25ky-3
今岡 拓夢(神村学園3年)遊撃 180/80 右/右 | |||||||||||||||||||||||||||||||
下級生の頃から「強打の右打ちの遊撃手」として期待されてきた 今岡 拓夢。最終学年ではやや伸び悩んだ感があったものの、ショートとしての守備の上達ぶりに驚かされた。 走塁面:☆☆☆ 3.0 右打席から一塁到達タイムは4.35秒前後。これを左打者換算にすると4.1秒前後に相当し、ドラフト指名される選手としては標準的なタイムとなる。実際、公式戦29試合で3盗塁(失敗1)と、脚力を前面に出すプレースタイルではなさそうだ。 守備面:☆☆☆★ 3.5 昨年から、大型の体格の割に細かいステップを刻め、足の運びも想像以上だった。ただし、上のステージでは、三塁や二塁にコンバートされるタイプと見ていた。しかし、最終学年では最初の踏み出しの反応が鋭くなり、プレー全体から重苦しさが消えた。また、地肩は水準以上で、送球も安定している。公式戦29試合での失策は7個だが、最終学年では1個に抑え、安定感を示した。鍛え方次第では、プロレベルでもショートを担える可能性があると評価する。 打撃内容 甲子園での4打席は無安打に終わった。特に鹿児島大会から、外角に逃げるスライダーへの対応に苦労する場面が見られた。しかし、3打席目ではスライダーを好打のセンターフライ、最終打席ではストレートをレフトスタンドに届きそうな大きなレフトフライを放った。そのため、結果ほど悲観する内容ではなかった。 打撃成績表(通算成績)
セイバーメトリクス指標 出塁率 (OBP): .416(高校レベルで平均(約.350)を上回り、四球や死球を絡めた出塁能力が高い。 長打率 (SLG): .536 2塁打の多さが反映され、高校レベルで優秀なパワー。 OPS (OBP + SLG): .952 高校レベルで.900以上は非常に優れ、総合的な打力の高さを示す。 ISO (Isolated Power): .200 純粋な長打力は良好で、2塁打中心のパワーが顕著。 BABIP (打球安打率): .375 高めの数値は、打球の質や運の良さを示唆。 構え:☆☆☆ 3.0 右打席で、前足を引いて構え、グリップは高めにやや捕手側に添えられている。腰の据わりは悪くないが、後ろ足に重心を預け、前を見据える姿勢は平均的。 仕掛け:遅すぎ 早めに開いていた足を戻し、かかとを浮かせてスクエアスタンスに。動き出しはリリース直前で、「遅すぎる仕掛け」を採用。プロレベルの速球を木製バットで対応するのは難しく、BABIP.375の高さも速球対応の遅れで損なわれる。タイミング改善で、ISO.200の長打力をさらに引き出せる可能性がある。 足の運び:☆☆★ 2.5 小さく足を上げ、真っ直ぐ踏み出す。始動から着地までの「間」がなく、狙い球を絞る「点」の打撃になりやすい。内角も外角もさばきたいタイプだが、踏み込んだ足が早く地面から離れ、開きを我慢できていない。 外角の逃げる球や低めの球に苦手なのも納得でき、BABIP.375が示す打球の質を外角で活かせていない。スライダー対応の改善で、OPS.952の総合力をさらに高められる。 リストワーク:☆☆★ 2.5 打撃準備の「トップ」を作るのが遅れがちで、差し込まれやすい。バットの出が悪く、内角のさばきも窮屈。甲子園の創成館戦では、内角を攻められファールでカウントを悪くし、外角のスライダーで翻弄された。インパクト時のヘッドの下がりは少なく、ISO.200に見られる長打力は、しっかり捉えた際の接地面の多さに由来する。しかし、振り出しの遅さがBABIP.375の打球の質を制限している。創成館戦の3・4打席目の大きなフライは、弧の大きなスイングで長打力の片鱗を魅せた。 軸:☆☆☆ 3.0 足の上げ下げが静かなため、目線の上下動は少ない。足元が踏ん張れないため、引っ張って巻き込む打撃ではISO.200の力を発揮するが、右方向への打球は期待しにくい。軸足の形は崩れず、内腿の筋肉も発達し、SLG.536の強烈な打球の原動力に。軸の安定を活かし、足元の不安定さを解消すればOPS.952の生産性をさらに伸ばせる。 打撃のまとめ 打率.336、OPS.952は高い打力を示し、出塁率.416は選球眼や死球の多さが寄与。長打率.536、ISO.200は2塁打中心のパワーを裏付け、BABIP.375は打球の質や運の良さを反映する。しかし、始動の遅さや外角スライダーへの対応難が課題で、技術的な修正が求められる。スイングの再構築で、プロレベルでの確実性を高め、資質を最大限に引き出しせるようにしたい。 最後に 守備面での不安が減り、ショートとして勝負できそうなのは明るい材料。打撃は時間を要しそうだが、OPS.952やISO.200に見られる資質は魅力的。貴重な右打ちの遊撃手として、育成枠あたりでの指名が予想される。捉えた時の打球には光るものがあり、じっくり育てたい球団にとって魅力的な素材だろう。 (2025年夏 甲子園) |
