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中沢 匠磨(白鴎大4年)投手  183/79 右/左 (白鴎大足利出身)





 「真っ直ぐには勢いがある」





 最終学年になり、速球の威力を増してきている 中沢 匠磨 。これまでは、あまりドラフト候補の匂いがしてこなかった好投手タイプだけに、その成長ぶりに驚いている。


(投球内容)

 この秋の成績は、



投球回数
被安打
四死球 奪三振  防御率 
20回2/3
16
4 19 2.18


 この成績から、WHIP(1イニングあたりの被安打+四死球数)は0.97と低く、ランナーを溜めにくい投球を裏付けている。また、K/9(9イニングあたりの奪三振数)が8.3と三振奪取能力の高さを示唆する。

ストレート 145キロ~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 
適度な角度と勢いを感じさせる球で、グイグイと押してくる。右打者には両サイドに投げ分けつつ、左打者にはやや球筋がアバウトに。全体的に球が高い印象があるが、ボールの勢いがある間はそれほど心配はなさそうだ。

横変化 スライダー 
☆☆ 2.0

 現在は、スライダーはほとんど見られない。そのため、投球においても重要な地位は占められてはいない。

縦変化 フォーク 
☆☆☆★ 3.5

 落差のあるフォークとチェンジアップのようにストライクゾーンに沈んでくるフォークがある。明確に二種類あるかはわからないが、上手く指先から抜けた時には、大きな落差となって空振りが誘える。

緩急 
☆☆☆ 3.0

 ブレーキの大きなカーブを、時々投げ込んでくる。そのため、投球のアクセントとなるだけでなく、しっかりカウントなども稼げる。

その他 
☆☆☆ 3.0

 クイックは1.2秒台とやや遅いが、走者に対してはしっかり目配せをしてから投げ込むことができている。観戦している時には牽制は見られなかったが、フィールディングなどの動きは良かった。結構ボールをじっくり持つので、投球テンポがあまり良くないタイプではない。

(投球のまとめ)

 細かい投球術はないが、四球を出さないコントロールと真っ直ぐを魅せ球に投球を組み立てることができている。特に、フォークが縦に大きく落ちるときがあり、この確率が増えれば、面白いのではないだろうか。加えて、K/BB(奪三振対四球比)が4.75と優秀で、セイバーメトリクス的に見て持続的な投球効率を期待させる。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸び切ってしまい、直立して立ってしまっている。このようにトの字で立ってしまうと、バランスを保とうとして余計なところに力が入り、力みに繋がって制球を乱す要因になりかねない。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 お尻の一塁側への落としは甘く、体を捻り出すスペースは十分確保できているといったほどではありません。それでも、結構フォークやカーブなどを投げて、結構曲がりも大きいのでは、そこまで気にしなくても良いのかもしれません。 

 「着地」までの粘りは平均的といった感じなので、体を捻り出す時間も並ぐらい。その割に、変化が大きい球を投げられる珍しいタイプです。

<ボールの支配> 
☆☆ 2.0

 グラブは最後まで後ろで解けてしまい、外に逃げようとする遠心力を内に留めていません。そのため軸はブレやすく、両サイドの投げ分けは安定しにくいフォーム。それでも、右打者には両サイドにボールを投げ分けることができています。 

 
足の甲での地面の捉えも浮いてしまい、浮き上がろうとする力を十分に抑え込めていません。そのためボールは全体的に高めに集まりがちになっているのは、正直気になります。「球持ち」もそこまで、ボールを押し込めている感じはしません。

<故障のリスク> 
☆★ 1.5

 お尻を落とせない割に、カーブやフォークといった球種を投げるので、窮屈になって肘への負担などは気になります。腕の送り出しも、ボールを持っている方の肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がっていて、肩への負担も感じます。結構な力投派でもあり、疲労を溜めやすいなど、
故障には十分に注意して欲しいところです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。そういった意味では、打者にとっては、それほど苦になるような嫌らしさはないフォーム。それでも
腕は強く振られていて、打者としては吊られて空振りを奪いやすい。まだ投げ終わったあと一塁側に重心が流れるなど、作り出したエネルギーをロスしてしまっている。それでも、これだけのボールが投げられているので、さらにエネルギー伝達が良くなれば、真っ直ぐの質や球速の上積みも期待できそうだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全ての部分で欠点ではないものの、改善余地が残されている。特に
故障のリスクが高いフォームであることが大いなる懸念。その一方で、制球を司る動作の割に、そこまで制球が悪くないので、悲観することはないのかもしれない。また、武器になる変化球の習得もどうなのかという疑問が残るものの、現時点でブレーキの良いカーブが投げられたり、落差のある縦の変化を投げられるので、悲観的になることはなさそうだ。


(最後に)

 投球内容的には、ボールにも勢いが感じられるし、変化球も悪くなく、そこまで制球が悪い印象はない。そういった意味では、本会議への指名ボーダーレベルぐらいの投手ではあるように思える。ただし、フォーム分析をする限りは、かなり
リスキーな素材との印象が強く、(支配下級)の評価はできなかった。

 しかし、フォームの欠点と実際のパフォーマンスとのギャップもあり、育成枠ならばアリなのではないかといった気がする。個人的な技術論の矛盾を知る意味でも、今後どのような成績を残していけるのか、興味深く追いたいところ。自慢のストレートは、さらなる磨きがかかっていっても不思議ではないとみている。


(2025年 秋季リーグ戦)