25ky-1
阿部 葉太(横浜3年)中堅 179/84 右/左 | |
大会屈指の注目打者としてセンバツに挑んだ 阿部 葉太 。期待を上回る活躍を見せてくれた大会だったのではないか。 走塁面:☆☆☆★ 3.5 一塁到達タイムは、左打席から最速で4.0~4.1秒前後。このタイムはドラフト候補としては 中~中の上 程度となる。プロで足を売りにするほどの圧倒的なスピードはない感じられないものの、センバツの5試合で4盗塁を記録するなど、積極的な走塁が光った。特に、スピードよりも走塁技術の高さが際立つ大会だったと言える。 守備面:☆☆☆★ 3.5 打球への反応、落下点への入り、キャッチングなどはまずまずで、高校生としては上手い部類に入る。肩の強さも 中の上~上の下ぐらいで、今大会では特に球際の強さが目を引いた。驚くほどの守備範囲広さはなさそうだが、身体能力に見合ったプレーができている。中継への返球も、秋に比べ意識的に丁寧な送球を心がけているように見えた。 打撃内容 3年春のセンバツでは、5試合で1本塁打、10打点、打率.455の好成績を残し、高校生相手にレベルの違いを見せつける圧倒的な内容だった。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前足を軽く引き、グリップの高さは平均的。腰はあまり落とさず背筋を伸ばして立つが、ボールを呼び込む際は腰をグッと沈めて打つ姿勢に移る。全体のバランスや両眼で前を見据える姿勢はまずまずで、打席では適度にリラックスしつつ集中力を感じさせる構えとなっている。 <仕掛け> 遅すぎ 投手がリリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。このタイミングでは、日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、木製バットでプロレベルの球に対応するのは難しい。しかし、彼の場合は事前にタイミングをしっかり計り、足の動きを最小限に抑えることで、この始動を成立させている。彼独自のタイミングの取り方や動作なので、これはこれでありなのではないかと思える。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 開いた足のかかとをその場で上げ下げする動きで、アウトステップしながら振っている。始動から着地までの「間」がないため、狙い球を絞り、それを逃さないことが求められる。アウトステップから内角への意識が強そうに見える。 踏み込んだ前足はインパクト時にブレずに止まっており、アウトステップでも甘めの外角球や低めの球にある程度対応できそうだ。ただし、スイングを見ると、低めを拾うというより、高めの球を巧みにさばいている印象が強い。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃準備の「トップ」の形は自然体で、力まずボールを呼び込めている。バットの振り出しはインサイドアウトの最短距離で出るタイプではなくなっていたが、外角球に対してロスがなく、バットヘッドも下がらず広い面でボールを捉えられている。 甘い球なら初球から逃さない鋭い振り出しに鋭さがあり、ヘッドスピードも高校生としてはかなり速い。タイミングの取り方は独特だが、ボールのさばきは極めてシャープだ。対応力に重点が置かれており、打球に角度をつけて飛ばすタイプの打者ではなさそうだ。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げが小さい割に、目線の上下動は見られるタイプ。体の開きを我慢できており、軸足には粘りと強さが感じられる。内モモの筋肉の発達が、鋭い打球につながっている。 (打撃のまとめ) かなり独特のメカニズムで構成されており、常識の範囲で大きくいじるのは避けたほうがよさそうだ。以前はインサイドアウトを意識したスイング軌道だった印象があるが、この春はバットのしなりを活かしたスイングに変化していた。振り出しに変化は見られたものの、他の部分は大きく変えていないように思える。 (最後に) ステップをほぼしない現在の打ち方で、木製バットでどの程度の打撃を見せるのか興味深い。肩や足、長打力などのポテンシャルで魅せるタイプではないため、大学を経た4年後に今と同等の評価を得るのは難しいかもしれない。それだけ大学では高い数字が求められそうだ。仮に今プロ志望届を提出した場合、3位前後の評価を得られるのではないか。個人的には、現時点の能力を高く評価したい。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2025年 センバツ大会) |
阿部 葉太(横浜2年)中堅 179/83 右/左 | |
