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岩井 俊介(名城大4年)投手 182/90 右/右 (京都翔英出身) 




 「地に足が着いてきた」





 春までは、球速は破格でも、何処かボールが軽かったり、簡単に打ち返されてしまったりと、フワフワしたところがあった 岩井 俊介 。しかし、この秋は、春の成績や全日本にも選ばれた自信なのか? 一つ一つの動作が地に着いてきて、落ち着いて投げられるようになった気がする。


(投球内容)

 スリークォーターから投げ込んで来る投手で、この秋は 
40回2/3 33安 11四死 36三 防 1.77(3位) と、春そんなには数字的に変わっていない感じがする。

ストレート 145キロ~150キロ台前半 
☆☆☆☆ 4.0

 以前はもっと球威に物足りなさがあったのだが、この秋はそういった違和感はだいぶ薄れた感じがする。スコーンと甘く浮いた球を打ち返されるケースがあったが、この秋は
容易には真っすぐが打ち返されない勢いが出てきた。全体的にボールが高かったり、ゾーン内での制球に甘さは残すものの、圧倒的なスピード能力で打ち損じてくれる、そういったケースが目立ってきた。

 被安打率は 81.2%(目安は70%台) と、これだけ破格な球速を記録する割には圧倒できなかったりするが、四死球率は 27.1% と、投球回数の1/4(目安は1/3以下)ぐらいと、四死球で自滅するような危うさはない。ただし、これがプロの一軍の打者相手に、この甘さで打たれないかは、また別の話ではある。

変化球 スライダー・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 投球の多くは、小さく曲がる
スライダー系のボールとのコンビネーション。あとは、時々シンカーだかフォーク系の小さく沈む球を投げてくる。春は、もっと縦の変化で引っ掛けさせていたイメージがあるものの、基本的にあまり空振りを誘える変化球は持っていない。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと高速で、春よりも素早く投げ込めるようになってきた。牽制は、軽く入れるぐらいの感じ。フィールディングの動きも並みだが、以前よりも落ち着いて投げられるようにはなってきている。

(投球のまとめ)

 成績が目に見えて春より良くなっているわけではないが、
真っ直ぐの球威・勢いは春より勝っているように見えた。何より、マウンドでの自信というのが感じられるようになり、一球一球自分のペースで投げられるようになったことは大きい。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみたい。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足はピンと伸びがちではあるが、全体にバランスは保って立てている。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 足をピンと伸ばしきる前に重心を沈めてしまうので、お尻はバッテリライン上に落ちてしまいます。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さないフォームです。まして、腕の振りもスリークォーターなので、そういった傾向が強そうです。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間も並みぐらい。そういった意味では、曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心に、投球の幅を広げてゆくことになりそうです。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで、なんとか体の近くに留めています。したがって軸はブレ難く、両サイドの制球はつけやすいのでは。まして、フォームが縦推進なので、その傾向は強そうです。

 足の甲での地面の捉えも悪くないように見えるので、浮き上がろうとする力を抑えられているようにみます。しかしこれは、
肘をしっかり立てて投げられない腕の振りなので、ボールが抜けたり高めに浮きやすい恐れがあります。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせないものの、それほどカーブやフォーク系の球を多くは使ってきません。そういった意味では、そこまで肘への負担が大きいかは微妙です。

 腕の送り出しを見ていても、肩への負担も大きいそうには見えません。外旋してブンと腕を振る傾向はありますが、そこまで力投派でもないので、疲労も溜めやすいことも無さそうです。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」の粘りは平均的で、ボールの出どころも並みぐらいでしょうか。打者としては、縦推進のフォーム故に、タイミングは余計に合わせやすい傾向がありそうです。

 腕の振りも、そこまで鋭いとか体に絡むような粘っこさもないので、打者も吊られやすいといったほどでは無さそう。ボールへの体重の乗せも、最後
一塁側に流れてしまうように、作り出したエネルギーをロスしてしまい、ダイレクトにリリースに繋げていません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」で言えば、どれも極端に悪いわけではないものの、まだ改善の余地が残されています。制球を司る動作は、肘が立てて投げられない故にボールが抜けれやすい腕の振り。故障のリスクはそこまで高くないものの、将来的に
武器になるような変化球を習得できるかと言われると微妙です。けして実戦的なフォームとは言えず、伸び悩むリスクはそれなりに高いです。


(最後に)

