25kp-13
奥村 頼人(横浜3年)投手 179/82 左/左 | |
投手としても野手としても、プレーに全く力みが感じられない脱力感が非凡な 奥村 頼人 。この年齢でこの境地に達しているのは、ある意味すごいと思えてくる。 (投球内容) 力感のないフォームから投げ込むボールは、打者の手元までピュッとくる感覚で、高めの速球では面白いように空振りを奪えるサウスポー。3年春のセンバツでは、14回2/3イニングで14三振を奪った。決して三振を狙っている感じはないのに。 ストレート 130キロ台中盤~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 ボールの出どころを隠しつつ、ピュッとくる球質が特徴。普段の球速は130キロ台が中心だが、要所で力を入れると140キロ台を超える印象。春のセンバツでは四死球がわずか1個と、制球力の高さが光る。ただし、右打者に対しては外角にしっかり集められる一方、左打者にはややアバウトで、枠内に投げ込むだけ。そのため、左腕ながら左打者に苦もなく打ち返されるケースが少なくない。 変化球 チェンジアップ・カーブ・スライダー ☆☆☆ 3.0 ストレートで空振りを誘える一方、変化球に絶対的な武器はない。スライダーでカウントを整え、緩いカーブやチェンジアップを織り交ぜる。一通り投げられるが、ここぞという場面で打者を仕留めきれる変化球はまだ持ち合わせていない印象だ。 その他 クイックは1.1~1.2秒程度で平均的。牽制やフィールディングの技術はまずまずといったところ。走者を背負うとボールを長く持つなど、投球技術は持っている。 (投球のまとめ) 見ていて凄みのようなものは感じないが、左腕ならではの実戦力に長けているといえるだろう。そのため、スカウトに強くアピールするタイプの投手には見えづらいかもしれない。ただし、不器用な投手ではなさそうなので、プロでより優れた変化球を習得する可能性は感じさせる。 (投球フォーム) セットポジションから足を引き上げる勢いや高さは控えめ。軸足一本で立った際、膝から上がピンと伸びて「ト」の字のようになり、バランスを保つために力みが生じやすかったり、突っ込みやすい姿勢になっている。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 お尻の三塁側(左投手の場合)への落としはやや甘いが、カーブやフォークを投げられないほどではない。ただし、「着地」までの地面の捉え方が浅く、体を捻り出す時間を十分に確保できていない印象。そのため、大きく曲がる変化球の習得には不向きなフォームといえるかもしれない。したがって今後は、球速を活かした小さな変化を中心に投球の幅を広げていくことになりそうだ。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは内にしっかり抱え込んでいるわけではないが、最後まで体の近くに留まっている。故に軸がブレにくく、両サイドに投げ分ける制球力はある。ただし、左打者に対してはややアバウトになる傾向がある。 足の甲で地面を捉える感覚は悪くなく、「球持ち」もまずまず。しかし、ボールが高めに浮くケースが少なくない。体がさらに出来上がり、リリースが安定してくれば、より精度の高い制球力が期待できそうだ。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークを投げられないほどではない。また、これらの球種を多用するわけではなく、フォームが極端に窮屈になることもなさそう。腕の送り出しを見ても、肩に大きな負担がかかる投げ方ではない。力まずに投げられており、疲労も溜まりにくそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平凡で、タイミングを大きく外すようなしぶとさはない。しかし、ボールの出どころは隠せているため、打者には見えにくいところからボールが突然出てくる印象を与えるだろう。 腕は体に強く絡むような粘っこさや、鋭く振れる感じはない。「球持ち」は良いため、ある程度体重を乗せて投げられているが、まだグッと前に乗り切る感覚には欠ける。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)のうち、「着地」と「体重移動」に改善の余地がある。制球を司る動作自体は悪くないが、繊細なコントロールはまだ不足気味。故障リスクが低い点は評価できるが、将来的に武器となる球を見つけられるかが鍵となりそうだ。 (最後に) ある程度フォームが整っている投手だけに、素直に肉付けできれば球速の向上や変化球のスキルアップが期待できる。ただし、投手として何か訴えかけてくるものが少ない点は気になる。左腕に過度なスケールを求めないのが私のポリシーなので、その点では悪くない選手だと思う。しかし、強く惹かれる要素は残念ながら感じられなかった。そのため、現時点ではあまり入れ込まず、中位(3位~5位)ゾーンぐらいだと判断したい。 蔵の評価:☆☆(中位指名級) (2025年 センバツ大会) |