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渡邉 一生(仙台大4年)投手 172/75 左/左 (日本航空通信制出身) | |||||||||||||||||||
春のオープン戦・国学院大戦やリーグ戦開幕週の宮城教育大戦では順調さを感じさせた 渡邊 一生 。しかし、優勝を懸けたリーグ戦終盤の東北福祉大戦や平塚合宿での紅白戦を見ると、どこか物足りなさが残った。彼のリーグ戦全体の内容はどうだったのか。残した成績を参照しながら振り返ってみる。 投球内容 この春のリーグ戦の成績は、5試合登板、2勝1敗、防御率1.27。3年春・秋のリーグ戦では防御率0点台と圧倒的だったが、今季はそれほどの支配的な投球は見られなかったかもしれない。 ストレート:140キロ~最大92マイル(148キロ) ☆☆☆★ 3.5 昨年は常時145キロ~最大150キロ程度を記録していたが、春先の国学院大戦では常時140キロ強~最大92マイル(148キロ)をマーク。ボールの勢いは以前の水準を維持していた。しかし、平塚合宿での計測では最速89マイル(143キロ)程度と平凡で、春先の勢いはやや失われていた。 元来、平常心で投げる際は両サイドに投げ分ける優れた制球力を持つ。力むと高めに抜ける球も少なくないが、普段の球筋は安定しており、制球が悪いわけではない。 変化球:チェンジアップ・カーブ・スライダー ☆☆☆★ 3.5 スライダーの使用頻度は低く、チェンジアップや緩いカーブを多用する。特に右打者外角に沈むチェンジアップは威力があり、緩いカーブでカウントを整えられる時がこの投手の好調時といえる。勢いのある腕の振りから繰り出されるチェンジアップは見極めが難しく、空振りを誘う決め球となっている。 その他 クイックは1.2秒前後が中心だが、昨年は1.0秒台の素早い投球も可能だった。走者への目配せは丁寧で、鋭い牽制で刺す場面も見られる。左投手ということもあり、走者が容易にスタートを切りづらい。フィールディングの動きや反応は悪くなく、余裕があれば一塁まで近づいて下からトスする慎重さも垣間見られる。 投球のまとめ 以前から指摘されてきたように、この投手は気持ちのムラが激しく、調子の波が大きい。しかし、平常心で投げる時は計算された投球ができ、決して荒々しい素材型ではない。課題は心身のスタミナと安定感だろう。 成績から考える 4年春のリーグ戦の詳細な成績を基に、今後の可能性を考察してみたい。
被安打率とWHIP 被安打率は51.6%(投球回数の70%以下をクリア)で、リーグ戦では被安打11本を記録。WHIP(1イニングあたりの走者許容数:(被安打+四死球)/投球回数)は(11+11)/21.1≒1.04。これは優秀な値であり、走者を許す頻度が低く、ボールの威力とコンビネーションがリーグ戦で際立っていたことを示す。 奪三振能力(K/9) 奪三振率は1イニングあたり1.13個で、K/9(9イニングあたりの奪三振数)は1.13×9≒10.17。左腕としてはやや控えめだが、三振を奪える能力は確かで、特にチェンジアップを軸にした空振り誘発力が光る。高いK/9は、打者を圧倒する場面でのポテンシャルを示している。 制球力(BB/9) 四死球率は51.6%で、被安打と同じ11個を記録。BB/9(9イニングあたりの四死球数)は(11/21.1)×9≒4.69と高めだ。通算でも四死球率47.4%(76イニングで36四死球、BB/9≒4.26)と、制球の粗さが課題として浮き彫りになる。普段は両サイドに投げ分ける制球力を持つが、調子が悪い時に高めに抜ける球が増え、四死球を連発する傾向がある。 FIP(Fielding Independent Pitching) FIPは投手の自責点を除き、奪三振、四死球、被本塁打に着目する指標だ。本塁打に関するデータは提供されていないが、仮に0本とすると、FIPは概算で防御率1.27に近い値(約1.5~2.0程度)となる可能性が高い。K/9が高く、WHIPが優秀な一方で、BB/9の高さがFIPを押し上げる要因となる。守備の影響を除いた投球内容は、防御率ほど支配的ではない可能性を示唆する。 (成績からわかること) 高い奪三振率と低い被安打率は、ストレートとチェンジアップの威力に裏打ちされた投球スタイルを反映している。しかし、BB/9の高さは調子の波、特に制球の乱れが顕著な場面での弱点を示す。より高いレベルの打者と対戦する際、思い通りの投球ができない場面で冷静に自分のピッチングを貫けるかが重要だ。また、今季は3年時の0点台の防御率やストレートの勢いに比べ、やや精彩を欠いた印象も否めない。 総括 3年時や4年春先の投球内容であれば、ドラフト1位の12名に入ってもおかしくない内容だった。しかし、以前から指摘されていた調子のムラがリーグ戦終盤や大学代表合宿で見られ、1位指名には不安が残るのも事実だ。このため、秋のリーグ戦での活躍が最上位指名への分岐点となりそうだ。良い時のボールを見れば、昨年4球団競合の金丸夢斗(関西大-中日)と比較しても遜色ない投球をするだけに、ラストシーズンへの期待は大きい。 蔵の評価:☆☆☆(上位指名級) (2025年 平塚合宿) |
渡邉 一生(仙台大3年)投手 172/72 左/左 (日本航空通信制出身) | |
