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佐藤 柳之介(富士大3年)投手  179/85 左/左 (東陵出身)





「派手さはないが」





 ビックリするような球を投げ込むわけではないが、確かな実力があるといったタイプの 佐藤 柳之介 。今年の大学球界を、代表するサウスポーの1人ではないのだろうか。


(投球内容)

 この秋の成績は、
4試合 2勝0敗 21回1/3 12安 7四死 14三 防 1.27(1位) で、最優秀防御率に輝いた。


ストレート 140キロ前後~後半 
☆☆☆ 3.0

 球速的には、それほど驚くような球威・球速はない。むしろ、ボールの出処を隠したフォームからピュッと来るので、
想像以上に打者が空振りをしたりタイミングが合わない。それを示すのが、21回1/3イニングで12安打という、56.2% という被安打率の低さ。安定したフォームとマウンドさばきで、コントロールが良さそうに見える。しかし、意外に細かい制球力はなく、ストライクゾーンの枠に投げ込んでくるといった感じで、高めに抜けてしまう球も少なくない。その辺は、四死球率が 32.8% と、投球回数の1/3(33.3%)以下には抑えられているものの、繊細さがないのを裏付ける数字となっている。

変化球 スライダー・カット・カーブ・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 変化球は、スライダー・カットボールとのコンビネーションで、たまに緩いカーブやチェンジアップ系のボールを投げ込むといった感じ。
カウントを整えるのには苦労しないが、この球を投げれば仕留められるとか、そういった絶対的な球は見当たらない。特に、右打者に対して逃げてゆくチェンジアップ系の球が滅多にみられず、シュート系の球が弱いのが気になるところ。そのへんは、1イニングあたりの奪三振が、0.65個と平凡なところからも伺われる。

その他


 走者を出すと、
一球一球投げるタイミングを変えてくるタイプ。そのため、クィックタイムも、、1.1秒前後~1.5秒ぐらいと幅が広い。ボールをじっくり持ったり、走者への目配せもしっかりしてくるので、走者としてはスタートが切りにくい。牽制は滅多に入れて来ないのと、フィールディングの動き自体は好いが悪送球したりと、もう少しその辺を見極めて行きたいポイントだ。

(投球のまとめ)

 丹念にコースを突いて来るタイプかと思いきや、意外に制球はアバウトで決め手にも欠ける部分を残している。むしろ、タイミングのとり難いフォームに特徴があるタイプかもしれない。最終学年で、本当の意味でプロで実戦力を売りにして行けるのか、見極めて行きたい部分ではないのだろうか。






(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり、特に、軸足一本で立ったときに、膝に力みなく立てていて、
バランスが好い立ち方ができている。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の三塁側への落とし(左投手の場合)に甘さを残す。カーブやフォークといった捻り出して投げるボールを投げられないことはないが、変化は鈍くなりがち。

 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。そうなると変化球の曲がりが平凡で、
武器になる球の習得には苦労するかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸もブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすい。しかし実際は、右打者にはある程度散らせているものの、
左打者へ対してはアバウトになっている。実際左右の成績を比較してみると、右打者の方が抑えられている。

 足の甲での地面の捉えがやや浅く、浮き上がろうとする力をまだ充分には抑えて込めていない。それでも「球持ち」は好いので、ある程度指先でコントロールできているのかもしれない。しかしそれでも、
高めに抜ける球は少なくない

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、それほどカーブやフォークといった球種を投げてくるわけではない。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく、肘などへの負担はあまり気にしなくても良さそう。

 腕の送り出しも、そこまで違和感は感じられず肩への負担も少なそうで、力投派でもないので疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的も、
ボールの出処を隠せていることと、球持ちが好いことで、打者としてはタイミングが計り難いのかもしれない。

 腕はしっかり振れているので、もっとストライクゾーンからボールゾーンに逃げてゆく球を身につけられれば、空振りも誘えそうなもの。しかし、体重を乗せてからリリースするという部分では物足りなく、打者の手元までのボールの勢い・球威といった部分では物足りない。フォーム的にはボールは見難いので、これで球速や手元での勢いが出てくると、全然内容は変わってきそうだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」と「体重移動」に改善の余地が残されていそう。制球を司る動作や故障のリスクという意味ではまずまずだが、将来的にいかに武器になるような球を見出して行けるのかが課題ではないのだろうか。多少の打ち難さは感じられるものの、現状そこまで嫌らしいといったほどではなく、実戦派になりきれていない印象は残る。


(最後に)

 フォーム的には、伊藤 将司(JR東日本-阪神)左腕に似たタイプかなといった印象を受ける。ただ、細かい制球力など、実戦的という部分では、社会人を経て入った 伊藤将司 ほど
実戦派になりきれていない印象を受ける。その辺を、最終学年でいかに払拭して行けるのか、見届けてみたいところ。現状は、有力な指名候補の1人ではあるが、その成長を待ちたい。


(2023年秋 神宮大会)