23sp-16





 芦田 丈飛(23歳・BC武蔵) 投手 185/80 右/右 (千葉英和-国士舘大-オールフロンティア)





「収まりが悪い」





 春先のDeNAとの交流戦では、3者連続三振を奪い気になる存在となった 芦田 丈飛 。その後もBCリーグ選抜などで何度か観戦したが、ボールの威力には確かなものがあった。一方で、本当のコントロールが怪しいなという感想を持っていた。


(投球内容)

 社会人のオールフロンティアから、今年BCリーグの武蔵に参加。今シーズンは、
38試合 2勝1敗7S 39回1/3 36安 17四死 38三 防 3.20 といった内容だった。

ストレート 常時140キロ台中盤~150キロ台前半 
☆☆☆★ 3.5

 真っ直ぐの勢いや球速は、NPB級の球を投げ込んできます。両サイドにはボールは散るのですが、やや
高めに抜け気味に行ったり、シュート回転することも少なくありません。被安打率は、91.5% と、かなり高め(独立リーグならば80%以下で圧倒したい)。また四死球率も、43.2% と多い。極端にストライクが入らないということはないが、ストライクゾーンの枠内で甘く入ったり、本当のコントロールがないので粘られたりすると苦しくなる。

変化球 カーブ・スライダー・フォーク・ツーシームなど 
☆☆☆ 3.0

 以前見た時は、カーブ・スライダーぐらいで、真っすぐで押してくるイメージでした。しかし、夏場の巨人との交流戦の模様をみると、意外にツーシームとかフォークとかも使っていたのに驚きました。ただし、フォークなども落ちるのですが、まだ打者の空振りを誘うといったほどではなく、少しスプリット気味に沈みが浅いので当てられます。それでも奪三振率は、1イニングあたり 0.97個 と、ほぼ投球回数並みに取れています。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒 とそれなり。牽制やフィールディングは確認できませんでしたが、それほど「間」を使ってとか、細かい出し入れができる、そういった投球術は見られません。まだまだ、ストライクゾーンにガンガン投げ込む、そういった投球に終始している感じがします。

(投球のまとめ)

 ストライク先行でガンガン行けている時は良いのですが、リズムがつかめない時も結構あります。ボールの威力は確かなのですが、制球力・変化球の精度を向上させないと、まだ一軍は見えて来ない気がします。






(投球フォーム)

 投球フォームの観点から、今後の改善点などを考えてみたい。セットポジションからスッと足を引き上げるが、それほど高い位置まで引き上げては来ない。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸びがちで、やや トの字 のような直立気味な立ち方になっている。こうなると、バランスよく立つために足の裏に余計な力が入りやすかったり、着地が早くなる突っ込みがちなフォームになりやすい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしがちなので、お尻はバッテリーライン上に落ちがち。したがって体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークなどの捻り出して投げる球種には適さない。

 「着地」までの地面の捉えは平均的で、体を捻り出す時間も並。こうなると曲がりの大きな変化球の習得は難しく、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げて行くことになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くにあるので、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができている。縦推進のフォームでもあり、
軸のブレは少なそう。そういった意味では、両サイドへのコントロールはつけやすい。

 足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を充分に押さえられていない。そのため
力を入れて投げようとすると、ボールが上吊りやすい。「球持ち」が悪いとは思わないが、ボールが押し込めていないので、ボールが抜けやすい。制球に課題があるとすれば、サイドのコントロールミスよりも、高低の部分だろう。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻の落としができない割に、結構フォーク系の捻り出して投げる球種を使うようになってきた。そのため窮屈になって、肘などへの負担は心配になる。腕の送り出しは、多少ボールを持っている腕が上がり、グラブを持っている肩が下がりがち。しかし現時点では、そこまで極端ではないので気にする必要はないのでは? むしろ結構な力投派なので、疲労は溜めやすそう。そういった時にフォームを崩して、思いがけないところを痛めるかもしれない。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りやボールの出どころは平均的で、打者としてはそれほど苦になるフォームではない。それでも
腕は強く振れているので、打者としては吊られやすい勢いがある。またボールへの体重の乗せも悪くはないように見えるが、もっと体重を乗せてからリリースできるようになると、さらに真っ直ぐの手元での威力は増しそうだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に大きな欠点は見当たらない。逆に特筆すべき点もないので、これはまだ伸びる余地があると捉えたい。
足の甲の浅さからボールが上吊りやすい点、少々故障のリスクが高い点なども気になる材料。将来的にも武器になる変化球を身につけられるかは微妙であり、伸び悩むリスクは少なくないフォームではある。


(最後に)

 即一軍にというよりは、ファームで課題に取り組み、そこが改善できればといった選手ではないのだろうか。
真っ直ぐの威力は一軍クラスがあるので、それを活かす術を磨けるかに懸かっている。育成枠では指名されるだろうと見ていたが、(支配下級)の評価までには至らなかった。上手く力を引き出させることができれば、近い将来リリーフで重宝される存在になりうるかもしれない。


(2023年 BCリーグ選抜)