ビシッとミットに突き刺さるような速球は、今年の九州地区でも屈指の素材である 平田 玲翔 。現時点では「素材型」の域を脱していないが、そのポテンシャルは数字の面からも非常に高い魅力と課題を突きつけている。
(投球内容)
すらっとした投手体型で、最速は140キロ台後半に到達。今秋の成績にセイバーメトリクスの指標を交えると、彼の現在地がより鮮明に見えてくる。
K9(9イニングあたりの奪三振数):10.57 奪三振能力の高さを示す指標。9.0を超えれば優秀とされる中、10.57という数字は三振を奪う能力が極めて高いことを裏付けている。
BB9(9イニングあたりの与四球数):5.87 制球の安定度を示す指標。3.0以下が望ましいとされる中で、5.87は改善の余地が大きい。
K/BB(奪三振と与四球の比率):1.80 投手の制球効率を示す。3.5以上が理想的とされる中、1.80は「三振は取れるが、四球による自滅のリスクも高い」現状を示している。
WHIP(1イニングあたりの許走者数):1.50 1.20未満ならエース級とされる。1.50という数値からは、毎回コンスタントに走者を背負う苦しい投球内容が読み取れる。
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四死球 |
奪三振 |
防御率 |
K/BB |
WHIP |
K9 |
BB9 |
| 15回1/3 |
13 |
10 |
18 |
1.76 |
10.57 |
5.87 |
1.80 |
1.50 |
【投球内容】
ストレート:140キロ前後~140キロ台中盤(☆☆☆★ 3.5)
腕の振りを活かした真っ直ぐの勢いには特筆すべきものがある。高いK9を支えているのは、右打者の内角へナチュラルにシュートするこの癖球だ。ただし、リリースが不安定で高めに抜ける場面が多く、BB9の悪化を招いている。
横変化 スライダー(☆☆ 2.0)
投球の軸は速球だが、時折スライダーを混ぜて目先を変えてくる。ただし、この球で確実にカウントを整えられるほどの精度はまだ備わっていない。
縦変化 チェンジアップ(☆★ 1.5)
チェンジアップ系の球種も持ち合わせているようだが、実戦での投球頻度は極めて低い。
カーブ(☆☆ 2.0)
緩いカーブも織り交ぜるが、抜け球が多く、安定してカウントを稼ぐ武器にはなりきれていない。
その他(☆☆★ 2.5)
クイックタイムは1.1~1.2秒前後と平均的。走者を背負った際、走者への警戒(目配り)が甘く、容易にモーションを盗まれる傾向がある。一方で、ピンチで冷静にプレートを外すなど、マウンド上での落ち着きも持ち合わせている。経験を積むことで化ける可能性を十分に感じさせる。
【投球のまとめ】
変化球で確実にカウントを奪う、あるいは空振りを取る術がまだ確立されていないため、どうしても直球頼みの配球になりがちだ。その直球もバラつく傾向にあり、制球に苦しむ場面も少なくない。素材は「A級」だが、高校在学中にどこまで実戦力を高められるかが今後の鍵となる。
【投球フォーム】
セットポジションから勢いよく足を高く引き上げる。フォーム序盤からエネルギー出力の高さが伺え、本質的にはリリーフタイプかもしれない。軸足一本で立った際のバランスは良く、力みは見られるものの安定感がある。
広がる可能性(☆☆ 2.0)
引き上げた足を伸ばさずに重心を下げるため、お尻が二塁方向へ落ちる(ヒップファーストが不十分な)傾向がある。そのため、体を捻り出すスペースを確保しにくく、カーブやフォークといった縦系の球種には不向きなメカニズムだ。むしろ、カットボールやツーシームのような、球速のある小さく動く変化球を中心に投球の幅を広げる方が、彼の良さを活かせるのではないか。
ボールの支配(☆☆☆★ 3.5)
グラブを最後まで内に抱え込み、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。この点は両サイドのコントロールを安定させる好材料だ。足の甲での地面の捉えも悪くないが、リリースの押し込みが不安定なため、高めに浮くなどボールのバラツキが顕著。フォームとリリースが固まれば、自ずと制球は定まってくるだろう。
故障のリスク(☆☆☆ 3.0)
重心の落とし方に課題はあるが、負担の大きい球種を多投しているわけではないため、現時点では故障に対して神経質になる必要はないだろう。腕の振りを見ても肩への負担は少なそうだ。ただ、無駄な力が入りやすく疲労を溜めやすい点は今後の課題か。
実戦的な術(☆☆☆ 3.0)
着地までの粘りが淡白で、ボールの出どころも見えやすい。球勢の割に打者がタイミングを合わせやすい(苦にならない)可能性がある。投球後の腕の振りは良いが、体が早く開くと打者に球筋を見極められてしまう。また、体重を完全に乗せきる前にリリースしており、フィニッシュで一塁側に流れるなど、生み出したエネルギーをロスしている部分も見受けられる。
【フォームのまとめ】
フォームの4大動作(着地・球持ち・開き・体重移動)において、全体的に「粘り」が欲しいところだ。制球を司る基本的な動作自体は悪くないため、体格の向上とともにリリースが安定すれば、劇的な改善が期待できる。将来的には、いかに「決め球」となる変化球を習得できるかがプロへの道筋となるだろう。
【総評】
K9が示す圧倒的な奪三振能力は、まさに「プロ級」の素材であることを証明している。一方で、BB9やWHIPの数字が示す通り、高校野球の舞台で勝ち上がるための「実戦的な術」はまだ発展途上だ。
しかし、大分商の優れた育成環境で一冬を越し、無駄な力が抜けて制球が安定してくれば、この奪三振能力はより恐ろしい武器になるだろう。2026年夏までに、数字がどのように良化しているか。その時の内容次第で、高卒でのプロ入りという道が、より現実味を帯びてくるはずだ。
(2025年夏 大分大会)
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