今岡 拓夢(神村学園2年)遊撃 180/82 右/右 | |
今年の高校生遊撃手の中でも、最も期待しているのが、この 今岡 拓夢 。強打が自慢の、右打ちのショートストップなのだ。 (守備・走塁面) 右打席からの一塁到達タイムは、4.35秒前後。これを左打者に換算すると、4.1秒前後に相当し、ドラフト指名される選手の標準的なタイムだと言えよう。ショートとしても、大型の割に細かいステップが刻め、足さばきは想像以上に良い。鹿児島大会などを見ていると、送球の球筋も安定していて、地肩も結構強そうだった。同時期の 石塚 裕惺(花咲徳栄 - 巨人1位)と、守備に関しては遜色ないように思えた。ただし、プロでショートが任せられる素材かと言われると微妙なレベルにあり、一冬越えた成長次第ではないだろうか。 (打撃内容) 24年度の公式戦17試合では、0本 8点 2盗(1失) 打率.270 といった成績を残している。ちなみに昨年は、兄弟で甲子園に出場していたと記憶している。 <構え> ☆☆☆ 3.0 両足を揃えたスクエアスタンスで、前の足のかかとを浮かせて構えている。腰の据わりは深いが、全体のバランスとしてはいまいち。しかし、両眼で前を見据える姿勢は悪くないので、球筋を錯覚することなく追いやすい。 <仕掛け> 遅すぎ 投手がリリースを迎える直前に動き出すなど、始動のタイミングとしては「遅すぎる仕掛け」に属する。ここまで遅いタイミングでの始動となると、なかなか木製バットを使って、プロレベルの投手の球に対応するのは、日本人のヘッドスピードや筋力を考えると厳しい。 <足の運び> ☆☆ 2.0 小さくステップして、真っすぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」がないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない「鋭さ」が求められます。真っすぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのかもしれません。 踏み出した前の足が、インパクトの際に動いてしまいます。これは、意識が引っ張り中心だからだと考えられます。そのため、逃げてゆく球や低めの球への対応には課題を感じます。うまく引っ張って巻き込めた時に、強さを発揮する打者なのだろう。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みなくボールは呼び込めている。あとは、バットを引くのが遅れないように注意したい。バットの振り出しは、上からインサイドアウトで出てくるので、引っ張って巻き込むのには優れたスイングをしている。 ただし、バットのしなりを活かしたスイングではないので、外角球をどの程度打ち返せるかは微妙かも。それでもバットの先端であるヘッドも下がっておらず、広い面ではボールを捉えることができていた。スイングの弧も大きく、強烈な打球を生み出す原動力になっている。 <軸> ☆☆★ 2.5 足の上げ下げが静かなので、目線の上下動は小さめ。それだけ、錯覚を起こすことなく球筋を追いやすい。しかし、足元が盤石ではないので、身体の開きが充分我慢できていない。軸足の内モモの筋肉は発達しているが、前に傾いてしまっており、身体が突っ込まないように気をつけたい。 (打撃のまとめ) 始動が遅すぎることと、足元が動いてしまうなどの欠点を持っている。それだけ引っ張りの意識が強いだけでなく、上半身の力が勝って、下半身が支えきれず負けってしまっていることを意味する。現状は、当たれば強烈だが、確実性の低いスイングに終始している印象だ。 (最後に) 個人的には期待の大きい選手だが、今の対応力だと壁に当たって最終学年は伸び悩むかもしれない。それだけに、このひと冬の間に、もう一度打撃と向き合い、考えてみる必要があるのではないだろうか。全国的にも数少ない、強打の右打ちの遊撃手ということで期待がされるが、まだドラフト指名確実だとか、そういった領域には入ってきていない。すべては、春季大会以後の成長次第ではないだろうか。 (2024年夏 鹿児島大会) |