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糸川 亮太(25歳・ENEOS)投手 174/77 右/右 (川之江-立正大出身)





 「つかみどころがない」





 めっぽう凄い球があるわけでも、繊細な制球力や打ち難いフォームがあるわけでもない 糸川 亮太 。一体西武は、彼のどこに可能性を感じて指名に至ったのだろうか?


(投球内容)

 少し、
担いだようななフォームから投げ込んでくる投手です。2023年度の公式戦成績は、35回1/3 25安 16四死 24三 防 3.06 と、これまた、可も不可もなしといった感じの成績です。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆ 3.0

 社会人の日本選手権の三菱自動車岡崎戦の模様を見直しましたが、最速150キロを記録していたものの、大阪ドームのガンは2~3キロ速めにでるので、常時145キロ前後ぐらいで考えていて良いと思います。特に繊細なコントロールがあるとか、球質に優れているわけでもありません。ただし適度な球威があり、社会人レベルで
被安打率が 70.8%というのは優秀な一方、四死球率は 45.3% と、かなりアバウトな傾向があります。実際ストライクゾーンの枠の中では、結構ボールが散っていて、コースや高さを間違わないといったタイプではありません。

変化球 シンカー・スライダー・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 特徴があるのは縦の変化で、どうも球種的にはフォークではなくシンカーだということ。この球でカウントを取ったり、空振りを奪ったりします。時々スライダーを交えたり、余裕があるとカーブなども使ってきます。この
シンカー系の球が、プロでも使えるかどうかに懸かっているのではないのでしょうか。ただし、1イニングあたりの奪三振は、0.68個 と、けして三振を多く奪ってくる投手ではありません。

その他

 クィックは、0.9秒~1.0秒ぐらいと高速です。マウンドでも堂々としていて、プロでは
タフなリリーフあたりを望まれるタイプではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 そこそこまとまっていて、それなりにボールに力があるといった感じです。何か明確な特徴があるのか?と言われると、個人的にはどうなのかな?といった感じはします。しかし、現役時代シンカーの名手として知られた 潮崎哲也ディレクターが高く評価したシンカーだけに、プロで充分に使えるといった判断での指名だと考えられます。






(投球フォーム)

 
実際の投球だけでは掴みきれない部分があるので、投球フォームを分析して考えてみたいところです。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。膝がピンと伸びがちですが、軸足一本で立った時のバランス保てています。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を比較的高い位置で伸ばされていて、お尻の一塁側への落としは悪くはありません。したがって身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種でも無理は感じません。

 「着地」までの地面の捉えは並ぐらいなので、体を捻り出す時間は平均的。そのため、曲がりの大きな変化球をものにするというよりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げて行くといったタイプではないのでしょうか。シンカーであまり空振りが誘えないのも、この辺が影響しているのかもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。そのため、軸はブレ難く両サイドへの制球はつけやすいのでは? しかし、その一方で、腕が外旋して肩をブンと振って来る分、制球がブレやすい恐れはあります。

 
足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を抑えられていません。したがって力を入れて投げると、ボールが上吊ったり抜けたりしがちです。「球持ち」自体は悪くないので、抜ける球はあまり見られませんが、全体的に球筋は高いです。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせているので、カーブやフォークなどを投げても負担は少なそう。シンカーの場合、どの程度肘などへの負担が生じるのかわからないのですが、そういった影響を受け難いだけのスペースは確保できています。

 その一方で、腕の送り出しには不安が残ります。ボールを持っている肩が上がり気味で、グラブを持っている肩が下がりがち。それ以上に、腕が外旋していて、
ブンと肩で投げている印象があるからです。こうなると、肩への負担が大きいのではないかと。それほど力投派といったほどではないので、疲労は溜め難いとは思うのですが、登板過多になったときには注意して欲しいものです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころのみやすさも並ぐらい。そういった意味では、打者にとって打ちやすいほどではないにしろ、苦になるほどのフォームではありません。

 腕はしっかり振れているので、打者としては吊られやすそうな勢いは感じます。しかし実際は、そこまで奪三振が多いわけではありません。足の甲が浮きがちなので、あまり体重が乗っているようには見えないものの、「球持ち」は良く、実際には重い球が投げられているので、この点は気にしなくても良さそう。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「球持ち」以外は平均的で、それほど粘っこいフォームではありません。足の甲のでの捉えが浅いので、ボールが高めに集まりやすい点。ブンと外旋して腕を振るので、肩への不安。将来的に、武器になるほどの変化球を習得できるのか? といった部分では微妙な印象を受けました。そういった意味では、実戦的というフォームとは言えません。


(最後に)

 この武器である
シンカーが、プロで通用するかいなか、ここに懸かっているような気がします。結構タフそうな投手なので、短いイニングでハマるかもといったところに期待しての指名ですが、私にはそこまでの確信が持てなかったので、 をつけるまでの魅力は感じられませんでした。果たして、どのような結果になるのか? 静かに見守りたいと思います。


(2023年 日本選手権)