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 成瀬 脩人(24歳・NTT西日本)遊撃 176/76 右/右 (東海大菅生-東海大出身)
 




 「打撃の印象が全くない」





 好守の右打ち遊撃手として、早くから名前が挙がっていた 成瀬 脩人 。何度も彼のプレーを直に見ているはずだが、正直、どのような打撃をしていたのか全く思い出せない。改めて映像で振り返りながら、彼のプレーを検証してみた。


走塁面:
☆☆☆ 3.0

 一塁までのタイムは、右打席から4.3秒程度。これを左打者に換算すると、4.05秒に相当する。そのため、ドラフト候補としては基準レベル(4.1秒)程度。2025年度は23試合で5盗塁。決して動けない選手ではないが、
足を売りにするプレースタイルとは言えない

守備面:
☆☆☆☆ 4.0

 打球への反応、俊敏なフットワーク、瞬時の判断力など、
安心して見ていられる守備力がある。決して守備範囲が非常に広いとか、派手なプレーで魅了するタイプではないが、落ち着いた安定感のある守備を見せる選手である。しかし、昨年は28試合で4失策ということで、年間143試合換算では約20失策となるため、精度は抜群とは言えない。また、地肩も中の上レベルといった印象だ。

 走力は平均的だが、守備に関しては
「プロでも二遊間で勝負できる」タイプと言える。DeNAは近年、守備力を売りにする内野手を積極的に獲得してこなかったため、その点で貴重な存在になり得る。





(打撃内容)

社会人2年間の公式戦成績は以下の通り。


 打数  安打  二塁打  三塁打  本塁打  打点  四死球  三振  打率
156 49 7 1 0 24 20 21 .314


<構え> ☆☆☆ 3.0

 右打席で前の足を引いてかかとを浮かし、グリップを高めに構える。後ろ足に重心を預けているため、全体のバランスにやや癖がある。それでも、両目でしっかり前を見据えており、球筋を捉えるのに問題はない。出塁率(OBP:安打+四死球÷打数+四死球)が約.392と高いのは、この安定した視野確保が四死球20(打席176中)を稼ぐ一因だろう。

<仕掛け>
早め

 投手の重心が下がるタイミングで動き出す「早めの仕掛け」を採用。このタイミングは、対応力を重視したアベレージヒッターに多く見られる。三振率(K%:三振÷打席数)が約11.9%(21÷176)と低いのは、早めの始動で
コンタクトを優先するスタイルの表れだ。

<足の運び>
☆☆☆★ 3.5

 足を上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出す。始動から着地までの「間」が取れており、速球にも変化球にも幅広く対応可能。内角も外角もさばきたいタイプと考えられる。踏み込んだ足は
インパクトの際にブレず、逃げる球や低めの球にも食らいつける。そのため、右方向への打球も苦にしない。打率.314や単打41本(安打49中)は、この対応力とコンタクト能力の高さを裏付ける。

<リストワーク>
☆☆☆★ 3.5

 「トップ」の形は早く作れており、速球に遅れる心配はない。基本的に上から振り下ろすインサイドアウトのスイング軌道で、外角球をさばく際も肘を絞って振る。ただし、
強い直球に対して力負けしないかは気になるところだ。長打率(SLG:単打+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4÷打数)が約.385と低いのは、本塁打0、二塁打7と長打が少なく、鋭くはじき返す打撃が中心だから。インパクト時にヘッドが下がり、ファウルになりやすい場面も多く、打ち損じの多さがこの数値に表れている。スイング自体は、センターからレフト方向に引っ張るのに適しており、チームでも2番打者として起用されていた。

<軸>
☆☆☆★ 3.5

 足の上下動は控えめで、インパクト時の体の開きも我慢できている。ステップが狭めであるため、センターから右方向に追っつける打撃よりも、軸足を起点とした引っ張るスイングの方がメカニズム的に自然に見える。OPS(出塁率+長打率)が約.777(.392+.385)と社会人ではまずまずだが、プロの二遊間選手としては長打力不足が顕著。この軸の安定感は出塁率の高さに寄与するが、長打を増やすには回転力を活かしたスイング調整が必要かもしれない。

(打撃のまとめ)

 打撃の印象が薄いのは、
長打力など破壊力に欠けるためだろう。セイバーメトリクスで見ても、SLG.385、OPS.777と長打力はほぼなく、単打中心の打者出塁率.392や三振率11.9%はコンタクト能力の高さを示すが、プロでは長打力向上が必須。インサイドアウトのスイング軌道にもかかわらず、右方向への打撃を意識しすぎる不自然さが目立つ。ドラフト指名される選手としては、打撃面が弱い印象を受けた。


(最後に)

 DeNAとしては珍しく、守備力を売りにした二遊間候補を獲得したことは、チーム内での存在感を高める可能性がある。しかし、バットの遠心力を活かしたプロ仕様のスイングではないことや、現在の体の使い方と右方向への打球の意識が一致していない点が気になる。OPS.777は社会人では悪くないが、プロでは一軍定着には長打力向上が必須。今のままでは打撃がネックとなり、一軍定着は厳しいかもしれない。プロ入り後、
自分に合ったスイングや生き残る術を見つけられるかが鍵だろう。個人的には、現時点のプレーを見る限り、(支配下級)の評価には至らなかった。


(2025年 都市対抗)