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 片山 皓心(27歳・Honda)投手 175/84 左/左 (日立一-桐蔭横浜大出身)





 「適齢期だったら上位候補」





 ドラフト適齢期に今の状態であったら、上位候補だったかもしれない 片山 皓心 。2度の手術を乗り越え、悲願のプロ入りを果たした。


(投球内容)

 正統派のサウスポーといった印象で、2025年度の投球成績は以下の通り。


投球回数
被安打
四死球 奪三振  防御率 
49
44
 19 56 2.57


セイバーメトリクス指標(参考):

K/9(9イニングあたりの奪三振数):10.29
BB/9(9イニングあたりの与四球数):3.49
K/BB(奪三振と与四球の比率):2.95
WHIP(1イニングあたりの被安打+与四球):1.29

ストレート 140km/h前半~140km/h台中盤 
☆☆☆★ 3.5

 球速は140km/h前半が中心で、要所で140km/h台中盤を記録する左腕としては
平均的な速度。ただし、2021年当時の球威の弱さは改善されており、現在は球速以上の力強さを感じさせるボールとなっている。両サイドや低めに投げ分けるコマンドも一定の評価ができる。K/9が10.29と高い三振奪取能力を示し、ストレートの押し込みが効いている証拠だ。打者を圧倒するほどの迫力はないが、投げミスがなければ適度に押し込める力はある。

横変化 スライダー 
☆☆☆ 3.0

 横に滑るスライダーで、カウントを整える役割を担う。特に空振りを誘うようなボールではないが、WHIP1.29(被安打と与四球を抑えた出塁許容量の低さ)にはこのスライダーの安定感が寄与している。

縦変化 チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 強烈に沈むわけではないが、
低めにしっかりと落とせている。圧倒的な決め球ではないが、プロでも十分に使える球種だ。K/BB2.95(三振を四球の約3倍奪う効率の良さ)は、チェンジアップの低めへのコマンドが四球を抑えている点も大きい。

緩急 カーブ 
☆☆★ 2.5

 投球ではほとんど使用しないため、大きなウェイトを占めていない。ただし、曲がり自体は悪くないので、適度に使えばアクセントになるだろう。

その他 
☆☆☆★ 3.5

 クイックは1.2~1.3秒程度とやや遅め。左腕であることもあり、走者に対しては常に目配せをして走者の進塁を防いでいる。元々牽制は鋭く、フィールディングの動きも悪くない。走者を背負っても落ち着いて対峙でき、
コース一杯で出し入れできる投球術も持ち合わせている。BB/9が3.49と与四球がやや多めだが、走者を出しても動じないマウンドさばきが防御率2.57の安定感を支えている。投げる間合いや時間的な駆け引きを加えれば、さらに投球に奥行きが出るだろう。

(投球のまとめ)

 打者を圧倒するような迫力のある投球ではないが、経験豊富で適度なボールの威力、コントロール、マウンドさばきにより試合を作れる能力を持つ。WHIP1.29やK/9 10.29といった指標が示すように、出塁を許さず三振を奪う効率の良さが光る。社会人5年間を経て、
プロでも即戦力として期待できるレベルに到達している。





(投球フォーム)

 セットポジションから足を高く引き上げる勢いがあり、フォーム前半からエネルギーを効率的に生み出している。
リリーフタイプに多く見られる入り方だ。一方で、軸足一本で立った際に膝から上がピンと伸び切っており、バランスを保つために余計な力が入りやすく、制球を乱す要因になり得る。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 足を高く伸ばすものの、二塁方向へのバランス取りが強く、お尻の三塁側への落としが甘くなりやすい。そのため、カーブやフォークなど捻り出しの変化球のキレは鈍りやすい。

 「着地」までの地面の捉えは平均的で、体の捻り出し時間も標準的。大きな変化球よりも、球速のある小さな変化球を中心に投球の幅を広げるスタイルになりそうだ。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、遠心力を抑えることができている。軸のブレが少なく、両サイドへのコントロールに優れる。一方で、足の甲での地面の捉えはつま先寄り。それでもボールが浮き上がることはなく、低めに集まる。「球持ち」もまずまずで、指先の感覚は悪くない。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さがあるが、カーブやフォークを多用するわけではないため、肘への負担は大きくない。腕の送り出しも肩への負荷は少なそう。力投派というほどではないので、疲労も溜めにくいだろう。

<実践的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの地面の捉えは平均的だが、ボールの出どころは適度に隠せており合わされやすいフォームではない。一方で、腕の振りは鋭く、投げ終わりに体に絡むため、
打者は吊られやすく空振りを誘いやすい。ボールに体重が乗っており、手元まで強さを維持できている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作(「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」)では、「着地」が平凡だが大きな欠点は見られない。2度の手術を経験しているが、現在は体への負担が少ないフォームだ。足の甲での地面の捉えが浅くてもボールが上吊らないため問題はない。将来的に武器となる変化球の習得は難しいかもしれないが、真っ直ぐを軸に変化球を交えた投球スタイルは確立されている。そのため、
大きな欠点のないフォームと言える。


(最後に)

