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吉納 翼(早稲田大3年)右翼 180/85 右/左 (東邦出身) 





「素直にバットが出てくる」





 吉納 翼 のスイングを観ていると、バットの出にロスがなく、どのコースでも素直にバットが出てくる印象がある。打球はセンター方向に中心に広角に飛ばせることができるのだが、その打球もグングン伸びてゆく。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、計測できたもので左打席から 4.5秒台とかなり遅い。もう少し速いタイムでも駆け抜けられるのかもしれないが、大学進学後はここまで51試合に出場し、通算で3盗塁。基本的に、足を売りにしてゆくタイプではないのは間違い無さそうだ。

 右翼手としては、この脚力なので守備範囲は広くは無さそう。落下点までの入りやキャッチングなどを観ていると無難といった感じで、特に下手な印象はない。ライトからの返球はまずまず強く、プロに混ぜても 中の上 クラスの地肩はあるのではないのだろうか。






(打撃内容)

 2年秋に、リーグ2位となる打率.364厘をマークしたものの、それまでは目立った実績はなかった。この秋は、
3本塁打 9打点 2盗塁 打率.324厘 と、長打力を兼ね備えて本格化してきた印象だ。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。それほど腰は屈まず、全体のバランスとしてはそれなりだが、両眼ではしっかり前を見据えられている。そのため、
球筋を錯覚を起こすことなく追うことができている

<仕掛け> 早め

 投手の重心が沈み始める時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多くみられる始動のタイミングです。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足を軽く上げて、地面をなぞるように回し込んで、ベースから離れた方向にアウトステップで踏み込みます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でも、スピードの変化には対応しやすい。アウトステップするように、内角への意識が強いタイプなのだろう。ただし、強引に内角を巻き込んで来るイメージは薄く、苦手な内角をさばきやすくする意味合いが強いのかもしれない。

 踏み込んだ前の足は、
インパクトの際にブレずに我慢。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができる。また、センターからレフト方向へ素直に飛ばすことができ、その打球は良く伸びてゆく。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めている。バットの振り出しも、けしてインサイドアウトではないものの、外角の球に対しては、ロスなくボールを捉えている。スイングの弧も大きめで、バットの先端であるヘッドの下がらないので、フェアゾーンにボールが飛びやすい。

 フォロースルーをなどを使って打球に角度を付けるといった長距離打者ではないものの、
センターからレフト方向への打球はグングンと伸びてゆく

<軸> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げ静かなので、目線の上下動は少なめ。体の開きも我慢でき、
軸足にも粘りと強さが感じられる。軸足の内モモの筋肉にも強さが感じられ、強烈な打球を生み出す原動力になっている。

(打撃のまとめ)

 「間」もそれなりに取れているし、スイング軌道にも癖がなく、受け止める下半身もしっかりしている。ボールを的確に追う形もできており、長距離打者ではないものの、しなりを生かしたスイングで強くボールを叩けている。
技術的には、すでに高いレベルに到達しているのではないのだろうか。


(最後に)

 打撃は間違いなくプロ級だと評価しますが、
左打ちの中距離タイプの打者。それだけに、守備や走力のアドバンテージに乏しく、よほど打力でアピールしないと、中途半端な位置づけになりかねない。それだけに、最終学年でモノの違いを示すかが、プロ入りへの条件となりそうだ。そういった打撃を期待できるだけの素材だと思うが、果たして背負うものが多い最終学年に、それを成し遂げることができるだろうか?


(2023年秋 早慶戦)