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木口 永翔(上武大3年)投手 185/81 右/右 (筑陽学園出身) 
 




 「ボールに勢いはあるけれど」





 2700回転を超えるという、驚異的なスピン量を誇る直球が魅力の 木口 永翔 。好調時の勢いには目を見張るものがあるが、一方で課題も多く散見される、非常に興味深い素材だ。


【投球内容】

 肘の位置がやや下がったスリークォーター右腕。3年春・秋ともにリーグ戦での登板は各3試合と少ないが、チームではリリーフとして自責点0の投球を続けている。今回は、神宮大会代表決定戦(横浜市長杯)と、全日本選考合宿(松山合宿)での登板内容を基に分析する。


■ セイバーメトリクス補足

K/BB
6.50 (奪三振÷四球。3.5を超えると優秀とされる指標。奪三振能力が高く、四球で崩れるリスクが低いことを示す)

WHIP
1.07 (1イニングあたりの許走者数。1.00〜1.10はエース級の数字。リリーフとして極めて安定してイニングを抑えている)

K9
12.54 (9イニング換算の奪三振数。12点台は驚異的。直球の回転数が空振りに直結している証左といえる)


投球回数
被安打
四死球 奪三振 防御率 K/BB WHIP K9 BB9
9回1/3 8 2 13 0.96 6.50 1.07 12.54 1.93


【球種別評価】

ストレート:140km/h ~ 151km/h 評価:
☆☆☆★ 3.5

 松山合宿では140km/h台前半に留まり、明らかに調子を落としている様子だった。しかし、横浜市長杯(創価大戦)では自己最速の151km/hを計測。
唸りを上げるような伸びのある直球には、確かな威力が感じられた。ただし、バラツキも顕著だ。BB91.93)という数字以上に、実際の投球からは制球の粗さが目立つ印象を受けた。

横の変化(スライダー・カット):評価:
☆☆☆ 3.0

 基本的には小さく動くカットボールでカウントを整える。右打者には外角低めに曲がり落ちるスライダーも織り交ぜるが、精度は発展途上だ。現状では大きく外れるケースも多く、打者が振ってくれない場面も目立った。

縦の変化(スプリット):評価:
☆☆ 2.0

 スプリット系の沈む球も備えているが、
見極められることが多く、空振りを奪うまでには至っていない。登板中の使用頻度も低く、現状では信頼を置けるレベルではないようだ。

その他:評価:☆☆☆★ 3.5

 クイックタイムは1.15〜1.2秒前後と標準的。走者への目配せや鋭い牽制、さらにボールを持つ時間を変えるなど、走者にスタートを切らせない工夫が見られる。一方で、細かいコースの出し入れや緩急を使った投球術は乏しく、一本調子な印象は拭えない。





【投球フォーム分析】

 セットポジションから足を上げる勢いは平均的。高く引き上げないスタイルは、リリーフだけでなく先発適性も感じさせる。気になるのは、軸足一本で立った際に膝から上がピンと伸びきり、
体に力みが見られる点だ。これが制球を乱す要因の一つになっている可能性がある。

<広がる可能性> 評価:
☆☆☆★ 3.5

 ステップの際、お尻の落としが不十分で、体を捻り出すスペースが十分ではない。また、肘を下げて投げるフォーム特性上、カーブやフォークといった縦系の球種は習得しにくいだろう。ただし、前へのステップは大きく、
粘りは作れている。横の曲がりを大きくした変化球であれば、新たな武器になる可能性を秘めている。

<ボールの支配> 評価:
☆☆☆ 3.0

 グラブを最後まで内に抱えられており、体の開きを抑えようとする意識は見られる。軸がブレにくいため、本来は両サイドへのコントロールをつけやすいはずだ。実際、成績上のBB9は優秀。視察時に制球を乱していたのは、技術よりも
指先の感覚やメンタル的な力みが原因かもしれない。

<故障のリスク> 評価:
☆☆☆★ 3.5

  縦の変化が少なく、肩への負担は比較的軽そうに見える。ただし、サイド〜スリークォーター特有の
肘への負担には注意が必要だ。

<実戦的な術> 評価:
☆☆☆★ 3.5

 着地までの粘りは作れているが、球の出どころは見えやすい部類に入る。それでも、2700回転という異常なスピン量があるため、
打者はわかっていても差し込まれてしまう。体重移動において一塁側に流れ、エネルギーをロスしている部分を改善すれば、さらなる球威アップも望める。


【総評】

 直球とスライダー・カット系を中心とした
典型的なリリーフタイプ。プロの舞台で先発を担うには、緩急の使い方や縦の変化、あるいは「間」を意識した投球術の向上が不可欠だ。

 最大の武器である
「驚異的な回転数」は、昨今のデータ重視のプロ球団にとって大きな魅力となる。この追い風を生かし、最終学年で圧倒的な結果を残せば、大学からのプロ入りも十分に現実味を帯びてくる。自慢の直球でどこまで打者をねじ伏せられるか、その進化に注目したい。


(2025年秋 横浜市長杯)