25sy-1
| 村上 裕一郎(24歳・エネオス)右翼 185/95 右/右 (宇和島東-九州共立大) | |||||||||||||||||||
社会人では、ルーキーイヤーから本塁打王に輝いた 村上 裕一郎 。飛躍が期待された2年目だったが、打撃の粗さは解消されていなかった。 走塁面:☆☆★ 2.5 一塁までの塁間タイムは、右打席から4.35秒前後(左打者換算で約4.1秒)に相当し、基準レベル。2025年度の公式戦で盗塁は記録しておらず、走力でアピールするタイプではないようだ。 守備面:☆☆☆★ 3.5 チームではライトを守るが、打球への反応、落下点への入り方、キャッチングなどは平均的。公式戦での失策は記録しておらず、可もなく不可もない印象。特にライトからの返球は出色で、プロでも強みとして通用しそうだ。強打者でありながら動きが鈍い選手ではなく、両翼ならプロでも無難に守れる守備力があると評価できる。特に肩の強さはプロレベルで十分通用するだろう。 (打撃内容) 2025年度の公式戦成績は以下の通り。
セイバーメトリクス分析 出塁率(OBP):約.372 出塁率.372は、社会人レベルではまずまずの数値。選球眼は悪くないが、プロの投手相手ではさらに四球を増やす必要がある。 長打率(SLG):約.529 長打率.529は、長打力を示す指標として優秀。特に二塁打の多さが貢献している。 OPS(出塁率+長打率):901 OPS.901は社会人レベルで上位クラス。長打力と出塁能力のバランスが良いが、プロでは.800以上を維持できるかが鍵。 ISO(純粋長打率):.250 ISO.250は強打者として高い長打力を示す。社会人レベルでは際立つが、プロの投手への対対応力が課題。 BABIP(インプレー打球平均):約.321 BABIP.321は平均的で、運に大きく左右されていない。ただし、インサイドアウトのスイングが減ったことで、打球の質が昨年より低下している可能性がある。 三振率(K%):約16.7% 三振率16.7%は許容範囲だが、プロの速球や変化球への対応力が求められる中、やや高め。 四球率(BB%):約12.8% 四球率12.8%は選球眼の良さを示し、強打者としての価値を高める要素。 <構え> ☆☆☆ 3.0 右打席で足を軽く引いて構え、グリップを高く捕手側に添える。腰の据わり具合や両目で前を見据える姿勢は良いが、後ろ足に重心を預けがちなため、全体のバランスにやや癖がある。 構え自体は昨年とほぼ変わっていない。セイバーメトリクス的には、構えの癖が打球の方向性(特に右方向への打球減少)に影響している可能性があり、プルヒッター傾向が強まっているかもしれない。 <仕掛け> 遅すぎ 開いていた足を戻し、ベース側につま先立ちして動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。リリース直前まで本格的な動きが始まらないため、日本人の筋力やヘッドスピードでプロレベルの球速に対応するのは難しいタイミングだが、彼の日本人離れしたパワーなら対応可能かもしれない。始動タイミングは、昨年から変わっていなかった。この遅い仕掛けは、高速な投球への対応力を下げるリスクがあり、三振率16.7%に影響している可能性がある。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 足を軽く上げ、少しベース側に踏み込むインステップを採用。始動から着地までの「間」が短く、狙い球を絞り、逃さないことが求められる。外角への意識が強いものと思われる。ISO.250や長打率.529から、外角の球を長打にできる力はあるが、インパクト時の足元のブレが力をロスさせている可能性がある。 気になるのは、腰が早く開いているわけではないものの、インパクト時に足元がやや動くこと。これにより、力がロスしている可能性がある。右方向への打球は不可能ではないが、本塁打を放つほどの力強さはない。非凡な飛距離を誇る選手だが、この点は物足りない。昨年は下半身のブレが少なかった印象だ。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃準備の「トップ」を作るのは早く、始動の遅さを補えている。しかし、バットの振り出しがやや遠回りで、インパクトまでのロスが少なくない。内角のさばきにも課題がある。内角対応の難しさは、三振率16.7%やBABIP.321に表れている可能性があり、速球への対応力向上が必要。 昨年はバットがインサイドアウトで中から出てくる感覚だったが、今年は右方向を意識してせいか、ポイントをやや後ろにしている可能性がある。ヘッドの下がりは少なく、広い面でボールを捉えられるため、打球はフェアゾーンに飛びやすい。OPS.901やISO.250は、この打球の質の良さを裏付ける。強打者だが、スイングの弧が大きいわけでも、フォロースルーを大きく使うタイプでもない。ヘッドスピードが速いため、多少大きな動作でも致命的なロスにはならないだろう。 <軸> ☆☆☆ 3.0 足の上げ下げが小さめで、目線の動きは少ない。しかし、上半身の強いスイングに対し、下半身が受け止めきれていない点が気になる。軸足も崩れがちで、スイングの安定感に欠けるため、調子の波が激しくなる可能性がある。昨年の方が、軸の安定感は良かった印象だ。この軸の不安定さが、三振率やBABIPに影響し、コンスタントな打撃成績を難しくしている可能性がある。 (打撃のまとめ) スイング軌道や下半身の安定感は、昨年の方が優れていた。実際、成績も長打率や確実性が昨年の方が良かった。