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正木 悠馬(上智大4年)投手 179/78 右/左 (米・レドモンド高出身) 





 「落ち着いて投げられるようになってきた」





 アメリカの高校から日本にやってきて、上智大初のドラフト指名選手となった 正木 悠馬。下級生の頃は、一球一球絞り出すように投げ込む力投派だった。しかし、最終学年では、無理に力まなくてもボールが走るよう成長してきた。


(投球内容)

 大学入学後、1年春からリーグ戦に登場。以後4年間で、実に35試合の公式戦登板がある。そんな中、今回は最終学年の成績にスポットを当てて考えてみたい。


投球回数
被安打
四死球 奪三振  防御率 
72
67
37 62 4.25

 これらの成績から、セイバーメトリクス(高度な野球統計分析)の指標として、WHIP(1イニングあたりの被安打+四死球数)が1.44とやや高めで制球の課題を示唆。一方、K/9(9イニングあたりの奪三振数)が7.75と三振能力はまずまずの水準だ。また、H/9(9イニングあたりの被安打数)が8.38と安打を許しやすくBB/K(四死球対奪三振比)が0.60と四球を抑えつつも三振効率は平均的。全体として、基礎的な耐久性(IP72回)は安定しているが、走者を溜めやすい傾向が見られる。

ストレート 140キロ~140キロ台後半 
☆☆☆ 3.0

 ハッキリとした球速はわからないものの、常時140キロ台~速い時には140キロ台後半が出ているのではないかと思われる勢いのあるボールを投げ込んでいた。投球の多くはストレート中心に構成されている感じだが、それほど細かいコースの投げ分けは見られない。全体的にボールが高く、高めに浮いた球を打ち返されるケースが目立つ。

横変化 スライダー 
☆☆ 2.0

 投げる割合も少ないのだが、横滑りスライダーを時々投げ込んでくる。特にキレ・精度共に特筆すべきものはないが、ストレートとの球速差を生かしている。

縦変化 フォーク 
☆☆ 2.0

 こちらも、時々投げ込んでくる感じ。明確に落ちるというよりも、チェンジアップ的にタイミングを外す、あるいは引っ掛けさせるといった感じだろうか。

緩急 カーブ 


 カーブも球種としてあるようだが、確認した中では見られなかった。それだけに、それほど大きなウェートを占める球種ではなさそうだ。

その他 
☆☆☆★ 3.5

 クイックは1.05秒前後とまずまず。牽制も、
走者を刺すような鋭いものが見られる。下級生の頃は、ただ力任せに投げ込んでくるだけといった感じだったが、今は落ち着いて投球できるようになってきた。あとは、「間」を意識して投げるタイミングを変えるとか、そういった投球術を覚えていければ良いのではないだろうか。

(投球のまとめ)

 まだ勢いのあるストレートをストライクゾーンに投げ込んでくるだけといった、シンプルな投球スタイル。もう少しストレートを活かすために、
変化球のキレや精度を磨く必要があったり、制球力を向上させたいところだ。本格的な野球環境にいなかっただけに、プロの世界でどういった化学反応が起きるのかを期待しての指名ではないのだろうか。

 セイバーメトリクス的に見て、BB/9(9イニングあたりの四死球数)4.62の高さが防御率4.25の要因の一つで、歩かせすぎを減らせば改善の余地が大きい。また、K/BB(奪三振対四死球比)が1.68と低めのため、変化球の活用でこの値を2.0以上に引き上げられれば、WHIPの低下も期待できる。





(投球フォーム)

 それでは、今後の可能性についてフォームを分析して考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足一本で立った時にも、膝から上がピンと伸び切ることなく、
力みなく立てているところは良いところ。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばせており、お尻は一塁側に落とせている。そのため、体を捻り出すスペースは確保でき、カーブやフォークのような球種を投げるのにも適している。

 また、「着地」までの地面の捉えも適度に粘れており、体を捻り出す時間もそれなりに確保。そういった意味では、曲がりの大きな変化球の習得も期待できそうなフォームではある。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブを最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレにくく、両サイドの投げ分けコントロールもつけやすいはず。また、足の甲での地面の捉えもできており、浮き上がろうとする力も抑えられている。もう少しリリースでボールを押し込めるようになれば、低めへの球も増えてきそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせており、カーブやフォークを投げても窮屈になりにくい。そういった意味では、肘などへの負担は少なそう。また腕の送り出しを見ていても、肩への負担も少なそう。下級生の頃に比べ力投派でもなくなってきているので、疲労は溜めにくくなってきているのではないだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れており、ボールの出どころも隠せている。そういった意味では、決して合わされやすいフォームではなさそうだ。腕もしっかり振れており、強く叩けている。ボールにも適度に体重を乗せてから投げられており、地面の蹴り上げも悪くない。最後まで、作り出したエネルギーを伝えている証ではないだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。しいて言えば、もう少し
「球持ち」を磨き押し込んだり、リリースを安定させて再現性を高めたいところ。制球を司る動作も良く、故障のリスクも低そう。将来的にも、武器になる変化球を身につけていけるフォームではないのだろうか。フォームに関しては、相当勉強して取り組んだのか? 下級生の頃に比べると、格段に良くなってきている。


(最後に)

 正直ピッチング内容だけで言えば、プロでも厳しいだろうといった結論。しかし、これだけ実戦的なフォームを身につけるまでになっており、またストレートの勢いはプロの水準を満たしている。あとは、プロの環境、プロの指導者の元、さらに高みを目指せば、プロの世界で花開く可能性は秘めている。道は険しいとは思うが、フォームを分析してみて、可能性を感じさせる素材だと初めてわかった。現時点で育成会議での指名は妥当だと思ったが、今後どうなっていくのか? 注目して見守っていきたい。


(2025年 春季リーグ戦)