25sy-2
| 髙橋 隆慶(24歳・JR東日本)内野 186/92 右/右 (明秀日立-中央大出身) | |
豊作の大学生野手が揃う今年のドラフト候補の中でも、一年目からレギュラーを狙えるという意味では、社会人の 高橋 隆慶 が一番ではないかと考えている。その理由について、考察してみたい。 走塁面:☆☆★ 2.5 一塁到達タイムは、右打席から速い時で4.35秒前後。このタイムを左打者に換算すると、4.1秒前後に相当する。このタイムは、ドラフト指名される選手の標準的なタイムとなる。しかし、今年の公式戦でも盗塁は1個と、積極的に足を絡めてくるプレースタイルではない。BsR(走塁貢献度)換算で平均以下と見込まれるが、打撃の破壊力が全体をカバーするポテンシャルはある。 守備面:☆☆★ 2.5 三塁手としての動きは、昨年よりも良くなっているものの、まだ危なっかしく見えることがある。動き自体は悪くないのだが、キャッチングや送球などで不安定な部分を覗かせる。都市対抗予選・本戦と大きなミスはなかったものの、公式戦14試合で今年も失策4個(失策率約8%)。プロで長いシーズンを戦うと、かなりミスが多くなることが想定される。そういった意味では、将来的には外野などを担う可能性は否定できない。地肩自体は結構強いので、脚力なども考えると、ライトやレフトなどの両翼タイプではないだろうか。UZR(守備貢献度)でマイナス寄りになるリスクを考慮すると、外野移行が現実的だ。 (打撃内容) 昨年まではまだ粗さを感じさせることもあったが、今年は都市対抗で5割の打撃成績を残すなど、ものの違いを示しはじめた。25年度の公式戦成績は、23試合 90打数 34安打 9二塁打 1三塁打 5本塁打 19打点 32四死球 33三振 打率.378 という成績が残っている。 この数字から算出されるOPSは1.208と、社会人レベルで突出しており、ISO(長打力指標).289がその破壊力を物語る。BB%26.2%の高選球眼も、プロ移行時の強みとなりそうだ。 <構え> ☆☆☆ 3.0 右打席から軽く足を引いて、かかとを浮かして構えている。グリップを下げ気味、後ろ足に重心を預けているので全体のバランスとしては少しクセがある。両目でのボールの見据え方は並ぐらいだが、リラックスして立てているところは良いのではないだろうか。 <仕掛け> 遅め 投手の重心が下がりきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、ギリギリまでボールを見定めてから動き出すので、生粋の2番打者や天性のスラッガーに多く見られる始動のタイミングとなる。彼の場合は、後者のタイプなのだろう。昨年までは「遅すぎる仕掛け」だったので、若干始動を早めたことで、確実性を増してきたように思える。K%27.0%と三振率は高めだが、選球の質がOPSを押し上げている。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を上げて回し込み、ほぼ真っ直ぐに踏み出してくる。始動~着地までの「間」は短いので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない鋭さが求められる。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのだろう。 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にもブレずに止まっている。そのため、逃げて行く球や低めの球にも食らいつくことができ、右方向に打ち返すのも苦にしない。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」の形はしっかり作れないまま振り出す印象があり、そのへんは消化不良の打撃にはなりやすいかも。振り出しも、決してインサイドアウトにバットが出てくるわけではなく、打ち損じもそれなりにありそう。ただし、内角の球に対しては、肘をうまく畳んで対応できていた。 スイングの弧は大きめで、最後までキッチリ振り抜いて来る。スイング的には、長距離砲という感じよりも、中距離の型にパワーが加わった、中長距離タイプなのかもしれない。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動は許容範囲。体の開きも我慢でき、軸足を起点にきれいに回転できている。特に軸足の内腿の筋肉は発達しており、強烈な打球を生み出す原動力になっている。 (打撃のまとめ) あまりバットが内から出てくるイメージはないのだが、内角の際には上手く畳んで対処できていた。そのため、甘めの球を強引に引っ張って長打を生みやすい。外角の球は打ち損じも少なくないだろうが、右方向へ打球を飛ばすこともできる。そういった幅の広い打撃で、今は結果を残しているのだろう。 特に始動を若干早めることにより、動作に余裕が生まれ確実性が増した印象がある。今は、粗さよりも破壊力が勝ってきた感じで、社会人レベルの投手相手ならば、どの試合でも能力で圧倒できるようになってきた。wOBA(加重出塁率)換算で.450超えの水準は、プロの平均を上回るポテンシャルを示唆する。 (最後に) 守備も走塁も箸にも棒にもかからないといったことはないものの、長く険しいプロのシーズンを想定すると、サードだと結構なミスを記録するのではないかと。そういった意味では、将来的には外野にコンバートされる可能性は否定できない。一方で打撃では、元来の破壊力・勝負強さに加え、確実性が増し際立ってきた。今の打撃内容でプロで守備などで苦しまなければ、一年目からレギュラーになっていっても全然不思議ではない。そういったレベルにあるという意味では、当たり年の大学生野手以上に、今年最も即戦力になりうる野手ではないだろうか。チームの中軸候補を探している球団としては、ぜひ加えたい一人。ドラフトでは、2位指名の間には消えてしまうのではないかと評価している。 蔵の評価:☆☆☆(上位指名級) (2025年 都市対抗) |
