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 西村 一毅(京都国際3年) 投手 177/70 左/左
 




 「着実に成長していた」





 昨夏の甲子園で、優勝の瞬間にマウンドに立っていた 西村 一毅。すでに完成度の高い投手という印象だったが、この1年間で着実な成長を見せてくれた。


投球内容

 選抜出場を逃し、最終学年を迎えた夏の甲子園。初戦で優勝候補の健大高崎と対戦し、苦戦しながらも勝利を収めた。甲子園のマウンドに3試合登板し、その能力の片鱗を見せつけた。この内容が評価され、U-18日本代表にも選出されている。

ストレート 135~142km/h 
☆☆☆ 3.0

 昨年は常時135km/h前後だった球速が、140km/h台に向上。
キレのある球質で空振りを誘い、両サイドに投げ分ける確かなコントロールを持つ。ただし、高めに抜ける球が多く、高低のコントロールに課題が残る。

横変化 スライダー 
☆☆☆ 3.0

 曲がりながら沈むスライダーを武器に、特に左打者にとって遠く感じられる球を投げる。この球でカウントを整えたり、空振りを奪うこともある。


縦変化 速いチェンジアップ 
☆☆☆☆ 4.0

 100km/h台の遅いチェンジアップと120km/h前後の速いチェンジアップを使い分け、速い方はストレートとの見分けが難しい。右打者の外角だけでなく、
左打者にも積極的に投じる

緩急 カーブ・遅いチェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 100km/h台の遅いチェンジアップを多投し、打者が待ちきれず前に出されてしまう場面も多い。さらに、100km/h未満の緩いカーブも織り交ぜ、緩急を効果的に使う。

その他 
☆☆☆☆ 4.0

 クイックは多用しないが、必要に応じて1.2秒前後の標準的なクイックを披露。牽制は緩急を巧みに使い分け、フィールディングも優れる。総じて
野球センスが非常に高い

 両サイドへの確かな投げ分けに加え、クイックタイムや投球タイミングを意図的に変えるなど、
高校生離れした投球術を持つ。

投球のまとめ

 下級生時代はドラフト候補としては物足りないストレートだったが、この1年で球速が向上し、ドラフトを意識できる投手へと成長。高
めに抜ける球は多いものの、両サイドへの正確な投げ分けや球速・タイミングの変化を駆使した多彩な投球が光る。ここまで高度なピッチングをする高校生左腕は稀有だ。





成績の表

 3年夏の京都大会と甲子園での成績を合算して考えてみたい。


項目
備考
投球回 (IP)
53
県大会 + 甲子園の合算
安打 (H)
34
被安打数
四死球 (BB + HBP)
23
四球 + 死球の合計(主に四球)
三振 (K)
62
奪三振数
防御率 (ERA)
2.72
失点ベースの標準指標

 セイバーメトリクスに基づく検証セイバーメトリクスでは、防御率2.72は優秀に見えるが、運(守備の援護)やBABIP: 打球後の打率、通常.300前後)の影響を排除して評価する。

 西村一毅のデータは、
コントロールの課題(高めの抜け球)と多彩な変化球(チェンジアップの評価が高い)を反映しており、成長途上の高校生投手としてポジティブな傾向が見られる。

WHIPの分析:
1.08

 高校野球で1.00前後はエリート級(MLBプロでさえ1.20が平均)。これは両サイドへの投げ分けとコントロールの安定を示す。初戦の健大高崎戦(4安打完投)のように、強豪相手でも安打を抑え込めている点が強み。ただし、四死球23は多めで、準々決勝の山梨学院戦(5四死球)で露呈したように、ピンチを招く要因。セイバーメトリクス的に、WHIPが低いのは「ランナーを溜めない」投球の証拠で、
ドラフト候補としてのポテンシャルが高い

K/9の分析:
10.53

 高校生で10.0超は「奪三振マシーン」級(プロのエース級で9.0前後)。チェンジアップ(縦変化4.0評価)とストレートのキレが効いており、3回戦の尽誠学園戦(7奪三振、4回無失点)で空振りを量産。セイバーメトリクスでは、三振は「運に左右されない」結果なので、
西村の支配力は本物。課題は持続性で、準々決勝の5失点では三振が少なく打ち込まれていた。

BB/9の分析:
3.91

 3.0前後が理想だが、3.91は平均的(高校で4.0超は問題)。セイバーメトリクスでは、四球は「投手自身のミス」としてペナルティが大きいため、
成長の余地大。全体の23四死球は、ストレートの高め抜けと連動し、ピンチの原因。U-18代表選出のポテンシャルを活かすには、BB/9を3.0以下に抑えるコントロール強化が必要

FIPの分析(簡易版)
2.66

 ERA 2.72に対しFIP 2.66と僅差で、守備依存が低い
「自力で抑える」投手。セイバーメトリクスではFIP < ERAの場合、運が良かった可能性を示すが、ここではほぼ一致し、真の能力が防御率に反映されている。チェンジアップの緩急が本塁打を抑えている証拠。全体の失点傾向として、初戦・3回戦の低失点(計7回3失点)と準々決勝の崩壊(6回9失点)のコントラストが、スタミナや対戦相手の適応を表す。

(全体の傾向と考察強み)

