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稲葉 虎大(24歳・シティライト岡山)投手 183/90 右/左 (関西-東海学園大出身) 
 




「球威はプロ級」





 都市対抗前から、その球威・球速で密かに話題になっていた 稲葉 虎大 。都市対抗の本戦でも、打者二人に対してだけだったが、その能力の片鱗を魅せていた。果たして今年、ドラフトで指名されるのか考えてみた。


(投球内容)

 オーソドックスなフォームから、
リリーフだと真っ直ぐ中心に押してきます。今年になってからの、直近10試合の投球では、17回 19安 10四死 20三 防 6.35 といった成績に留まっています。


ストレート 150キロ前後 ☆☆☆★ 3.5

 リリーフだと、コンスタントに150キロ前後の真っ直ぐを投げ込んできます。基本的に空振りを誘うというよりも、
球威で詰まらせるタイプ。思ったよりもボールにバラつきはなく、結構両サイドに散らすことができている。それでも三振は、17イニングで20三振と、投球回数を上回ってくる。そして四死球10個で四死球率は 58.8% 。ボールは両サイドに投げ分けているというよりも、荒れ球で散っていて狙って欲しい時にストライクが取れず四死球に繋がっているのかもしれない。

変化球 スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0

 投球の多くがストレートで構成されているせいか? 被安打は投球回数を上回っている。しかし、時々投げ込む
スライダーにキレがあり質は良い。また何やら、時々フォークのような沈む球も投げてくる。ただしまだ、この球に全幅の信頼はおけないのではないのだろうか。

その他

 クィックは、1.0~1.1秒 ぐらいとまずまず素早く、ランナーがいればじっくりボールを持って、走者や打者を焦らすような「間」は意識できていた。牽制やフィールディングに関してはよくわからなかったが、先発だと力投するというよりも、落ち着いて丁寧に投げようという意識は感じられた。

(投球内容)

 まだまだ社会人レベルでも、実戦力があるというよりは素材型。しかし、荒れ荒れというよりも、結構「間」を使ったり、丁寧にコントロールしようという意識もあるので、けして力任せに投げているわけではない。また、速球以外にもスライダーの曲がりは良いので、あとはフォークなど他の変化球が何か一つ使えるようになってくると、投球内容も変わってきそうだ。





(投球フォーム)

 では具体的に、フォームのどの辺に問題がありそうなのか? 検証してみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足一本で立ったときにも、膝がピンと伸び切ることなく、適度にバランスを保って立つことができている。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は地面に向けて伸ばされており、お尻の一塁側への落としという意味では甘さを残す。カーブやフォークといった球種が投げられないほどではないと思うが、曲がりという意味では中途半端になる恐れがある。

 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間として並ぐらい。もう少し時間が稼げるようになると、曲がりの大きな変化球の習得も期待できるかもしれない。それでも、横滑りするスライダーの変化は水準以上だった。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留められている。したがって軸はブレ難く、両コーナーへのコントロールは悪くないのだろう。足の甲での地面の捉えは、やや浅く上体が高い。したがって浮き上がろうとする力を充分抑え込めず、ボールが上吊りやすい。制球に課題があるとすれば、サイドより高低の方ではないのだろうか。「球持ち」も充分とは言えず、指先の感覚はあまり良くなさそうには見えた。

<故障リスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としが甘いので、カーブやフォークといった球種を投げようとすると窮屈になりそう。しかし現状は、そういった球種を使う頻度も低く、そこまで大きな負担になっているとは思えない。

 腕の送り出しを見ていると、肩への負担などは少なそう。真っ直ぐが割合が多いので力投派に感じられるが、そこまで無理して速い球を投げようといった感じには見えない。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは平均的で、打者にとって合わせ難さは感じないのかも。それ以上にややアウトステップして
ボールが見やすいので、良いコースに投げても打ち返されてしまうことも多いのかもしれない。

 また投げ終わったあと腕が絡むような、粘っこさがリリースにない。打者からも、思ったほど腕が振れているようには見えず、吊られ難い可能性がある。ボールにも体重が充分乗せきる前に投げてしまっているので、打者の手元までの勢い・伸びが、球速ほど感じられていないのかもしれない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全体的に
動作の粘りが足りない印象を受ける。そのため打者としては、あまり苦にならないのではないのだろうか? 制球を司る動作は高低に課題が、故障のリスクは平均だが、将来的にどのようにして武器になる球を見出して行けるかがテーマとなりそうだ。


(最後に)

 実際支配下で指名されるほどかと言われると、個人的にはボーダーラインであるようにも思える。年齢の割には実戦力に欠けるところがあり、
球威・球速は素晴らしいだけに、意見は別れるところではないのだろうか。こういった投手は、育成枠なら指名して見ようかと思うかもしれないが、ドラフトで各球団どのような判断をするのか気になるところ。個人的には、ちょっと支配下で指名するのには怖いかなといった感想を持った。


(2023年 都市対抗)