ただし、OPS.901、ISO.250、四球率12.8%と、社会人レベルでは上位の打撃力を示している。昨年より内容が悪化した部分は修正可能な範囲であり、大きな懸念はないだろう。とはいえ、プロの投手への対応力(特に内角や速球)を向上させない限り、1年目から一軍で活躍するのは難しいと見ている。 (最後に) 社会人屈指の飛ばし屋であり、どのチームでも飛距離(ISO.250)と肩の強さで異彩を放つ素材だ。OPS.901は社会人レベルで高い攻撃力を示すが、対応力の粗さ(三振率16.7%や内角対応の課題)が十分に改善されておらず、大卒社会人でも数年は二軍や一軍半の立場に留まる可能性がある。そのため、過度な期待をかけず、気楽な立場で打席を与えたい選手だ。ドラフトでは、4位前後の指名に留まるのではないかとみている。 蔵の評価:☆☆(中位指名級) (2025年 都市対抗) |
| 村上 裕一郎(23歳・エネオス)右翼 185/95 右/右 (宇和島東-九州共立大) | |
社会人初年度から、本塁打王に輝くなど、25年度のドラフト戦線の中でも、数少ない大砲候補として期待したいのが、この 村上 裕一郎 ではないのだろうか。 (守備・走塁面) 一塁までの到達タイムは、右打席から 4.35秒前後。これを左打者に換算すると、4.1秒前後に相当するプロの基準レベルの脚力となる。ただし、24年度の12試合の公式戦では、盗塁は0個(失敗1)と、積極的に足でアピールするタイプでは無さそうだ。 右翼手としては、打球への反応、落下点までの入りなどは、けして下手な選手ではない。肩もまずまず強く、プロでも充分にライトができそうな強肩の持ち主。あとは、送球の精度などを高めて行きたい。特に守備に関しては、思った以上のレベルにあって驚いた。 (打撃内容) 12試合の公式戦での成績は、32打数 5本 11点 打率.375厘と、思ったほど脆さがないところも好いところ。ただし、秋の日本選手権・ミキハウス戦では、3打数無安打で初戦負けをきしている。 <構え> ☆☆☆ 3.0 前の足を軽く引いて、グリップは平均的な高さで捕手側に引いて添えられている。後ろ足に重心をかけるなど、全体のバランスとしてはクセのある構え。しかし、両眼ではある程度前を見据えられいた。 <仕掛け> 遅すぎ 投手の重心が下がりきった時に一度上げた足を地面に降ろし、本格的に始動するのはリリース直前といった「遅すぎる仕掛け」を採用。しかし、この仕掛けの場合、打撃のタイプとしては最初の動き出しに影響されるので、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた中距離打者や、勝負強さを売りにするポイントゲッターに近いタイプなのかもしれない。ただし、ここまで遅すぎる仕掛けだと、プロレベルの球速やキレに関しては、少々苦労するのかもしれない。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 小さくステップして、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動~着地までの「間」がないので、狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められます。ベース側にインステップするように、外角への意識が強そうです。 踏み込んだ足は、なんとか地面にめり込ませてブレを最小限に防いでいます。そのため、逃げてゆく球や低めの球は得意ではないものの、意識次第ではセンターから右方向へも飛ばすことができます。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、始動の遅さを補おうとしています。バットの振り出しは、やや遠回りに出てくる感じなので、内角のさばきはインステップも相まって窮屈だったり、打ち損じも少なくないようには感じます。 それでもインパクトの際には、バットの先端であるヘッドまでは下がっていないので、ドアスイングというほどではありません。スイングも、けしてボールに角度を付けてといった感じではないものの、スイングの前が大きく払うようなスイングでもスタンドインできていました。スイングのロスも、ヘッドスピードが速いことで補うことができていました。 <軸> ☆☆★ 2.5 足の上げ下げ小さい割には、結構目線が動いたり、自分からボールを追ってしまうところがあります。開きはなんとか我慢できていますが、身体が前に出される分、軸足の形は傾きがちです。こういった呼び込んで打てないタイプなので、安定感という意味ではどうでしょうか? (打撃のまとめ) 確実性が高い打ち方ではないのですが、軽く払っただけでスタンドインできるパワーがあり、高い確率でホームランを放つことができる打者です。精度を上げようとすると、持ち味が損なわないのか? 高いレベルの投手に、対応しきれないのか? といった疑問はありますが、貴重な右の長距離砲であるのは間違いないのではないのでしょうか。 (最後に) 強打者ですが、けして動けない選手でも、守れない選手でもありません。特に飛ばすということに関しては、今年のドラフト候補でも1,2をを争う存在ではないかと思います。今年は、ドラフトイヤーということで、プレッシャーがかかったり、チーム内でもより重要なところが期待される一年になりそう。そういった中で、一年目以上の輝きを見せられるかどうかで、プロの評価も変わってきそうです。今は、大いに期待して春の訪れを待ちたいところです。 (2024年秋 日本選手権) |