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奥村 頼人(横浜3年)投手 179/84 左/左 | ||||||||||||||||||||||||||||
夏の大会前に太ももを負傷し、本調子ではなかった 奥村 頼人。高校生活の集大成となる最後の夏は物足りない内容が続いたが、県岐阜商戦ではストレート中心の力強い投球で能力を出し切り、素晴らしい締めくくりとなった。ここでは、セイバーメトリクスの指標を用いて、彼の投球内容と将来性を分析する。 投球内容 これまで、力を抜いたフォームから手元で伸びるストレートが特徴だったが、県岐阜商戦では延長タイブレークにまでもつれる6回1/3イニングを全力で投げ抜く姿が印象的で、そのほとんどが真っ直ぐだった。 ストレート:130~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 奥村の強みは、ストレートの球質で空振りを奪える点。球筋は高めゾーンに集まりがちだが、これが空振りを誘うには好材料。両サイドに投げ分け、特に左打者のインハイを突く投球が光る。ピンポイントの制球力はなくとも、四死球は極めて少なく、春の左打者へのアバウトさが夏に改善された。 横変化(スライダー):☆☆☆ 3.0 横の変化量の多いスライダーでカウントを整え、ストレートと組み合わせて両サイドを攻める。 縦変化(チェンジアップ):☆☆ 2.0 県岐阜商戦では使用せず、信頼度が低い。今後、縦変化やシュート系の球を磨く必要がある。 緩急(カーブ):☆☆★ 2.5 左腕らしいカーブでカウントを整えるが、多用せず。県岐阜商戦ではリリーフ登板で、ランナーを背負う場面が多く積極的には使わなかった。 その他:☆☆☆☆ 4.0 クイックは1.1~1.2秒で平均的。牽制は軽く投げる一方、鋭い動きで走者を刺すことも。フィールディングは基準を満たし、打撃の才能もあるが、俊敏性は標準的。一打サヨナラの場面でもボールを長く持ち、相手を焦らす投球術と冷静さは、窮地でも発揮され高く評価できる。 投球のまとめ ストレートの威力や変化球の強化に課題は残るが、窮地での冷静さと素材の余力は魅力的。これまで余裕ある投球だったが、この試合では終始力を入れて投げる姿が見られたのは大きな収穫だった。 成績から考える 成績から考える奥村の成績(13回、12安打、18三振、2四死球(四球0、死球2)、0被本塁打、4失点、防御率2.77、対左打者.176、対右打者.186)は、セイバーメトリクスでも優れたパフォーマンスを示す。春からフォームの改善が見られたが、万全で臨めなかった悔しさは残る。 セイバーメトリクス指標のまとめ
特徴と意義 圧倒的な奪三振力(K/9=12.46) K/9 12.46はプロ級。ストレート(130~140キロ台)の球質と高めゾーンが空振りを誘い、左右打者(左.176、右.186)に安定。プロや大学での活躍が期待できる。 卓越した制球力(BB/9=1.38、WHIP=1.08) 四死球2(四球0、死球2)とWHIP 1.08は、ランナーを出しにくい証。ピンチでの投球術が貢献。 左右打者への安定性(左.176、右.186) 左右差が少なく、インハイのストレートとスライダーで両サイドを攻める汎用性が強み。 守備非依存の優秀さ(FIP=0.84) FIP 0.84は防御率2.77以上の能力を示す。守備に頼らず試合を支配し、広い球場なら防御率はさらに改善。 課題(BABIP=0.375、縦変化) BABIP 0.375は運や守備の影響を示唆。チェンジアップの強化で打球制御と失点削減が可能。 精神力 ピンチでの冷静さはWHIPや被打率に反映。プロでの成功に不可欠なメンタルだ。 将来性 奥村は奪三振と制球力を武器に、左右両打者を抑える投手。FIP 0.84やK/9 12.46はプロ級のポテンシャルを示す。縦変化の強化でBABIPや失点を減らせれば、さらなる飛躍が期待できる。 最後に 県岐阜商戦で魅せた熱い投球は、奥村の可能性を大いに感じさせた。余力のある投球から一転、ストレートを軸に全力で投げ抜く姿こそ、ぜひ見てみたかったものだった。それでいてピンチでも相手を焦らす冷静さを併せ持ち、技術的にも春からの改善の跡が見られたことからも、2025年の高校生左腕の中でも頭一つ抜けた存在だと評価できる。ドラフト3位前後での指名が予想されるが、順位以上の活躍が期待できそうだ。 蔵の評価:☆☆☆(上位指名級) (2025年夏 甲子園) |
奥村 頼人(横浜3年)投手 179/82 左/左 | |
