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又木 鉄平(24歳・日本生命)投手 182/82 左/左 (日川-東京情報大出身) 
 




 「何を売りにして行くのか?」





 社会人3年目の選手で、あまりドラフト候補としては意識していなかった 又木 鉄平 。適度な勢いとまとまりのある左腕といったイメージを持っていたが、何が特徴なのかパッとは思い出せなかった。


(投球内容)

 非常に
オーソドックスなフォームの投手で、今シーズンは 52回 36安 14四死 42三 防 2.08 と、安定した成績を残していた。ドラフト後に行われた日本選手権でも、JR四国戦で6回を無安打に抑える活躍で注目される。チームでは、先発でもリリーフでも起用されていた。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆ 3.0

 大阪ドームのスピードガンは、2,3キロ速く出やすい。それでも、最速148キロを記録し、
適度な球威・球速のある球を投げ込んでいた。今シーズンは、52イニングで36安打。被安打率は、69.2% と、基準である80%以下を満たし被安打率は優秀。四死球も14個で、四死球率は 26.9% と、基準である投球回数の1/3(33.3%)以下を大きく下回り制球の不安はない。ただし、結構ストライクゾーンの枠内ではアバウトで、細かいコースの投げ分けというよりも、枠の中に安定して集められるといったコントロールであることは覚えておきたい。

変化球 スライダー・カット・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 
曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーションで、時々、カットボールやツーシームような小さな曲がりのチェンジアップを使ってくる。特にこの球を、左打者内角に食い込ませてくるところは興味深かった。52イニングで42奪三振ということで、1イニングあたりの奪三振は 0.81個。この数字は、先発しては決め手があると言えるものの、リリーフとしては0.9個以上は欲しいところ。けして三振をバシバシ取ってくるイメージはないが、最後の大会となった日本選手権では9回2/3イニングで12三振を奪って、投球回数を上回っていた。

その他

 クィックは、1.1~1.15秒 ぐらいとそれなり。牽制は平均的だったが、ランナーに対しても目配せや間をとって上手く対峙できていた。元々安定したマウンドさばきの選手で、そんなに
走者を背負ってもバタつくようなところはない

(投球のまとめ)

 さすがに社会人3年目といった感じで、冷静な投球が光った。特に絶対的なボールはなく、フォームもオーソドックスで突き抜けたものは感じない。しかし、
総合力で勝負して行くというタイプなのだろう。全く使えないという感じはしないが、それじゃ何か突き抜けた成績を残すのかと言われると疑問が残る。いずれにしても結構完成された投手なので、一年目からある程度一軍に絡んできて欲しいタイプではある。





(投球フォーム)

 いまいちハッキリわからないので、フォームを分析して考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足一本で立った時に、膝がピンと伸びてしまい、立ち方も トの字 みたいになって
突っ込みやすい立ち方です。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に落ちます。したがって体を捻り出すスペースは確保できないので、カーブやフォークといった球種には適しません。

 「着地」までの地面の捉えも早いので、体を捻り出す時間も短め。そのため、曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げて行くことになりそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。まして縦推進のフォームなので、軸のブレは少なく両サイドのコントロールは安定しやすそう。ただし、試合を観る限り、かなりその辺がアバウトだった理由がよくわかりませんでした。

 足の甲での地面の捉えも深く、浮き上がろうとする力も抑えられています。そのため、ボールが低めに集まりそうなものですが、全体的に高いです。「球持ち」も結構良さそうに見えて、指先の感覚も悪く無さそうに見えるのですが、実際の投球がアバウトなのは不思議な投手です。ただし、四死球はあまり出しません。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻が落とせないフォームですが、カーブやフォークといった球種を投げないので、それほど窮屈になる機会は少なそう。腕の送り出しも、多少ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩は下がり気味も、そこまで肩に負担がかかっている感じはしません。けして力投派でもないので、疲労も溜めやすいということは無さそうです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが足りず、打者としては イチ・ニ・サン で合わせやすそうには見えます。それでもボールの出どころは隠せているので、そこまで捉えられやすいわけではないのかもしれません。

 腕は適度に叩けていますし、ある程度体重を乗せてからリリースを迎えられているので、「体重移動」がそれほどでもないのに、重い球は投げられています。現状は少し後ろに残りがちなので、
もっと前に重心が乗って来ると打者の手元まで活きた球が投げ込めそうです。

(フォームのまとめ)

 
フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの粘りと前に移って行く「体重移動」には改善の余地はありそうです。制球を司る動作は良いのですが、細かいコントロールがないのはなぜなのか? 故障のリスクはそこまで高くは無さそうですが、武器になるほどの変化球を身につけられるかは微妙です。リスキーなフォームではないのですが、特徴を見出し難い感じです。


(最後に)

 
実際の投球でもフォーム分析をしても、つかみどころのない選手です。適度にまとまり、適度に力のある投球ができるといった意味では、左腕であるだけに有りなのかもしれません。そのため、全く使えないことはないと思います。ただし、個人的にピンと来るものや確信的なものは見出だせなかったので、(支配下級)の評価は致しません。こういった投手が、今後どのように球界に絡んで来るのか、見守って行きたいところです。


(2023年 日本選手権)