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吉川 雄大(楽天)投手のルーキー回顧へ







吉川 雄大(25歳・JFE西日本)投手 167/81 右/右 (広陵-東海大出身) 





「魔球を武器に」 





 広陵高校時代は、甲子園で三重高相手に延長戦まで好投し最後押し出しで破れてしまった 吉川 雄大 。その後東海大に進み、卒業後はJFE西日本で投げていた。高校時代から、何か独特の変化をして沈むナックルカーブを武器にしており、この球はプロでも中々ない軌道。それを理由に、この選手を獲得したのではないかと思われる個性派だ。


(投球内容)

 高校時代から、小柄ながら完成度が高く野球センスに優れた好投手でした。チームでは殆どリリーフで起用されていたのですが、JABA広島大会では、シティライト岡山戦で先発しました。

ストレート ☆☆★ 2.5

 広陵時代は、延長戦でも135キロ前後で球速が最後まで変わらないなどタフな投手との印象。またこの社会人広島大会の模様を見る限り、真っすぐは常時140キロ前後ぐらいかなといった感じでした。けして勢いがないわけではないのですが、ドラフトで指名される右投手としては、球速・球威という部分ではやや物足りないものはあります。あまり四死球で自滅するようなタイプには見えないのですが、ややボールが真ん中から高めゾーンに集まり、球威に絶対的なものがないだけに打ち返されてしまう気がします。

変化球 スライダー・カットボール・ナックルカーブなど ☆☆☆★ 3.0

 基本的には、真っ直ぐとスライダーやカットボール系の球でカウントを整え、このナックルカーブを低めに沈めて空振りを誘うピッチングスタイルです。このナックルカーブという絶対的なボールがあるので、投球回数を上回る奪三振が奪えます。むしろ、追い込むまでの投球に課題を残していると言えるのではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒とそれなり。牽制も鋭いですし、フィールディングの動きも軽快です。元々ピッチングセンスに優れた、投手らしい投手といった感じ。気持ちも強そうな選手であり、プロでは中継ぎでの起用が想定されるのではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 適度なまとまりがあり、投球を壊さないでいられます。球威・球速という部分でNPBの打者相手にどうかと思う部分はあるのですが、全てはこのナックルカーブが通用するかに懸かっているのではないのでしょうか。そこを見越しての、指名だと考えられます。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げるのは静かで、それなりの高さまでは引き上げてきます。軸足一本で立ったときに、膝がピンと伸びがちで余裕はないのですが、バランス良くは立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻をしっかり一塁側に落とせるフォームで、身体を捻り出すスペースを確保。カーブやフォークといった球種を投げるのに、窮屈になり難いはず。

 また「着地」までの地面の捉えもまずまずで、身体を捻り出す時間もそれなり。武器になるほどの変化球の習得も期待でき、すでにナックルカーブという特殊なボールを武器にできています。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブを最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げ分けもつけやすいのでは? 足の甲での地面の捉えもしっかりできており、浮き上がろうとする力を抑えられています。ただし「球持ち」が平凡で、もう少し押し込めるようになると、もっと低めにも集まるのかなといった感じはしています。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻は落とせているので、カーブやフォークを投げても肘への負担は少ないのでは? しかし、ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩は下がっているので、肩への負担はそれなりにあるのではないかと。フォームも少し力投派の部分があるので、疲労はそれなりに溜めやすいのではないかと。肩を中心に、身体のケアには気をつけて欲しいものです。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度にあり、ボールの出どころも隠せています。そういった意味では、それほど合わされやすいフォームでは無さそうです。腕もしっかり振れていて、ナックルカーブを振らせられる下地もあります。ボールにもある程度体重を乗せてから、リリースはできているように見えます。小さい身体でもフィニッシュの躍動感があり、非常にエネルギー効率に優れたフォームです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」にもう少し粘っこさが出ればいいかなと感じる部分はありますが、完成度の高いフォームです。制球を司る動作や、投球の幅を広げて行けることも望めます。あとは、故障に充分注意して取り組んで欲しいものです。


(最後に)

 こういった一芸タイプは、実際混ぜてみてやれるかやれないかだと思います。170センチにも満たない小柄の右腕ながら、プロがスカウトしたのにはそういった特徴があるからでしょう。面白いとは思いますが、 を付けられるほど確信は持てません。通常ならば育成枠あたりで獲りたいタイプなのでしょうが、社会人在籍の選手なので指名の最後で獲得してみたというふうに理解しております。中々興味深い選手なので、プロでどんな結果を残すのか?興味深く見守りたいと思っております。


(2021年 JABA広島大会など)