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 工藤 泰己(北海学園大)投手 175/82 右/右 (北海出身)





 「平均球速は一番速い」





 
現在のアマチュア野球界において、平均球速で最も速いストレートを投げ続ける投手として、工藤 泰己 は間違いなくトップクラスだ。150キロ台後半を記録する豪速球は観客の目を釘付けにし、先発でも150km/h台前半から後半をコンスタントに叩き出すそのスピード能力は圧巻だ。


投球内容

 中背ながらガッチリした体格から繰り出されるボールは、力強さと迫力に満ちている。しかし、先頭打者に四球を与える場面が多く、制球力の課題が浮き彫りだ。

大学選手権(2025年6月)成績

項目
内容
登板
2試合
投球回
8回
被安打
9安打
四死球
7
三振
4
防御率
4.50


 
ストレート:150km/h台前半~後半
☆☆☆☆ 4.0

 平塚合宿では、マイガンで最速96マイル(154km/h)を記録するが、
打者からは「見やすい」と感じられる傾向がある。外角中心に集める制球力はあるが、シュート回転で甘く入ってくる球や、高めに浮く抜け球も多く、ボール先行になりがち。空振り率は期待ほど高くなく、球速に見合った威圧感をまだ引き出せていない。

変化球:カットボール、スライダー、スプリット
☆☆☆★ 3.5

 速球派ながら変化球のキレが光る。特にカットボール(140~145km/h)は、打者の手元でキュッと右に切れ、タイミングを外すのに有効。スライダー(135~140km/h)も横の変化が鋭く、右打者の外角でゴロを誘いやすい。スプリット(140km/h前後)は、縦に鋭く沈むが、空振りを奪うよりは打者のバットを下に潜らせる効果が強い。これにより、打者の目線を低めに誘導し、高めの速球をさらに活かしやすくしている。変化球のレパートリーは多彩だが、
決め球としての絶対的な信頼感はまだ構築途中だ。

その他

 クイックモーションは1.0~1.1秒と基準を満たしており、牽制は鋭く走者を刺す能力も備える。ただし、微妙なコースの出し入れや「間」を使った投球術は発展途上。打者との駆け引きを磨けば、さらに魅力が増すだろう。

投球のまとめ

 工藤の最大の武器は、
プロでもトップクラスの球速を誇る豪速球だ。しかし、ボール先行の傾向や、球速ほどの空振り率の低さが課題。3月の関東遠征から大学選手権、平塚合宿と、制球力の改善は見られず、プロ入り後1~2年は二軍での育成が必要だろう。地道な努力で高校時代から球速を伸ばしてきた背景を考えると、成長の余地は大きい。





投球フォーム

 セットポジションから静かに足を引き上げるが、膝がやや直立気味で力みが感じられる。軸足一本でのバランスは平均的だが、膝をもう少し柔らかく使えれば、力みが薄れ制球力も安定してくるのでは?

広がる可能性
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に伸ばす動作により、お尻の一塁側への落としが浅め。これが、カーブやフォークのような大きな変化球のキレをやや鈍らせている。ただし、体を捻り出すタイミングは標準的で、着地時のグラウンドの捉え方もまずまず。小さな変化の速い球(カットやスライダー)を中心に投球を組み立てるスタイルが適している。

ボールの支配
☆☆★ 2.5

 グラブを体に抱えきれず、軸がブレやすいため、左右の制球がアバウト。
足の甲が地面から浮いてしまい、、力むと高めに浮く球が増える。ただし、リリースポイントは前方で安定し、球持ちは良好。指先でボールを微調整できており、コントロールの基礎はそこまで悪くない。低めへの制球を磨けば、ストレートの効果も倍増するだろう。

故障のリスク
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としが浅いものの、肘や肩への負担は標準的。シュート系の球や縦の変化を多用しなければ、故障リスクはそこまで高くは無さそうだ。腕の送り出しもスムーズで、肩への負荷は少なそう。ただし、現在の球速を維持するには、体のケアには充分留意したい。

実戦的な術
☆☆☆ 3.0

 着地時の粘りは平均的で、
ボールの出どころがやや見えやすいため、打者にタイミングを合わせられやすい。腕は強く振れているが、投げ終わりに体に絡みつく粘り強さはまだ不足。体重をしっかり乗せたリリースはできており、エネルギー伝達は良好。フォームの「開き」を遅らせられれば、打者をさらに惑わせる投手になれる。

フォームのまとめ

 フォームの4大要素(着地、球持ち、開き、体重移動)では、「着地」と「開き」に改善の余地がある。特に、着地までの粘りや上体の開きを抑える工夫が、制球力と速球を活かす鍵となる。故障リスクは低く、速球派としての基盤は整っている。あとは、武器となる変化球(特にスプリットの空振り率向上)を習得できれば、プロでも輝ける。


最後に

 工藤泰己は、150km/h台中盤の豪速球を武器に、スタンドを沸かせるA級のポテンシャルを持つ。しかし、ボール先行の投球、合わされやすいフォーム、決め手に欠ける変化球など、一軍即戦力には課題が残る。2軍での育成を前提に、ドラフト2位前後での指名が期待される逸材だ。まるで原石を磨くように努力を続けて行ければ、プロの舞台でどこまで輝けるのか今後が楽しみな投手だ。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2025年 平塚合宿)