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坂口 翔颯(国学院大3年) 投手 180/80 右/右 (報徳学園出身)





「しっかりピッチングができる投手」





 報徳学園時代から、好投手として知られていた 坂口 翔颯 。改めて大学でのピッチングを魅ていると、投球が組み立てられる投手らしい投手といった感じがしてくる。意外に、そういった投球ができる投手は、アマの選手には少ない。


(投球内容)

 凄みを感じさせる投球ではないものの、3年秋のシーズンでは 
7試合 0勝2敗 ながら、防御率は 1.97 と安定。1年秋には、5勝0敗 で、防御率 1.18(2位)の好成績の残したことがある。過去4度の規定投球回数に達しており、通算で10勝を積み上げてきた。

ストレート 145キロ前後 
☆☆☆ 3.0

 球速・球威的には、ドラフト候補としては平均的。しかし、ボールに角度を感じさせる球筋で、キレのある球を投げ込んでくる。秋は32イニングで32安打を浴びているように、コースに散らせて来る割には、そういった球が苦
もなく合わされてしまう球威とフォームであることは気になる材料。。

 四死球は6個で、四死球率は 18.8% と少なく、コントロールで自滅するような危うさは感じられない。コース一杯で出し入れしたりと
、細かいコントロールや投球術を身につけている

変化球 カット・スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 カットボールでカウントを整えつつ、スライダーやチェンジアップも積極的に使ってくる。右打者には、カット・スライダーを中心に、左打者にはチェンジアップだかツーシームだか沈む球とのコンビネーションとなっている。ときには、緩いカーブなども織り交ぜてくる。三振は29個と、1イニングあたり 0.91個 で、それなりに三振は奪えていた。

その他

 クィックは、1.0秒前後~1.1秒前後とまずまず。
セカンドへの牽制などは、実にターンが鋭く上手い、。フィールディングなどの動きも悪く無さそうだが、ファーストにランナーを背負った時に、意外に走者を見ているようで見ていないことがあり、そういった走者への目配せという意味では、フォーム盗まれやすいので注意したいところ。それでも、投球術・マウンドさばき、野球センスには優れたタイプではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 球威・球速という意味では突出したものは感じられないが、ベースとなっている投球の土台はしっかりしており、さらに力強さが増してくると、素直に結果に現れやすいタイプかと。そこを引き上げられる自信がある球団にとっては、青写真を描きやすくリストにも名前を残すことになりそうだ。






(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸びがちで、全体のバランスとしても平均的。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 お尻の一塁側への落としには甘さを残し、体を捻り出すスペースとしては並ぐらい。そのため、カーブやフォークなどを投げられるものの、やや変化は鈍くなりやすい。

 それ以上に、着地までの地面の捉えが早く、体を捻り出す時間が充分確保できない。そういった意味では、球速のある曲がりの小さな変化球を中心にピッチングの幅を広げてゆくタイプではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。足の甲での地面の捉えが浅いように見えるものの、「球持ち」の良さを活かしてか? それほどボールが上吊らない。ただし、高めに浮いた球を苦になく、はじき返されることは少なくない。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としには甘さは残すものの、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種をあまり投げて来ない。したがって、窮屈になる機会は少なく、肘への負担は少なめではないのだろうか。ただし、過去肘痛でシーズンを棒に振ったこともあるので、体のケアには充分注意して欲しい。

 腕の送り出しを見ていると、角度のある投げ方はしているものの無理は感じられない。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということも無さそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉えが淡白で、打者としては
タイミングが合わしやすい。また、ボールの出処も見やすく、コースを突いたような球でも、踏み込まれて打たれやすい。

 腕はしっかり振れて体に絡んでくるが、ボールが見やすいので打者は吊られない。「球持ち」はよくて、ある程度体重を乗せてからリリースできており、地面の蹴り上げは悪くない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」「開き」に課題を抱えている。ただし、「球持ち」には優れている。制球を司る動作はよく、故障のリスクもさほど高くない。あとは、いかに武器となる球を見出して行けるかではないのだろうか。


(最後に)

 簡単にコースを突いた球が打ち返されるのは、ボールの球威の問題だけでなく、合わされやすく見やすいフォームに原因がありそうだ。その部分が改善されてくると、投球はしっかり組み立てられる土台があるので、より実戦的で嫌らしい投手になれるのではないのだろうか。そういった変化を、最終学年には期待してみたい。


(2023年秋 東都リーグ戦)