 
人並み外れた球速の持ち主ではあるのですが、その球速ほど打者が苦になるかは微妙です。そういった意味では、相当スピードで圧倒できないと厳しく、球種のバリエーションも少なそうことを考えると、大成するとすればリリーフではないかと考えられます。そういった使い方で活かしてゆくのあるならば、ありなのではないのでしょうか。春よりワンランク球威が増してきましたし、マウンドでも落ち着いて投げられるようになってきました。そういった部分を考慮して、ワンランク上の最終的な評価としたいと思います。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2023年  秋季リーグ戦)


 








岩井 俊介(名城大4年)投手 182/90 右/右 (京都翔英出身) 





「球速は破格だったが・・・」





 大学日本代表を決める平塚合宿でも、球速的には際立つものがあった 岩井 俊介 。 その一方で、まだボールのバラツキも顕著で、プロで即戦力となるとどうなのだろうか? という疑問も残った。


(投球内容)

 スリークォーターから、150キロ台を連発する球速で注目を集めました。特に、
回転数は2700回転を超え、これはプロの平均である2300回転を遥かに超える数字だと話題になっていました。

ストレート 常時150キロ前後 ☆☆☆☆ 4.0

 マイガンでも93マイル(150キロ)を連発し、平塚のガンでは153キロを叩き出していました。真っ直ぐの球速という意味では、大学トップクラスの選手たちが集結する中でも際立っていました。その一方で、かなりの荒れ球。リーグ戦で見たときは、球速は出るけれど、
球威の物足りなさもありました。先発をしたときは球威の物足りなさを感じるのですが、2イニング限定の登板となった平塚合宿では、そういった違和感は薄れます。

変化球 スライダー・シンカーなど ☆☆☆★ 3.5

 右打者外角にブレーキの良いスライダーを、さらにその球を左打者の内角に食い込ませてきます。また左右の打者に対し、積極的にフォークを織り交ぜてきます。あまりこの球では空振りが誘えないのですが、チェンジアップ気味にタイミングが狂わせ、引っ掛けてさせることは少なくはありません。投球全体がまだ一辺倒な印象で、もう少し球種を増やすなりして
投球に深みを、ボール一つ一つがバラバラなのでコンビネーションに調和みたいなものが欲しいところです。

その他

 クィックは、1.15秒前後と平均的で、フィールディングの動きも並ぐらい。特に微妙なコースの出し入れをしたり、「間」を使って相手を焦らすような、そういった巧みな投球術は見られません。

(投球のまとめ)

 現状は、ボールの勢いや威力で勝負するタイプで、先発だと球威の点で物足りなさが残ります。リリーフだとそういった部分が薄れるので、そちらの方が合っているように思います。ただし、球速は破格ではあるものの、
一年目からプロの打者をねじ伏せられるほどかには疑問も残ります。





(成績から考える)

 どのへんが物足りないのか? 残した成績から考えてみましょう。今シーズンが、
4勝1敗 51回2/3 30安 18四死 58三 防 1.57(3位) と、不調の 松本 凌人 に代わってエースとしての活躍を魅せました。


1,被安打は投球回数の70%以内 ◎

 被安打率は、58.1% と、地方リーグの成績だとしても、充分に基準を満たしています。そういった、一つ一つの球の威力には見るべきものがあります。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 △

 四死球率は、34.8% と、基準を僅かに満たすことができませんでした。そこまで制球が粗いわけではないのですが、細かい制球力がある投手ではありません。

3,奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ◎

 奪三振は投球回数を上回っており、この点では充分合格点です。特に今シーズンは、球速に1段と磨きがかかりました。

防御率は1点台 ◯

 防御率 1.57 と、基準は満たしています。規定投球に到達シーズンは3回目でしたが、今シーズンがキャリアハイと防御率となりました。まだ0点台の絶対領域には達しておらず、そういった意味ではまだ絶対的ではありません。

(成績からわかること)

 被安打の少なさと奪三振の多さからも、ボールの威力には目を見張るものあがあります。そのへんは、今シーズンの投球を見ていても強く感じられました。
決まって欲しい時に決められない制球力が、プロでの即戦力としてはどうなのか? と思わせる要因になっているのかもしれません。


(最後に)

 破格の球速やボールの回転数をみて、上位に位置づけてくる球団が出てくるかもしれません。しかし現時点では、そこまで圧倒的な投球ができているわけではありません。そういった意味では、あまり入れ込まずに 中位(3位~5位ゾーン)ぐらいで、ファームで1年ぐらいはかけて、一軍で通用する力を養ってからでも遅くないように感じました。そういった選手でも構わないといった余裕のある球団が、指名すべき選手ではないかと考えます。プロでの今後の成長次第では、異彩を放つボールを連発するリリーバーになれるかもしれません。


蔵の評価:
☆☆(中位指名級)


(2023年 平塚合宿)