25ky-23
| 松井 蓮太朗(豊橋中央3年)捕手 176/78 右/左 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
今年の高校生捕手は人材不足の中、松井 蓮太朗 は高校からプロに指名される可能性が高い選手だと感じられる。個人的には好みのタイプの選手ではないが、指名されるに値する実力を持った選手だと評価したい。 ディフェンス面 私が彼を好みのタイプと感じない理由は、コースから外れた球に対して手だけを伸ばして捕る癖がある点だ。この癖は、プロの高速な配球に対応する際に致命的となる可能性がある。また、投手の微妙な心理の変化や打者の細かな動きを読み取るタイプには見えず、配球の戦略性に欠ける印象を受ける。 それでも、彼は基本的な捕手としての技術を丁寧に磨いてきた。体を小さく屈めて投手に的を向けやすくする構えは安定しており、普段のキャッチングも信頼感がある。ワンバウンドする球には下から素早くミットを出すなど、鍛錬の跡が伺える。カバーリングにも抜かりはなく、一見粗々しいプレースタイルながら、必要な役割を確実に果たす選手だ。 「俺を信じて投げて来い!」といった、投手に叱咤激励して引っ張るタイプ。周囲にも的確に指示を出せる点も強みだ。この点では、プロレベルでも捕手としてやっていける能力を備えているように思える。何より、捕球から素早く送球し、速い時には1.8秒台中盤で二塁に到達する。送球時にしっかりとしたフォームを作れないためバラつきはあるものの、素早さと地肩の強さを活かした送球能力はプロの水準を満たしており、彼の大きな強みと言えるだろう。 打撃内容 公式戦成績
セイバーメトリクス補足 OPS(.755):出塁率(.391)と長打率(.364)の合計。高校生捕手としては優秀で、コンタクト能力と選球眼のバランスを示す。プロの捕手としては平均的だが、成長余地がある。 ISO(.043):純長打率(長打率-打率)。本塁打ゼロで長打力は乏しいが、6二塁打と3三塁打は中距離打者としての特徴を反映。 wOBA(.340、推定):打撃の総合貢献度を示す。高校生として平均以上で、コンタクトと出塁能力が強み。 構え ☆☆☆ 3.0 左打席で、両足をほぼ揃えたスクエアスタンスを採用。グリップを高めに構え、両目で前を見据える姿勢、腰の据わり、全体のバランスは標準的。セイバーメトリクス視点では、打率.321と三振率(5三振/77打数=6.5%)の低さが、安定した構えからくるコンタクト能力の高さを裏付ける。 仕掛け ☆☆☆ 3.0 投手の重心が沈み込むタイミングで動き出す「平均的な仕掛け」を採用。このタイミングは、中距離打者や勝負強いポイントゲッターに多く、ISO.043の中距離型打撃と一致。選球眼(四球8、死球2)は、タイミングの取り方が適切であることを示す。 足の運び ☆☆☆★ 3.5 足を軽く上げ、真っ直ぐ踏み出すスタイル。始動から着地までの「間」は適度で、速球や変化球に柔軟に対応。内外角を捌くアプローチは、対左投手打率.429の高さに寄与。 セイバーメトリクスでは、対右投手打率.250の低さが外角球への対応力の課題を示唆するが、足の運びの安定感が低めの球や逃げる球への対応を支える。踏み込んだ前足はインパクト時にもブレず、開きを抑えている。これにより、低めや外角の球にも食らいつける。対左投手の強さは、この足の運びが体の開きを抑え、広角に打ち分ける技術に繋がっている。 リストワーク ☆☆☆★ 3.5 グリップが「トップ」に近い位置にあるため、速球への対応が早く、三振率6.5%の低さがその証拠。ただし、早めにトップを作ることでリストの柔軟性がやや制限され、ISO.043の低さに影響する可能性がある。 バットの振り出しはインサイドアウトではないが、外角球を捉えるロスが少なく、広い面でボールを捉える。打球がフェアゾーンに飛びやすい点は、打率.321とwOBA.340に反映。インパクト後も力強く振り切れており、打撃の完成度が高い。 軸 ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げは静かで、目線の上下動が少なく、体の開きも我慢できている。軸足が崩れず、調子の波が少ない。セイバーメトリクスでは、打率.321と出塁率.391の安定性が、軸の強さによるコンタクトの確実性を裏付ける。プロでの長打力向上には、スイングの爆発力を高める調整が必要だろう。 打撃の評価 松井蓮太朗は、難しい球を巧みに捉えるタイプではなく、自分のゾーンに来た球を確実に打ち返す選手。打率.321は高校生捕手として優秀で、三振率6.5%の低さがコンタクト能力の高さを示す。 OPS.755は出塁力と中距離打撃のバランスを反映し、wOBA.340は総合的な打撃貢献度が平均以上であることを裏付ける。ただし、ISO.043の低さと本塁打ゼロは長打力の課題を示し、プロでの活躍にはスイングの強化が求められる。 対左投手打率.429は内外角への対応力と足の運びの安定感が強みだが、対右投手打率.250の低さは外角球への対応に改善の余地がある。プロの捕手として求められる打力は備えており、特に選球眼(出塁率.391)とコンタクト能力はプロでも強味になりそう。長打力を伸ばせれば、下位打線で貢献できる可能性がある。 最後に 愛知県大会では、ランナーなしの場面で自分が逸らした球を素早く拾いに行く姿勢が見られた。甲子園では審判に制止されたが、ミスを自らカバーする責任感が印象的。一見粗々しいプレースタイルながら、自分の過ちを認め改善に繋げられる資質があると感じた。 当初は育成枠での指名を予想していたが、夏の大会を通じて攻守に安定したパフォーマンスを見せ、本会議での下位指名もあり得ると評価を改めた。突出したスター性はないが、ドラフトでは下位指名~育成枠あたりで、高校からプロに指名されるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆(下位指名級) (2025年夏 甲子園) |