25ky-40
| 新井 唯斗(八王子3年)遊撃 181/74 右/左 | |||||||||||||||||||
春季東京都大会で生観戦した 新井 唯斗 。率直な感想は「悪い選手ではないけれど、プロの舞台に放り込んだときに何を最大の武器にして生き抜くのか」が正直なところ見えてこなかった。 走塁面:☆☆★ 2.5 左打席からの一塁到達タイムは4.25秒前後。左打者としては「中の下」(基準4.1秒)クラス。3年夏の西東京大会でも5試合で盗塁はわずか1個。最後の夏は1番打者として出場していたが、足でガンガンかき回すタイプではなく、走力を積極的にアピールするプレースタイルではなかった。 守備面:☆☆☆ 3.0 派手さや垢抜けたグラブさばき、打球反応の鋭さ、広い守備範囲といったものは感じない。ただし、球際の強さはあり、送球もまずまず安定している。地肩はプロに入っても「中の上」くらいはあると思う。しかしプロのショートとしては少し重苦しさがあり、現実的には三塁か、頑張って二塁といった印象。打力がもっと伸びれば外野も選択肢に入ってくるだろう。 打撃内容 3年夏・西東京大会成績(5試合)
OPS = 出塁率 + 長打率 (打撃の総合力を示す代表指標)鋭い打球は打てるが、本塁打を量産するようなパワーヒッターではない。打率.333は立派だが、四死球が1個だけなので出塁率は.360程度。長打率も.375とそこまで高くなく、結果としてOPS.708は「高校生としてはまずまずだが、プロ目線では物足りない」数字。三振2個(K%8.0%)と極めて少ないのは大きなプラスポイントで、コンタクト能力の高さを示している。 <構え> ☆☆☆ 3.0 左打席で前足を軽く引いてグリップを高めに構える強打者スタイル。背筋を伸ばし、両目でしっかり前を見据える姿勢や全体のバランスは平均的。 <仕掛け> 遅め 投手が重心を沈みきってから、前の移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」。ギリギリまでボールを引きつけるため、典型的な長距離砲か、2番打者タイプに多く見られるタイミング。現時点では後者に近いタイプに見えるが、始動と自分の打撃スタイルがマッチしていない可能性も考えられる。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を軽く上げて、狙いに応じて踏み出す位置を変える。始動から着地までの「間」は短めで、狙い球を絞る精度が求められる。どのコースにも、オールラウンド対応したいタイプ。 踏み込んだ足はインパクトの瞬間まで我慢できており、低め・逃げる球にも食らいつける。実際にどの方向にも打球が飛ぶように見えた。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 トップの形は自然体で力みがない。バットはインサイドアウト軌道で出てきて、ボールを捉えるまでのロスは少ない。 ただしインパクトでヘッドが落ちやすく、打ち損じも散見される。スイングの弧は大きく、捉えた時の打球はライナー性の鋭いものが多い。体が出来てくれば、長打も増えてくる可能性はある。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げが静かで目線のブレは小さい。体の開きも我慢できているが、ステップ幅が狭いせいか軸足がやや崩れがち。確実性という点ではまだ課題が残る印象だ。 (打撃のまとめ) 線の細さは残るが、非力という感じはしない。コンタクト率は高いものの、現時点では長打力・選球眼ともに平均的で、打者としての特徴が掴みづらい。今後体が出来てくると同時に、どんなタイプの打者に化けるのかは見えてこない。 最後に 現時点では守備・走塁・打撃も「抜けた武器」が見当たらない。だからこそ、プロの世界に放り込まれたときに「自分はどう生き抜くのか」を考える思考力と、それを実行に移せるセンスが問われる選手だ。それでも、打席に入る前のルーティンや足場の作り方など、打撃に対する強いこだわりは伝わってきた。コンタクト能力は低くなく、三振が極端に少ないのは、将来の伸びしろを最も感じさせる部分かもしれない。 正直、今は何者でもないので、育成枠で指名されたのは納得の評価。でも、数年後に「あの時は見抜けなかった」と驚かされる日が来るかもしれない。そんな日を密かに楽しみにして、今は静かに待ちたい。 (2025年夏 西東京大会) |