25dy-22





宮下 朝陽(東洋大4年) 遊撃 182/84 右/右 (北海出身)





 「可能性は感じるけれど」





 北海高校時代から、道内屈指の遊撃手として注目されてきた 宮下 朝陽。甲子園でもヒットを連発し、プロ志望届を提出していれば指名されたであろう存在だった。東洋大進学後も、1年春からレギュラーとして活躍。3年時に故障に見舞われたが、なんとか最後のシーズンに間に合った。そんな宮下選手の現在地を考えてみた。


走塁面:
☆☆☆ 3.0

 一塁までの到達タイムは、右打席から4.3秒弱(左打者換算で4.05秒弱に相当)で、プロの基準(4.1秒)を満たすレベルにある。プロでは一塁到達タイムが速いほど走塁の価値が高まるが、4年間の盗塁数は0。基本的に盗塁を試みる意識はプレーに見られない。ただし、ベースランニングのスピード感などを見ると、決して動けない選手ではない。

守備面:
☆☆☆ 3.0

 遊撃手としては、可もなく不可もない印象。むしろ、セカンドあたりでより良いプレーを見せることも少なくない。肘の故障の影響か、ショートでは送球が慎重で、際どいプレーでは不安が残る。そのため、動き的には内野ならどこでも守れるが、送球距離の短いセカンドや一塁側の方が適しているように思える。守備の貢献度を測るセイバーメトリクス指標「UZR」(Ultimate Zone Rating、守備範囲とエラー回避による失点防止貢献度)では、ショートでのマイナスが懸念される一方、セカンドなら平均かややプラスに転じる可能性がある。

 現状、守備も走塁も無難にこなせるが、可もなく不可もない印象。「強打の二塁手」としてアピールするのが、この選手の最も活きる道ではないかと考える。





打撃内容

 3年秋は肘の故障で出場なし。復活を目指した4年春も、故障の影響が残り、十分なプレーができなかった。それでも4年秋にはショートとして復活し、潜在能力の片鱗を再び示して指名にこぎつけた。最終学年での打撃成績は以下の通り。



 打数  安打  二塁打  三塁打  本塁打  打点  四死球  三振  打率
67 15 4 1 1 8 10 15 .224


<構え> ☆☆☆★ 3.5

 右打席でほぼ両足を揃え、前足のかかとを浮かして立つ。グリップは高めに構え、腰の据わり、全体のバランス、両目での前方の見据え方はまずまずの構え。

<仕掛け>
遅め

 投手の重心が下がるタイミングで一度ベース側につま先立ちするが、すぐにステップするため「遅めの仕掛け」に分類される。この仕掛けはボールを極力引きつけて動き出すため、生粋のスラッガーや天性の2番打者に多く見られるタイミング。ただし、最初の動き出しは「早めの仕掛け」に相当するため、打者タイプとしては
対応力を重視したアベレージヒッター寄りになりやすい特徴がある。


<足の運び>
☆☆☆★ 3.5

 小さくステップし、真っ直ぐ踏み出す。始動から着地までの「間」が短いため、狙い球を絞ることが求められる。真っ直ぐ踏み出すことからも、内角も外角もさばきたいタイプ。踏み込んだ足元は
インパクト時にブレず、低めや逃げる球にも食らいつける。右方向への強い打球やスタンドインのパンチ力を秘めている。

<リストワーク>
☆☆☆★ 3.5

 「トップ」の形は自然体で力みなくボールを呼び込める。バットの振り出しも遠回りせず、悪い癖はない。ヘッドも下がらず、広い面でボールを捉え、フェアゾーンに飛びやすい。最後まで力強く振り切るが、スイングの弧は大きくなく、フォロースルーを活かして角度をつけるタイプではない。

<軸>
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいため、目線の上下動は少ない。ただし、
動作が忙しない分、タイミングの合わせは難しいかもしれない。体の開きは我慢でき、軸足も大きく崩れていない。打率.224と低いが、出塁率(OBP、打席で塁に出る確率)は四死球10を含む77打席で.325とまずまず。長打率(SLG、安打ごとの塁打数を打数で割った値)は.358で、OPS(OBP+SLG、攻撃力を総合的に示す指標)は.683と大学レベルでは平均的だ。打率の低さは三振15(打数67に対しK%約22.4%)とやや高めな点に起因するが、四死球率(BB%約13.0%)は選球眼の良さを示唆する。長打6本(二塁打4、三塁打1、本塁打1)は67打数でIsoP(孤立パワー、長打率-打率)が.134と、パワー不足ではないことを裏付ける。

打撃のまとめ

 ベース側につま先立ちして二段階に動き出す動作だが、
次の動作が遅すぎないのは良い点。ただし、動作が忙しいためタイミングを合わせるのは難しい打ち方。それでもスイング軌道に癖はなく、下半身や軸はしっかりしている。セイバーメトリクスで見ても、出塁と長打のバランスは悪くなく、タイミングの取り方を掴めれば、OPS.750~.800程度まで伸ばし、大化けする可能性がある。


最後に

 非常に可能性を感じさせる素材。別の言い方をすれば、持っている資質をまだ試合で十分に表現できていないもどかしさがある。打席に入るルーティンや足場の作り方を見ると、
野球への深い探求がまだ足りていない印象。そのためプロ入り後に、どこまで追求できるかが鍵だろう。資質的には「打率.270、15本塁打級の守れる二塁手」になってもおかしくない才能の持ち主。

 セイバーメトリクス的に言えば、BB%を維持しつつK%を20%以下に抑え、IsoPを.150以上に引き上げられれば、wRC+(リーグ平均を100とした攻撃貢献度)が120前後、守備と走塁で平均的な二塁手としてWAR(総合貢献度)2.0~3.0級も狙える。プロ入り後、そうした選手になれるか見届けたい。現時点では「大きく化けそう」という期待を込めた高い順位での指名だが、個人的な評価は少し控えめに留めたい。


蔵の評価:
☆☆(中位指名級)


(2025年 秋季リーグ戦)