投手としても野手としても、プレーに全く力みが感じられない脱力感が非凡な 奥村 頼人 。この年齢でこの境地に達しているのは、ある意味すごいと思えてくる。 (投球内容) 力感のないフォームから投げ込むボールは、打者の手元までピュッとくる感覚で、高めの速球では面白いように空振りを奪えるサウスポー。3年春のセンバツでは、14回2/3イニングで14三振を奪った。決して三振を狙っている感じはないのに。 ストレート 130キロ台中盤~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 ボールの出どころを隠しつつ、ピュッとくる球質が特徴。普段の球速は130キロ台が中心だが、要所で力を入れると140キロ台を超える印象。春のセンバツでは四死球がわずか1個と、制球力の高さが光る。ただし、右打者に対しては外角にしっかり集められる一方、左打者にはややアバウトで、枠内に投げ込むだけ。そのため、左腕ながら左打者に苦もなく打ち返されるケースが少なくない。 変化球 チェンジアップ・カーブ・スライダー ☆☆☆ 3.0 ストレートで空振りを誘える一方、変化球に絶対的な武器はない。スライダーでカウントを整え、緩いカーブやチェンジアップを織り交ぜる。一通り投げられるが、ここぞという場面で打者を仕留めきれる変化球はまだ持ち合わせていない印象だ。 その他 クイックは1.1~1.2秒程度で平均的。牽制やフィールディングの技術はまずまずといったところ。走者を背負うとボールを長く持つなど、投球技術は持っている。 (投球のまとめ) 見ていて凄みのようなものは感じないが、左腕ならではの実戦力に長けているといえるだろう。そのため、スカウトに強くアピールするタイプの投手には見えづらいかもしれない。ただし、不器用な投手ではなさそうなので、プロでより優れた変化球を習得する可能性は感じさせる。 (投球フォーム) セットポジションから足を引き上げる勢いや高さは控えめ。軸足一本で立った際、膝から上がピンと伸びて「ト」の字のようになり、バランスを保つために力みが生じやすかったり、突っ込みやすい姿勢になっている。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 お尻の三塁側(左投手の場合)への落としはやや甘いが、カーブやフォークを投げられないほどではない。ただし、「着地」までの地面の捉え方が浅く、体を捻り出す時間を十分に確保できていない印象。そのため、大きく曲がる変化球の習得には不向きなフォームといえるかもしれない。したがって今後は、球速を活かした小さな変化を中心に投球の幅を広げていくことになりそうだ。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは内にしっかり抱え込んでいるわけではないが、最後まで体の近くに留まっている。故に軸がブレにくく、両サイドに投げ分ける制球力はある。ただし、左打者に対してはややアバウトになる傾向がある。 足の甲で地面を捉える感覚は悪くなく、「球持ち」もまずまず。しかし、ボールが高めに浮くケースが少なくない。体がさらに出来上がり、リリースが安定してくれば、より精度の高い制球力が期待できそうだ。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークを投げられないほどではない。また、これらの球種を多用するわけではなく、フォームが極端に窮屈になることもなさそう。腕の送り出しを見ても、肩に大きな負担がかかる投げ方ではない。力まずに投げられており、疲労も溜まりにくそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平凡で、タイミングを大きく外すようなしぶとさはない。しかし、ボールの出どころは隠せているため、打者には見えにくいところからボールが突然出てくる印象を与えるだろう。 腕は体に強く絡むような粘っこさや、鋭く振れる感じはない。「球持ち」は良いため、ある程度体重を乗せて投げられているが、まだグッと前に乗り切る感覚には欠ける。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)のうち、「着地」と「体重移動」に改善の余地がある。制球を司る動作自体は悪くないが、繊細なコントロールはまだ不足気味。故障リスクが低い点は評価できるが、将来的に武器となる球を見つけられるかが鍵となりそうだ。 (最後に) ある程度フォームが整っている投手だけに、素直に肉付けできれば球速の向上や変化球のスキルアップが期待できる。ただし、投手として何か訴えかけてくるものが少ない点は気になる。左腕に過度なスケールを求めないのが私のポリシーなので、その点では悪くない選手だと思う。しかし、強く惹かれる要素は残念ながら感じられなかった。そのため、現時点ではあまり入れ込まず、中位(3位~5位)ゾーンぐらいだと判断したい。 蔵の評価:☆☆(中位指名級) (2025年 センバツ大会) |