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東松 快征(享栄高校)投手 177/83 左/左 | |
昨秋の時点から、球威や球速という意味では、高校NO.1だと評されていた 東松 快征 。 一冬越えても、その真っすぐは健在。そして何より、チェンジアップの落差に磨きがかかってきた。このまま順調に夏まで成長を続ければ、1位の12名に名を連ねても不思議ではないところまで来ているのではないのだろうか。 (投球内容) それほど上背はないのですが、ガッチリした体格から投げ込むパワー型左腕です。この春は、11回 1安 0四死 16三 防 0.00 といった完璧な内容でした。 ストレート 140キロ前後~92マイル・148キロ ☆☆☆★ 3.5 リリーフで登場してきた代わり端は、140キロ前後とそこまで絶対的ではありませんでした。しかし、イニングが進むにつれエンジンが温まってきて、要所では140キロ台後半を連発しました。真っ直ぐ自体は、結構高低に暴れる傾向はあるものの、コースの投げ間違いが少ないこと。そして球威型の球質で、並の高校生では詰まらされてしまう球威と、思わず高めのボール球でも吊られてしまう勢いがあるのは確かです。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆☆ 4.0 時々緩いカーブは見られるものの、変化球は曲がりながら沈むスライダー。それに、こんなに落ちるチェンジアップを、高校生が投げているのを初めてみたというぐらいに、縦に鋭く落ちるチェンジアップような沈む球があります。スライダーの曲がり自体も良いのですが、チェンジアップほど上手く制御できていない感じで、本当の意味で頼れる変化球はチェンジアップだと考えられます。この球は、プロでも充分通用するのではないのでしょうか。 その他 この部分は、観戦した試合では確認できなかったので、昨年の寸評からの抜粋。クィックは、1.05~1.10秒前後とそれなり。牽制はそれほど鋭いものは観られませんでしたが、下手では無さそうです。フィールディングの反応や動きは良いのですが、投げるまでが慎重になってセーフになってしまう場面も観られました。要所でも踏ん張れる選手で、気持ちの強さがマウンドさばきにも現れるタイプの力投派でもあります。 (投球のまとめ) 昨年から明らかにストレートの球威や球速が上がったのか?と言われると微妙ですが、元々曲がりの良かった変化球に磨きがかかり、粗っぽかった制球力も許容範囲になってきました。そういった意味では、力と技の均衡も取れてきて、中途半端な大学生左腕を獲るぐらいならば、こちらを獲ろうという判断をしてくる球団も出てくるのではないかと。現時点でも、2位までには消えると思います。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、昨年からの変化を見てゆきます。セットポジションから、勢い良く高い位置まで引き上げてきます。そういった意味では、リリーフタイプのフォームといった感じはします。軸足もピンと伸び切ることなく、適度に高く引き上げた足とバランスをとって立てていました。特に昨年からの大きな変化は、ワインドアップで振りかぶっていたのをセットポジションから投げるようになったことでしょうか。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0 お尻はある程度三塁側(左投手の場合)に落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げるのにも無理は感じられません。また平凡だった「着地」までの粘りも、少し前に足を逃がすのが上手くなったように見えます。これにより身体を捻り出す時間も確保でき、変化球の曲がりが大きくなった可能性があります。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする力を抑えることができています。そのため、両サイドへの投げ訳は安定しています。足の甲での地面の捉えも、昨年よりもしっかり地面を捉えられるようになりました。したがって浮き上がろうとする力が抑えることができ、高めに抜ける球も減ってきたようには見えます。今でもボールが高めに抜けたりと、ボールの押し込みや指先の感覚という意味では不安もあるのですが、試合を壊さない程度まで、制球は安定してきたといえるでしょう。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈にはなり難いのでは? そういった意味では、肘などへの負担はそこまで気にすることは無さそうです。 腕の角度に以前ほどは無理が感じられなくなったのですが、低い位置から高い位置に肘を急に引き上げる動作が見られるので、その点で肩への負担は大きいのかな?という不安は感じます。昨年よりは、無理に力を入れなくても安定して速く強い球を投げられるようになっているので、そこまで力投する機会も限られてきているようには感じられます。そういった意味では、全体的には昨年よりも負担は少なくなってきているのかもしれません。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは作れるようになってきたことと、適度にボールの出どころは隠せているように見えます。そういった意味では、昨年のように イチ・ニ・サン でといった感じではなく、イチ・ニ~のサン のニ~のタメが作れるようになってきました。このことで、簡単に合わせられるといった場面は減ってきたのではと。その辺が、春の11イニング投げて被安打は1本という、圧倒的な投球にも現れていたのかと。 気になるのは、「球持ち」がまだ浅いのか?振り下ろした腕が身体に絡んでくるような粘っこさがないところ。それでも、適度に体重は乗せてからリリースできているので、打者の手元まで球威のある球は投げられていました。投げ終わったあと、身体が流れるといった傾向も薄れ、作り出したエネルギーを素直にボールに伝えられるようになってきたのではないのだろうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」やボールの押し込みといった部分にまだ課題は感じられる。ただし、この辺は非常に繊細な部分なので、あまり気にしすぎると投球を乱す要因にもなりかねないので注意したい。制球を司る動作、投球の幅を広げてゆくといった部分も良く、極端ではないものの故障のリスクがそれなりに感じられるフォームではあるということ。そういったことを除けば、力と技の融合も、かなり一冬の間に進んできたのかなといった印象があります。投球は粗っぽいですが、技術的には着実な成長が感じられました。 (最後に) イメージ的には、東海大相模から中日に入った 小笠原 慎之介 に近いものを感じます。夏までに、もうワンランク内容が引き上がってくれば、文句なしの1位候補だと評価できそうなところまで来ています。夏の大会での躍動、今からとても楽しみです。 蔵の評価:☆☆☆(上位指名級) (2023年 春季愛知大会) |