| 髙橋 隆慶(23歳・JR東日本)内野 186/92 右/右 (明秀日立-中央大出身) | |
25年度は、強打の大学生の内野手の人材が豊作だと言える。そんな中、彼らに勝るとも劣らないのが、この 髙橋 隆慶 。今年の社会人野手を代表する強打者なのだ。 (守備・走塁面) 一塁までの駆け抜けタイムは、右打席から4.5秒前後。これを左打者に換算すると4.25秒前後に相当し、基準(左打者換算で4.1秒が目安)に比べるとかなり劣る。ドラフト候補としては「中の下~下の上」ぐらいの走力ではないのだろうか。24年度の公式戦13試合でも、盗塁1個(失敗2)と足を売りにするプレースタイルではない。 アジアウィンターリーグでは、一塁と三塁を守っていた。特に一塁手としては、動きの良い選手との印象を受けた。サードとしての動きも悪くないのだが、少し送球に不安があるのか? 慎重に投げているように見える。そのため、ギリギリのプレーの時にどんな動きを見せるのかチェックしたいポイント。地肩自体は水準以上の強さがありそう。ちなみに24年の13試合で失策は3個ということで、やはり安定感には不安が残る。 (打撃内容) 24年の公式戦で、13試合(51打数)2本塁打、14打点、打率.255 といった成績で、数字的には際立つものはない。スラッガーというよりも、強烈な打球で野手の間を抜けてゆく中距離・ポイントゲッタータイプに感じた。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 右打席から前の足を引いて、かかとを浮かせて構えます。グリップの高さは平均的。背筋を伸ばしつつ、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスはそれなりといった感じです。 <仕掛け> 遅すぎ 投手の重心が下る時に動き出し、開いていた足をベース側に持ってきてつま先立ち。本格的に動き出すのはリリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅いタイミングで動き出すと、木製バットでNPBレベルの投手相手には厳しいかもしれない始動のタイミングです。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 小さくステップさせて、まっすぐから少しアウトステップ気味に踏み出してきます。始動~着地までの「間」はないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。まっすぐから少しアウトステップ気味に踏み込むので、若干意識は内角寄りにあるのかもしれません。 踏み込んだ足は、なんとかインパクトの際にも我慢できているように見えます。ただし、打球は引っ張りが中心であるように見えます。それでも踏み込んだ足元が我慢できることで、逃げてゆく球や低めの球には食らいつくことができそうです。打球も、右方向にも打ち返してくることがあります。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、始動の遅さをここで補おうとしています。バットの振り出しはインパクトまで大きなロスは感じられませんし、バットの先端でも下がっていないので、広い面でボールを捉えられています。それだけ接地面が広く、フェアゾーンにボールが飛びやすいインパクトです。 そのため、打球に角度を付けて飛ばす感じではあまりありません。それでも身体に力があり、大きな弧を描くスイングも相まって、引っ張って上手く巻き込めた時には、そのままスタンドインできるパンチ力はあります。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。身体の開きも我慢できており、軸足も地面からまっすぐ伸びて軸回転でスイングできていました。軸足の内ももにも適度な強さが感じられ、強烈な打球を生み出す原動力になっています。 (打撃のまとめ) 始動の遅さから、動作が消化不良になり、打てるタイミングとしては限られている印象があります。そのため、点の打撃になりやすく、率が残りにくいのではないでしょうか。打球の強烈さ、肉体のパワーなどはある選手なので、まともに捉えた時の破壊力には目を見張るものがあります。普段からバットをフルスイングする意識を持っているようです。 (最後に) けして天性の長距離砲ではないのと、三塁守備に不安があることを考えると、現時点で指名が確実なレベルとは言えないでしょう。ただし、今年の社会人でも目立つ若手野手の筆頭核なので、今後のアピール次第では面白い存在にはなりうると思います。今年はチームの中心選手としても期待されるでしょうから、そんな中、突き抜けたアピールができるのか? 注視して見守ってみたい一人でした。 (2024年冬 アジアウィンターリーグ) |