23ky-35





富山 紘之進(会津北嶺) 捕手 181/70 右/右





「送球自慢の捕手」





 ドラフト指名されるまで、全くノーマークだった 富山 紘之進 捕手。一体どんな選手なのだろうと映像を確認してみると、どうも素早い切り返しのスローイングが売りの捕手だとわかった。


(ディフェンス面)

 ジェスチャーを交えながら、
投手と対話しながら導いて行くタイプの捕手。返球は座ったままですが、軽く返球するなど、俺にガンガンついて来いといったタイプではないように感じます。投手と一緒になって、投球を組み立てて行くリードではないのでしょうか。

 ミットを投手にしっかり示しつつも、一度地面に地面にグラブを降ろしてしまう癖があります。投手が目線を切ってからミットを下げるので、的がつけ難いということは無さそう。ただし、
ワンバウンド処理などでは立ち遅れる心配はあります。メリットとしては、力みなく捕球できているので、グラブさばきは柔らかく見えます。

 その一方で、コースから外れた球に対しては、ちょっと腕だけを伸ばして捕球する傾向が観られるなど、
全身でボールを止めようという姿勢には若干欠ける部分があるように思います。キャッチング全般に関しては、まだまだ色々学ばないと行けないことも多いのではないのでしょうか。

 最大の売りには、
捕ってからの動作の切り返しが素早いスローイングにあります。送球タイムは1.9秒前後とまだ平凡ですが、地肩もかなり強そう。そういった意味では、無駄な動きなどをさらに減らせると、プロでも送球でアピールできる資質があるように感じられました。

 全体的にディフェンスも、プロレベルを考えると学ばないと行けないことも多そうですが、捕手としての資質や適正といった意味では悪くはなさそう。しっかり吸収して行ければ、ディフェンス面では大きく見劣らないレベルまで行けるのではないかとみています。






(打撃内容)

 この夏の福島大会では、チームの4番として 
5試合 0本 7点 打率.294厘 といった成績で、チームをベスト4入りに貢献しました。ただし、線はまだ細く、スイングには力感が感じられず、この点は正直気になりました。

<構え> 
☆☆ 2.0

 軽くクローズスタンスで立ち、グリップを高めに捕手側に引いて添えています。腰の据わり具合、両眼で前を見据える姿勢などもイマイチで、全体のバランスとしてはもう一つ。恐らく、センターから右方向への打撃を強く意識したスタイルだと考えられます。もしそうでないとするならば、もう少しボールをしっかり見据えられる構えに変えるべきかと思います。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手の重心が下がり始めるときにベース側につま先立ちし、リリース直前に本格的に動き出す「遅すぎる仕掛け」を採用。プロレベルのスピードやキレに対応するためには、日本人の筋力やヘッドスピードを考えると、厳しいタイミングでの始動です。もう少し、動作に余裕のあるものに変えて行く必要があります。足を一度つま先立ちしても良いのですが、その後はすぐに動き出すなど、全体的に動作が遅れないように注意したいところです。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 小さく足を上げて、ベース側にインステップして踏み込んできます。始動~着地までの「間」がないので、狙い球を絞り、その球を逃さないことがより求められます。インステップするように、
外角への意識が強いタイプかと。

 踏み込んだ
前の足は、インパクトの際に止まっています。そのため、逃げて行く球や低めの球には食らいつくことができそうです。一方で、踏み込む分、内角のさばきは窮屈になりがちです。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 あらかじめ「トップ」に近い位置にグリップを添えているので、始動の遅さをここで補おうとしています。ただし、あらかじめバットを強く引いて構えると、力みが生じやすくリストワークに遊びが無くなりがちで、柔軟な打撃がし難くなります。また
グリップが奥に入りすぎているので、内角を中心にバットが中々出てこないほど極端なのは気になります。

 それでもスイング軌道自体は遠回りではなく、バットの先端であるヘッドが下ることなく振れています。このへんは、極端な構えとトップ時のグリップの位置を修正できれば、内角のさばきにも改善がみられる可能性があります。ボールを捉えてからは、
大きな弧のスイングができており、強烈な打球も生み出せるようになるかもしれません。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいので、
目線の上下動は少なめ。体の開きは我慢できていますが、足元が窮屈に見えてしまいます。このへんは、上記にも記したように、極端に外角の球をセンターから右方向に打ち返そうという打撃に特化しているので、これらの動きが緩和できれば改善できそうなポイントではあります。

(打撃のまとめ)

 まだまだバットの振り込みが足りないのか? 
腰の入ったスイングができていません。癖のある打撃フォームですが、これは徹底的に右方向への打撃を意識していたからだと考えられ、そこがわかって行っているのであれば、ありなのかなとも感じます。


(最後に)

 
送球には光るものはありますが、ディンフェス全般、打撃に関しても、プロの一軍を意識できるようになるには、かなりの時間が必要なのではないかと感じます。仮に、この癖のある動作を意識的にやっていたとすれば、それはそれで思考力・発想力の点では興味深い選手だとは思います。いずれにしても、育成5位での指名が示す通り、現状は (支配下級)の評価はできませんでした。彼のこだわりのあるプレースタイルが、プロの世界でどのように生かされるのか、注視して見守って行きたいところです。


(2023年夏 福島大会)