25ky-27





横山 悠(山梨学院3年)捕手 178/68 右/右 
 




 「松尾みたいだね」




 横山 悠 が京都国際戦でホームランを放った姿は、どこか大阪桐蔭からDeNAにドラフト1位で入団した 松尾汐恩 が打った時の姿と重なるものがあった。夏の甲子園では、打率.667と打ちまくった大会となった。


(ディフェンス面)

 横山悠は、「俺について来い」と投手を鼓舞してガンガン引っ張っていくタイプの捕手というよりは、
自分の役割を黙々と果たそうとするタイプの捕手ではないだろうか。

 そうかといって、相手打者の様子を細かく観察するようなきめ細やかさもあまり感じられない。それでも、ミットをしっかりと投手に示し、的を捉えやすくしている。グラブを下げる癖もないため、ワンバウンドの処理にも素早く対応できる。特に、左投手のワンバウンドするような難しい球にも体を投げで止めに行き、フットワークも軽快で
キャッチング全般は上手い部類

 送球に関しては、1.9秒前後といったところで、圧倒的に肩が強いわけではないが、送球のフォームに癖はなく、ドラフト候補としては平均的なレベルと言える。春に見たときには、良い選手ではあるものの、高校からプロへ直行するような特別な何かを感じられなかった。おそらく、肩の強さが圧倒的ではなかったり、捕手としての適性に特別なものが感じられなかったからではないのだろうか。





(打撃内容)

最終学年での春・夏の成績は以下の通り。

試合
打数
安打
本塁打
長打
三振
四死球
打点
打率
9
32
15
1
4
2
6
12
.469


<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合、両目で前を見据える姿勢、全体のバランスが整っており、しっかりとした構えがハマっているように見える。

 セイバーメトリクス補足: 出塁率(OBP).553は、安定した構えから
投球を見極める選球眼の良さを示唆。高いOBPは、打席での落ち着いた姿勢に裏打ちされている。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がるタイミングで動き出す「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視するアベレージヒッターに多く見られる始動のタイミングだ。根本的には、ミートを重視したスイングと言えるだろう。

 セイバーメトリクス補足: BB/K(四死球/三振)3.0は、早めの仕掛けによるタイミングの取りやすさが、
コンタクト能力の高さに繋がっていることを裏付ける。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を軽く上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してくる。始動から着地までの「間」も十分に取れており、速球でも変化球でもスピードの変化に素早く対応できる。真っ直ぐ踏み出すことで、内角・外角の球にも幅広く対応しようとするタイプだろう。

 インパクト時に踏み込んだ足元が動かず、体の開きを抑えられている。腰がやや早く開く傾向はあるものの、下半身の開きが途中で止まることで、逃げていく球や低めの球にも食らいつくことができている。
セイバーメトリクス補足: 打率.469とOPS1.241は、
幅広い球種への対応力がフェアゾーンへの打球生産に繋がっていることを示す。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を早めに作れており、速い球にも対応しやすい。バットの振り出しは上からインパクトまで振り下ろす動きで、
内角の球を肘を畳んでうまくさばけている。外角の球を強く叩く点では、木製バットだとやや苦労するかもしれないが、無理せずセンターに打ち返すことができるため、致命的な欠点とは言えない。

 インパクト時にはヘッドが下がらず、広い面でボールを捉えられている。そのため、打球がフェアゾーンに飛びやすい。それでいて、インパクトのスイングは大きく、打球を遠くに運ぶ後押しになっている。

 セイバーメトリクス補足: 孤立長打率(ISO).219は
中程度の長打力を反映。スイングの特性上、木製バットでの長打力向上には課題が残る可能性がある。

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが静かなため、目線の上下動が少なく、錯覚を起こしにくい。体の開きもある程度我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸び、軸回転でスイングできている。
調子の波は少ないタイプではないだろうか。

 セイバーメトリクス補足: 安定した軸が打率.469の高さに貢献。コンタクトの安定性は、軸のブレの少なさによるものと考えられる。

(打撃のまとめ)

 打撃技術の完成度はかなり高く、高校生としてはほぼ理想的な形に近い。それほどバットのしなりを活かせるスイングではないことや、腰がやや早く開く傾向から、木製バットで上のレベルの投手に対応するには数年かかるかもしれない。それでも、打撃に関しては非常にポジティブに評価できる素材だ。


(最後に)

 捕手としての能力は、高校生としては悪くなく、ドラフト候補としても基準レベルを満たしている。それ以上に注目すべきは
打撃の能力だ。また、一塁までの塁間を右打席から4.05秒前後で走り抜ける脚力があり、左打者換算では3.8秒前後と、プロでも上位ランクに相当する。現時点での走塁意欲や盗塁技術は高くないが、動ける選手であることは頭に入れておきたい。大学進学の話もあるが、個人的には支配下(☆)級の評価としたい。


蔵の評価:
☆☆(中位指名級)


(2025年夏 甲子園)