かなり特殊なタイミングの取り方をしてくる 阿部 葉太 。この独特のメカニズムによって、プロの世界でも異彩を放つことができるだろうか? (守備・走塁面) 一塁までの計測タイムは、左打席から 4.05秒前後 。これは、ドラフト候補の左打者としては基準を少し上回るぐらい。チームでは一番打者を担い、昨年の公式戦19試合では6盗塁を決めている。圧倒的な脚力ではないが、ドラフト候補としては 中~中の上 ぐらいと見て好いのではないのだろうか。 打球への反応、落下点までの入り、キャッチング などもまずまずといった感じで、高校生としては上手い部類。肩に関しても、中の上~上の下 ぐらいの強さがありそうだが、送球の精度のとしては、まだそこまで高くない。守備全般で言えば、中の上~上の下 ぐらいの外野手というイメージを持っている。 (打撃内容) 1年生の頃から、名門・横浜高校で活躍。2年生ながら上級生に混ざり、旧チームから主将を任されている。破壊力のある打撃というよりも、圧倒的に対応力の勝ったタイプで、プロではよりアベレージ色が強くなるのではないのだろうか。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前の足を引いた左オープンスタンスで、グリップの高さは平均的。ただし、早めに投手に胸を見せている、独特の構えとなっている。腰の据わり自体は良く、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスも悪くない。極力、ボールをしっかり見たいということの現れなのだろう。 <仕掛け> 平均~遅めぐらい カカトの足上げ下げでタイミングを取ってくるので、なかなか始動のタイミングが掴み難い。大方見ていると、投手の重心が沈みきったところで動き出す「平均的な仕掛け」~投手の重心が前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用している。 ボールを極力引き付けてから動き出すスタイルで、これは天性の長距離打者か、生粋のニ番打者に見られる始動のタイミング。彼の場合は、後者のタイプではないかとみている。 <足の運び> ☆☆☆☆ 4.0 足のカカトのみを上げ、その場でカカトを降ろすだけというスタイル。そのため、最初から足を開いて構えているので、踏み込みもアウトステップの形になっている。始動~着地までの「間」は短いものの、他の動作を極力廃止、時間の殆どをカカトの上げ下ろしだけに費やすという特殊なスタイル。アウトステップするように、意識は内角の方が強いのではないのだろうか。 踏み込んだ前の足も、インパクトの際にブレずに我慢。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも喰らいついてゆくことができ、アウトステップでも、レフト方向への打撃も苦にしない。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体なので、力み無くボールを呼び込めている。あとは、バットを引くのが遅れないように注意したい。バットの振り出しは、上から振り下ろして来るインサイドアウトのスイング軌道。そのため、インパクトまでのロスは極めて少ない。一方、木製バットを使った時に、しなりを活かせないスイングでもあり、その点上のレベルを意識すると、どうなのだろうという思いは残る。 スイングの弧もそれほど大きくなく、フォロースルーを使って遠くに運ぶといったこともない。それでもヘッドスピード自体は鋭いので、ひ弱な感じはして来ない。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 足の上げ下げがほとんどない割には、目線はそれなりに動いてしまう。彼の場合、自分からボールを捉えに行ってしまうのかもしれない。それでも開きは我慢でき、軸足の形崩れずにスイングできている。そういった意味では、調子の波は少ないタイプの選手ではないのだろうか。 (打撃のまとめ) 彼にしかできないような、独特のタイミングの図り方をしてくる天才肌。ボールを捉えることに特化している分、強く・遠くへといったスイングを重視しているわけではないようだ。この辺が、木製バットでプロの投手に対峙した時に、外角の強いボールを高い確率で打ち返せるのか? あるいは、そういったものに順応するのには、少し時間が必要なのかもしれない。 (最後に) それでも対応力に関しては、天才肌で興味深い。近年のドラフト候補だと、藤原 恭大(大阪桐蔭-ロッテ1位)あたりと比較したくなるタイプ。藤原の方が、守備・走塁では上回っている印象がある。しかし、打撃に関しては、阿倍の方がプロの世界で突き抜けられる可能性が感じられ興味深い素材ではある。 ただし、長打があるわけではない左打ちの外野手だけに、守備・走塁が図抜けていないと、なかなか評価はされ難い。そういった意味では、現状は中位ゾーンぐらいの素材と見るのが、妥当なのかもしれない。ただしシツコイようだが、打撃は特殊性があって面白い。 (2024年秋 関東大会) |