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石田 裕太郎(中央大) 投手 180/80 右/右 (静清出身)
 




「1年目から先発争いできる」





 派手さのある球を投げるわけではないが、繊細なコントロールと巧みな投球術で、一年目からローテーション争いに割って入って来られそうななのが、この 石田 裕太郎 。ドラフト5位で、一軍ローテーションを意識できる即戦力候補という意味では、かなりの掘り出しものかもしれません。


(投球内容)

 下級生のときから公式戦で頻繁で投げてきた選手ですが、着実に力を付けてきました。4年秋のリーグ戦では
36回2/3 31安 9四死 24三 防 1.72(7位) と安定してました。

ストレート 140キロ前後~140キロ台中盤 
☆☆☆★ 3.5

 球速的には、
ドラフト候補として平均的。しかし、ボールのキレが良いのと、何より低めやコーナーに丹念に集められるコントロールがあります。投球を見ていても、コース一杯で微妙に出し入れできる投球術あり、36回2/3イニングで9四死球と、四死球率は 24.5% と少ないです。ただし、キレ型の球故に甘く入ると打ち返されやすく、そのへんは 被安打率が84.6%と、やや学生相手では高めに出ています。当然、プロの一軍打者相手だと、よりこの傾向はハッキリ出てくる可能性があります。

変化球 スライダー・カット・チェンジアップ・スプリットなど 
☆☆☆★ 3.5

 真っ直ぐに近い、球速のある小さな変化球を多く使ってきます。スライダーよりも、小さく変化するカットボール。チェンジアップも、ツーシーム気味に小さくシュートする感じ。スプリットもストンと落ちるというよりも、低めからボールゾーンへと沈ませるといった感じです。そのため、1イニングあたりの奪三振は、0.65個 と、ドラフト指名選手としては少なめです。

その他

 クィックは、0.9~1.0秒 ぐらいと高速で、牽制も非常に入れるタイミングが上手い。しっかりランナーに目配せをしたり、「間」を使って投げるので、
容易には盗塁を許さないのではないのでしょうか。微妙な出し入れをできる投球術もありますし、投げるタイミングを変えたりしてくるなど、持っている引き出しを遺憾なく発揮します。そういった完成度は、プロのローテーションクラスです。

(投球のまとめ)

 
球威の弱さと三振の少なさは多少気になりますが、低めやコーナーに集められ投げミスの少ないコントロールは一級品です。巧みな投球術もあり、やっていることはプロのローテーションクラスです。あとは、もうワンランク・ツーランク真っ直ぐが磨かれてくると、年間を通して先発入りできる、そんな投手に育って行けるかもしれません。そういった完成度の高さは、今年の指名クラスでも指折りだと言えるでしょう。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えて行きましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立った時に、
膝に力みがなく立てているところは良いところ。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としは甘めです。そういった意味では、体を捻り出すスペースが充分ではないので、カーブやフォークなどが投げられないことはないと思いますが、曲がりは鈍くなってしまうかもしれません。

 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間も並ぐらい。こうなると大きく曲がる変化球は望み難く、球速のある小さな変化を中心に投球を組み立てている今のスタイルは自然です。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドのコントロールjは安定しやすいのでは?

 
足の甲の地面の捉えが浮きがちなので、浮き上がろうとする力を充分に抑え込めていない可能性はあります。しかし、その代りに、重心を深く沈め腕の位置もかなり下がって出てくるので、低めに集めることができているのではないのでしょうか。また「球持ち」も良く、指先の感覚に優れていそうです。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としは甘めですが、カーブやフォーク系の球種はそこまで使ってきません。多少負担の少ないスプリットは結構使ってくるものの、そこまで気にしなくても良さそう。

 ボールの送り出しを観ていても、肩への負担は少なそうです。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並から少し見やすいぐらい。そういった意味では、
フォームとしてはやや合わされやすいかもしれません。その辺を、いかに繊細なコントロールで投げミスをしないかが大きいと考えられます。

 投げ終わったあと腕が身体に絡んでくるなど、粘っこさは感じられます。気になるのは「球持ち」が悪く無い割に、
重心が流れ気味で充分に体重を乗せてリリースできている感じがしません。そのため、ウェートの乗った球が投げられず、上半身や腕の振りによるキレで勝負するフォームになっているのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「球持ち」以外の部分には改善の余地はありそうです。それでも、故障のリスクはさほどではありませんし、制球も足の甲が浮きがちでも低めに集められています。あとは、いかにして武器になる球を見出して行けるかといった課題はありますが、総合力で勝負して行くタイプだと言えるでしょう。フォームとしては、合わされやすい部分と球威の無さを、いかに克服して行けるかに懸かっています。


(最後に)

 実際の投球に関しては、
アマチュアの選手としてはかなり総合力が高い投球をしています。良く言えば完成されている、悪く言えばもう引き出しを出し切っているとも言えます。あとは、フォーム的・肉体的な部分での上積みは残されていると思うので、持ち前の投球センスにそういったものを上手く組み合わせ行けるかではないのでしょうか。

 冒頭にも書いたように、キャンプ・オープン戦で結果を残して行ければ、開幕ローテーションに入って行ける、そんな可能性すら感じます。ただし、まだ年間を通じて安定した成績を残すまでには、もうワンランク・ツーランク力強さなどを増してゆかないと一軍の打者相手だと壁に当たってしまう気がします。一年目にそれなりに一軍を経験して、それを活かした2年目以降にどう花開かせるそういったタイプではないのでしょうか。それでも、ドラフト5位で1年目から開幕ローテーション争いが期待できる、そういった意味ではかなりの掘り出しものになれる可能性があります。短期で欠点を埋めて行けるようだと、
新人王の穴候補になっても不思議ではありません。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2023年 秋季リーグ戦)