 K/9の高さとWHIPの低さが光る。三振中心の投球で、セイバーメトリクス的に
「持続可能な支配力」を持つ。甲子園5勝(自責点低め)は、プレッシャー下での安定を示す。1年間の成長(球速140km/h台、変化球の多様化)が数字に表れ、ドラフト意識できるレベル

課題

 BB/9の高さから、四死球が失点の引き金。高低のコントロール不足(原文通り)が、準々決勝のような大崩れを招く。高校野球のセイバーメトリクス研究では、
「避けられるミス」を減らすことがプロでの鍵。


最後に

 西村一毅はすでに大学進学を表明しているが、プロ志望届を提出すればドラフト指名は確実だろう。ただし、今後の伸び代にはやや疑問が残るため、上位指名は難しいと見られる。それでも、大学進学後には早い段階から公式戦で活躍できるレベルにある。即戦力として実績を積み、4年後に上位指名でのプロ入りを期待したい。


蔵の評価:
☆☆(中位指名級)


(2025年夏 甲子園)





西村 一毅(京都国際2年) 投手 177/66 左/左





 「いわゆるピッチングができる投手」





投球内容

 オーソドックスな左腕投手で、体格やフォームに特別な威圧感があるタイプではない。それでも2年生ながら夏の甲子園で24イニングを投げ、自責点0という安定感は見事だった。

ストレート 常時135キロ前後 
☆☆☆ 3.0

 球威や球速の面では、まだ高校からプロへといった感じのボールではまだなかった。ただし、キレと勢いのある球を
両サイドに投げ分けるコントロールが光る。特に右打者に対しては外角いっぱいに集められ、内角へのクロスファイヤーもズバッと投げ込む度胸と技術がある。あともう一段階、球に力強さが加われば、高校生打者にとって簡単には攻略できない投手になるだろう。

変化球 チェンジアップ・スライダーなど 
☆☆☆★ 3.5

 最大の武器は、右打者の
外角でしっかり抜けるチェンジアップだ。また、左打者に対しては外角へ逃げるスライダーとのコンビネーションで投球を組み立てる。そのほか、余裕があれば緩いカーブを織り交ぜることもあるようだ。

その他

 クイックモーションは1.05~1.1秒程度とまずまず。適度に牽制も入れてくる。テンポを強調するタイプではないものの、投球のタイミングを変化させる工夫が見られる。特にコースいっぱいに集める精度が高く、
時には際どいところを攻め、「振ってくれなければ仕方ない」と割り切った投球ができる。

投球のまとめ

 現状では、「すごい投手」というより「上手い投手」という印象が強い。今のままでは高校から直接プロ入りというより、有力大学に進学してからプロを目指すイメージが先行する。ただし、この冬を越えてストレートにさらなる磨きがかかれば、高校卒業後のプロ入りも十分に現実味を帯びてくるのではないだろうか。






投球フォーム

 セットポジションから足を引き上げる勢いや高さはまずまず。軸足一本で立った際も、膝から上がピンと伸びきることがなく、力みを感じさせない。適度なバランスを保ちながら立てている。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足をやや二塁側に開くため、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としはやや甘くなる。それでも、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種が使えないほどではない。

 「着地」までの地面の捉え方は、適度なステップで身体を捻り出す時間を確保している。曲がりの大きな変化球の習得も、ある程度期待できそうだ。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 
グラブを最後まで身体の近くに抱え込めており、外に逃げようとする遠心力を抑えられている。そのため軸がブレにくく、両サイドへのコントロールが安定しやすい。

 足の甲で地面を捉える力もなんとか我慢できており、浮き上がる力も抑えられている。「球持ち」もまずまずで、
指先の感覚にも優れているのではないか。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに多少の甘さはあるものの、気にするほどではないように思える。特に現在はスライダーやチェンジアップ系の球種を多用しており、窮屈な動きが少ないのもプラスだろう。

 気になるのは、
ボールを持つ肩が上がり、グラブ側の肩が下がる腕の送り出しの部分。この点では肩への負担がそれなりにあるように見える。ただし、力みすぎるフォームではないため、疲労が蓄積しにくいのではないかと考えられる。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りを適度に作り出せており、
ボールの出どころも隠せている。そのため、ボールがなかなか見えず、見えたとしても鋭く差し込まれやすいだろう。

 腕は
しっかりと振れており、投げ終わった後に身体に絡みつくような動きで吊られやすい。ただ、投球後に身体が三塁側に流れるため、作り出したエネルギーがリリースまでに一部ロスしている印象がある。この点が改善されれば、打者の手元までの勢いや強さがさらに増すのではないか。

フォームのまとめ

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」のうち、
「体重移動」に課題が残る。股関節の柔軟性と下半身の筋力強化を図りつつ、適切なステップ幅を身につけたい。制球を司る動作はまずまずで、故障リスクとしては腕の送り出しによる肩への負担がやや気になる。将来的に良い変化球を投げられる可能性を感じさせる、実戦的なフォームの選手だ。

(最後に)

 投球の基礎がしっかりした投手であり、フォームにもその裏付けがある。あとは出力を自然に引き上げつつ、基本を崩さないことが求められる。高校からのプロ入りは、この冬の成長次第だろう。ただし、いずれにせよ、プロでローテーションを担う投手に育つ可能性を秘めているのではないか。


(2024年夏 甲子園)