ってテンポよく打たせる投球へとモデルチェンジしています。WHIPの改善は、彼がより「効率的なピッチング」を習得したことを意味します。 【懸念点と誤差の分析】 K/BBやK9の数値低下は、「劣化」ではなく「先発への適応による誤差」と捉えるべきです。しかし、筆者が抱く「球威のなさ」という懸念は、データ上でも裏付けられます。 データが示す通り、高いK/BBを維持しながらも、大学選手権のような「一発勝負」の場面で、リーグ戦ほどの圧倒的な支配力を発揮できなかったことは事実です。これは、木口のキレや制球力が、打者のレベルが一段上がる全国大会や、疲労が溜まる試合中盤で、より「捉えられやすい質」に変化していることを示唆しています。 3. 今後の展望 木口投手は高い制球力と安定感を武器に、大学レベルでは隙のない投手に仕上がっています。しかしプロの舞台では、ゾーン内での精緻なコントロール以上に、「バットに当てられてもファウルになる」「芯を外しても力が押し負けない」といった、球の「出力(絶対的な球威)」が要求されます。 現在の安定感を維持しつつ、今の球速帯(常時145キロ前後)で、もう一段階「ボールの重さ」を増すような球質の改善あるいは、スプリットなどの縦の変化を再習得し、緩急を交えて球威不足を補うモデルチェンジが、プロで先発として生き残るための鍵となるでしょう。 (最後に) いわゆるピッチングのできる投手ではある一方で、プロの一軍を想定すると、球威や縦の変化に緩急など課題も少なくない。そういった意味では、即戦力というよりも、1,2年ファームで育成することを前提に獲得すべき選手といった気がする。タイプ的には、石田裕太郎(DeNA)に近いタイプで、上手く行けばそういったレベルまで期待できるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆(中位指名級) (2026年 大学選手権) |
| 木口 永翔(上武大3年)投手 185/81 右/右 (筑陽学園出身) | |||||||||||||||||||
2700回転を超えるという、驚異的なスピン量を誇る直球が魅力の 木口 永翔 。好調時の勢いには目を見張るものがあるが、一方で課題も多く散見される、非常に興味深い素材だ。 【投球内容】 肘の位置がやや下がったスリークォーター右腕。3年春・秋ともにリーグ戦での登板は各3試合と少ないが、チームではリリーフとして自責点0の投球を続けている。今回は、神宮大会代表決定戦(横浜市長杯)と、全日本選考合宿(松山合宿)での登板内容を基に分析する。 ■ セイバーメトリクス補足 K/BB:6.50 (奪三振÷四球。3.5を超えると優秀とされる指標。奪三振能力が高く、四球で崩れるリスクが低いことを示す) WHIP:1.07 (1イニングあたりの許走者数。1.00〜1.10はエース級の数字。リリーフとして極めて安定してイニングを抑えている) K9:12.54 (9イニング換算の奪三振数。12点台は驚異的。直球の回転数が空振りに直結している証左といえる)
【球種別評価】 ストレート:140km/h ~ 151km/h 評価:☆☆☆★ 3.5 松山合宿では140km/h台前半に留まり、明らかに調子を落としている様子だった。しかし、横浜市長杯(創価大戦)では自己最速の151km/hを計測。唸りを上げるような伸びのある直球には、確かな威力が感じられた。ただし、バラツキも顕著だ。BB9(1.93)という数字以上に、実際の投球からは制球の粗さが目立つ印象を受けた。 横の変化(スライダー・カット):評価:☆☆☆ 3.0 基本的には小さく動くカットボールでカウントを整える。右打者には外角低めに曲がり落ちるスライダーも織り交ぜるが、精度は発展途上だ。現状では大きく外れるケースも多く、打者が振ってくれない場面も目立った。 縦の変化(スプリット):評価:☆☆ 2.0 スプリット系の沈む球も備えているが、見極められることが多く、空振りを奪うまでには至っていない。登板中の使用頻度も低く、現状では信頼を置けるレベルではないようだ。 その他:評価:☆☆☆★ 3.5 クイックタイムは1.15〜1.2秒前後と標準的。走者への目配せや鋭い牽制、さらにボールを持つ時間を変えるなど、走者にスタートを切らせない工夫が見られる。一方で、細かいコースの出し入れや緩急を使った投球術は乏しく、一本調子な印象は拭えない。 【投球フォーム分析】 セットポジションから足を上げる勢いは平均的。高く引き上げないスタイルは、リリーフだけでなく先発適性も感じさせる。気になるのは、軸足一本で立った際に膝から上がピンと伸びきり、体に力みが見られる点だ。これが制球を乱す要因の一つになっている可能性がある。 <広がる可能性> 評価:☆☆☆★ 3.5 ステップの際、お尻の落としが不十分で、体を捻り出すスペースが十分ではない。また、肘を下げて投げるフォーム特性上、カーブやフォークといった縦系の球種は習得しにくいだろう。ただし、前へのステップは大きく、粘りは作れている。横の曲がりを大きくした変化球であれば、新たな武器になる可能性を秘めている。 <ボールの支配> 評価:☆☆☆ 3.0 グラブを最後まで内に抱えられており、体の開きを抑えようとする意識は見られる。軸がブレにくいため、本来は両サイドへのコントロールをつけやすいはずだ。実際、成績上のBB9は優秀。視察時に制球を乱していたのは、技術よりも指先の感覚やメンタル的な力みが原因かもしれない。 <故障のリスク> 評価:☆☆☆★ 3.5 縦の変化が少なく、肩への負担は比較的軽そうに見える。ただし、サイド〜スリークォーター特有の肘への負担には注意が必要だ。 <実戦的な術> 評価:☆☆☆★ 3.5 着地までの粘りは作れているが、球の出どころは見えやすい部類に入る。それでも、2700回転という異常なスピン量があるため、打者はわかっていても差し込まれてしまう。体重移動において一塁側に流れ、エネルギーをロスしている部分を改善すれば、さらなる球威アップも望める。 【総評】 直球とスライダー・カット系を中心とした典型的なリリーフタイプ。プロの舞台で先発を担うには、緩急の使い方や縦の変化、あるいは「間」を意識した投球術の向上が不可欠だ。 最大の武器である「驚異的な回転数」は、昨今のデータ重視のプロ球団にとって大きな魅力となる。この追い風を生かし、最終学年で圧倒的な結果を残せば、大学からのプロ入りも十分に現実味を帯びてくる。自慢の直球でどこまで打者をねじ伏せられるか、その進化に注目したい。 (2025年秋 横浜市長杯) |