 社会人入社5年目で掴んだプロへの切符。即戦力としての期待が大きいが、現在の投球内容ならDeNAの先発陣に加わっても不思議ではない。防御率2.57に加え、WHIP1.29やK/9 10.29が示す安定感と三振奪取能力は、競争を勝ち抜けば1年目から5勝前後を期待できる根拠となる。東克樹に続く先発左腕が見当たらないDeNA投手陣にとって、良いチームに指名されたと言える。年齢による評価の割引はあるが、ドラフト適齢期であれば上位候補として位置づけられてもおかしくない内容だった。


蔵の評価:
☆☆(中位指名級)


(2025年 日本選手権予選)


 







片山 皓心(23歳・Honda)投手 175/84 左/左 (日立一-桐蔭横浜大出身) 





 「もう少し球威が欲しい」





切れ味勝負のサウスポーとはいえ、片山 皓心 がプロを目指すのであれば、ボールの回転数云々以前に、もう少し球威などのボールの強さがないと厳しいのではないかと思えてならない。都市対抗本戦の開幕戦で、ルーキーながら開幕投手を任された。しかし、その期待に応えられず3回で降板してしいる。

ストレート 常時135~140キロ台前半 ☆☆☆ 3.0

球速は、常時135~都市対抗のときはMAX141キロ程度と物足りなかった。両サイドの微妙なところに出し入れできるコントロールや、ボール自体には適度なキレは感じさせる。しかし、打者を押し込むような球威や勢いがないので、どうしても打力の高い相手だと長打に喰らわないように注意しながらになり汲々になってしまう。プロの打者相手ならば、それはなおさならのこと。プロを目指すのであれば、制球やキレも大事だが、それ以上にボールの力を磨いてゆかないと厳しいと考える。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆ 3.0

右打者だけでなく、左打者にも結構チェンジアップを交えてくる。むしろサウスポーではあるが、それほどスライダーには特徴がなく、チェンジアップの方に自信を持っているのではないのだろうか? そして、時々緩いカーブを交えてくる。そういった相手に的を絞らせない工夫は見られるものの、絶対的な変化球は持ち合わせいない。

その他

クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的。牽制は適度に鋭く、フィールディングの動きも悪くない。間を使った投球という感じはしなかったが、微妙なところを出し入れできる制球力と投球術は持ち合わせている。

(投球のまとめ)

「制球の良い左腕は買い」という、私の格言的にはアリな投手なのだろう。しかし、その制球を活かせるのも、ある程度のボールの勢いや力があるからこそで、このままでは長打を警戒して微妙なところに集めようとして逆に四死球が多くなってしまう恐れがある。変化球も悪くないはないが、絶対的な武器があるわけではない。フォームや球筋に嫌らしさがあるタイプではないので、ボール球威・球速のアップは今後の最大のチェックポイントになるのではないのだろうか。

(投球フォーム)

投球フォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いはあり、その高さも悪くない。むしろ勢いのある入り方は、リリーフタイプではないかといった入り方である。軸足一本で立った時に、膝にあまり余裕がないのは気になる。その上少し前に傾きがちで、けしてバランスの良い立ち方と言えないだろう。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

引き上げた足を高い位置でピンと伸ばされている割には、お尻の三塁側(左の投手の場合は)への落としには甘さを残す。カーブやフォークが投げられないほどではないと思うが、変化が鈍くなる恐れがある。

「着地」までの地面の捉えも並ぐらいで、体を捻り出す時間も平均的。そのため、曲がりの大きな変化球の習得は厳しいかもしれない。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

グラブは最後まで内に抱えられているので、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げ分けはつけやすいのではないかと。しかし、足の甲での地面への捉えは浅く、浮き上がろうする力は充分抑え込めていない。したがって力を入れて投げると、ボールは高めに集まりやすいのではないのだろうか。

「球持ち」が悪いとは思わないのだが、それほどボールを押し込めていない。ゆえに、ボールは両サイドにはコントロールできても低めへの制球力は高くない。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

お尻の落としは甘く、カーブは結構投げては来るがそこまで気にしなくても良いのでは? 腕の送り出しにも無理は感じられず、肩への負担も少なそう。それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。比較的、故障のリスクは低いとみている。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。特に合わされやすいというほではないにしろ、打者が苦になるフォームでもないのだろう。

腕は適度に振れていて打者は吊られやすいかもしれないが、前の足が突っ張って体重がグッと前には乗って来ない。故に、打者の手元までの勢いや球威が物足りないのだと考えられる。

(フォームのまとめ)

フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「体重移動」が物足りなく、それ以外の部分も平均的。故障のリスクはそれほど高くは見えないが、高低の制球の課題や武器になる変化球を習得できるのかといった課題を抱えている。投球は実戦的に見えるが、フォームとしては実戦派になりえていない。

(最後に)

本人のプロ志向がどのぐらい強いのかはわからないが、プロを目指すのであれば球威・球速アップが不可欠だということ。そして、細部のフォームの甘さを、いかに改善して行けるかではないのだろうか。まだまだ、指名が確実だとは言えないレベルだけに、今年のパフォーマンス次第といった気がした。


(2021年 都市対抗)