山内慧(２３歳・JR東日本）右翼　１８４／８０　右／右　（美来工科-専修大出身）

「意外にしぶとい」

　JR東日本の４番を任されている　山内慧　は、強打者でありながら、ボールに食らいついてゆくシブとさを持っている。少々体勢が崩されても、払うようなバッティングで外野の前に落とすような、そんな嫌らしい打撃ができるポイントゲッターなのだ。

走塁面：☆☆☆★　3.5

　一塁までの到達タイムは、右打席から４．２秒前後。これを左打者換算にすると、３．９５秒前後に相当する。このタイムは、プロに混ぜても　中の上　クラス　。打順的にも盗塁をバシバシして来るようなプレースタイルではないが、けして動けない選手ではない。

守備面：☆☆☆★　3.5

　美来工科時代から、１４０キロ台を記録する速球派として知られていた。実際外野からの返球も強肩で、プロに混ぜても　中の上　以上の肩はありそう。さらに、打球への反応や落下点までの入りを観ていても、けして下手な選手には見えなかった。

（打撃内容）

　専修大時代は確実性に課題があったが、JR東日本に入社後は４番に座り、都市対抗で若獅子賞を獲得。２年目の今年も、４番打者として外野手として優秀選手賞を獲得している。さらに、都市対抗以後の試合でも、毎試合のようにヒットを打ち続けるなど安定感は高い。

＜構え＞　☆☆☆★　3.5

　前の足を少し引き、バットを寝かせて構えます。全体のバランスとしては平均的ですが、腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢は好い感じ。打席でも、力むことなく構えられています。

＜仕掛け＞　平均的

　投手の重心が沈み込んだ底のあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多くみられる始動のタイミングです。

＜足の運び＞　☆☆☆　3.0

　足を引き上げて、少しアウトステップ気味に踏み込みます。始動～着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。軽くアウトステップするように、やや内角寄りへの意識がありそう。

　踏み込んだ前の足が、早めに地面から離れます。それだけ引っ張りを重視したスタイルなのですが、外角への球に対してはカカトをめり込ましながら、なんとか開くのを抑えます。そのため、しっかり叩くというよりも、払うようなスイングでセンターから右方向にといった打球が多いようにも見えます。

＜リストワーク＞　☆☆☆★　3.5

　打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力み無くボールを呼び込めるところは好いところ。バットの振り出しに癖はなく、ヘッドも下がらずに大きな孤を描いて振り切ってきます。ただし、打球に角度を付けるとか、フォロースルーを活かしてというスイングではないので、オーバーフェンスよりも野手の間を抜けてゆくような打球が多いタイプではないのでしょうか。

＜軸＞　☆☆☆　3.0

　足の上げ下げは大きめなので、けして目線の上下動は小さくはありません。体の開きも、腰が少し早めに逃げがちではあるのですが、極端に開くというほどではなく我慢はできています。軸足の内モモにそれほど強さは感じられないものの、地面から真っ直ぐ伸びて回転できているので、安定した打撃が期待できます。

（打撃のまとめ）

　外角をキッチリ叩け無いことが多いスイングを、しぶとく食らいつくと判断するかは微妙な感じはしました。ただし、社会人レベルでも安定した打力は光るものがあるのは確かです。自分の仕事をきっちりこなすといったマインドと技術は、プロレベルのものがあるのではないかと感じます。

（最後に）

　この手の強打者としては、守備や走力が水準以上。それも右打ちで、今年不足する外野手であることも追い風になります。ただし、大卒社会人で、けして長距離砲といった垢抜けた売りがあるわけではないだけに、プロが食指を伸ばすまでかは微妙な気はしています。チームに入れば重宝されそうな選手ではありますが、一つ間違えると特徴に欠けるきらいもあり、無理してまで指名して来るのかは意見が別れるところではないのでしょうか。個人的には、ちょっと外角の球を右方向にキッチリ叩け無い部分が引っかかっていて、☆　を付けるまでの評価には至りませんでした。

（２０２３年　都市対抗）