いろいろ紆余曲折あって、仙台大にたどり着いた 渡邉 一生 。能力的には、上位指名は間違いない実力の持ち主ではないのだろうか。 (投球内容) 3年春のリーグ戦では、3勝0敗、防御率0.27 で、リーグの最優秀防御率を獲得。その勢いで、全日本大学選手権にも出場し、そして、大学日本代表として国際大会の舞台にも立った。 ストレート 145キロ~150キロ ☆☆☆☆ 4.0 ボールにも確かな力があって、特にここぞのときの球には見るべきものがあります。そういった真っ直ぐの威力に関しては、昨年の 金丸 夢斗(関西大-中日1位)あたりと比べても、遜色ないぐらい。それほど細かいコントロールはないのだけれども、両サイドに大まかに投げ分けてくる。春は、33回2/3イニングで9四死球だったが、秋は15回2/3イニングで10四死球と、制球の乱れが激しかった。特に、普段の制球力よりも精神的にムラに課題がある選手なので、そういった悪い部分が出てしまうと、制球を大きく乱すことがある。 変化球 カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 普段は、大きく緩いカーブをアクセントに多く使ってきます。また右打者には、チェンジアップ系の球を多く使い武器にしています。むしろ左打者にはチェンジアップが投げられないので、左投手でも左打者に対して投げ難いのではないでしょうか。いずれにしても、もう少し他の球種を使えるようにしたい。 その他 クイックは、1.0秒前後~1.2秒前後と幅広く、これは投げるタイミングを時々変えている節がある。牽制も「間」を入れるような軽めのものから、刺しに来る時の鋭いものまで使い分けてくる。フィールディングなどの動きも良く、走者への目配せも悪くない。そういった、いろいろ考えて投球できる冷静さはあるようだ。気持ちの浮き沈みが激しい選手なのでで、多少今でもそういったところを顔を覗かせるときがある。それでも以前に比べれば、だいぶ落ち着いて投球できるようにはなってきるのではないのだろうか。 (投球のまとめ) 持っているボールひとつひとつ、動作一つ一つには、高い能力を感じます。その一方で、マウンドで冷静さを失ったり、そういった浮き沈みは、時々顔を覗かせます。そういった意味では、彼のそういった気質を周りが理解し、フォローできる環境に進めるかどうかが、より成功への鍵となりそおうです。。 (投球フォーム) セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足一本で立った時には、膝から上がピンと伸びきることなく、適度にバランスよく立てていた。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足をピンと伸ばさないまま重心を沈めてくるので、お尻の三塁側への落とし(左投手の場合は)はバッテリーライン上に残りがち。そういった意味では、カーブやフォークといった球種を投げるのには無理が生じやすいです。 「着地」までの地面の捉えは並ぐらいで、身体を捻り出す時間も平均的。そのため、曲がりの大きな変化よりも、球速のある小さな変化で投球の幅を広げて行きそうです。それでも、カーブはアクセントになっていますし、チェンジアップも効果的に使えているので、その点はあまり気にしなくても良さそうです。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできている。したがって軸はブレにくく、両サイドへのコントロールはつけやすいのでは? 足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を充分には抑えられていない。高めに抜けるといった球は少ないが、結構高めに甘く入ることも少なくない。「球持ち」自体は悪くないが、指先の感覚としては並ぐらいだろうか。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせない割に結構カーブを使ってくるので、窮屈になる機会も多く肘への負担も少なくないかもしれません。それでも、腕の送り出しを見ていると、肩への負担は少なそう。それほど力投派ではないので、疲労を溜めやすいといったこともなさそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの地面の捉えは並ぐらいで、ボールの出どころも平均的。そういった意味では、そこまで打者が苦になるようなフォームではないのかもしれない。 腕は強く振れており、打者としては勢いで吊られやすい。「球持ち」も良く、体重を乗せてからリリースできているように見えるものの、少し投げ終わったあと三塁側に流れるので、ダイレクトにエネルギーをリリースまで繋げられているかは疑問が残ります。この辺が改善されると、もっと打者の手元まで強い球が投げられるのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端に悪いところはないものの、どの部分も平均的。逆にこれは、伸び代として期待したい。制球を司る動作では、足の甲が浮きがちなこと。故障のリスクは、お尻を落とせない割にカーブを多く使うことで、窮屈になる機会も大きいそうなフォームではあります。また、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙です。それでも、現時点でチェンジアップなどは効果的で、この部分はあまり気にしなくても良さそうです。全体的には、どれも平均的で可も不可なしといったフォームです。今後物足りない部分を伸ばせればという意味では、伸び代を多く残しているとも言えると思います。 (最後に) 投げているボール自体は、上位(2位以内)は充分に意識できるものがあります。実際冷静な時には、いろいろ考えて投球できている点も高く評価できます。あとは、ムラみたいなものをいかに減らして行けるか? そういった部分に不安がなくなってくれば、1位の12名の中に名前を連ねることになるのではないでしょうか。 (2024年 秋季リーグ戦) |