八木　彬（２４歳・三菱重工West）投手　１８０／９４　右／右　（八戸学院光星-東北福祉大出身）

「ロマンがある」

　八戸学院光星時代は甲子園でも投げて注目されいてたが、東北福祉大時代は上級生になっての登板がなく故障に悩まされた。復活を果たしたのは、三菱重工WESTに進んでから。高校時代よりもフォームに奥行きが出て、ロマン溢れる素材になっていた。

（投球フォーム）

非常に身体を大きく使った、奥行きのありそうなフォームから投げ込んで来る。

ストレート　常時１４０キロ台後半～最速１５１キロ　☆☆☆★　3.5

　常時１５０キロ前後投げ込めるスピード能力があり、特に空振りを誘う球質ではなかったが、ボール自体には強さが感じられた。都市対抗の大舞台ということで緊張していたのかもしれないが、ストライクゾーンに収まりきらないアバウトさがあったのと、全体的にボールが高かったのは気になる材料。それでも今シーズンの公式戦では、投球回数の１/３以下に抑えているので、元来はここまでバラツキはないのかもしれない。

変化球　フォークやカットなど　☆☆★　2.5

　リリーフでの登板ということもあり、殆どフォークなど沈む球とのコンビネーションだった。しかし、カットボール気味の球も投げており、高校時代はスライダーなども投げていたと記憶している。ただし、それほど変化球の切れ・精度に際立つものはなく、もう少し縦の変化を磨かないと投球が苦しくなりそうだ。

（投球のまとめ）

　高校時代は、中背の好投手タイプだった記憶がある。しかし、社会人では奥行きのある素材型になっていた。出力は間違いなく上がっているが、そのぶん細かいコントロールや絶対的な変化球がないところは気になった。大卒社会人ではあるが、一軍で活躍するためにはファームに漬け込んでからといったことになるかもしれない。

（投球フォーム）

　今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらいで静かな入り。軸足の膝には力みは感じられなかったものの、全体的にやや直立気味に立っている。

＜広がる可能性＞　☆☆☆☆　4.0

　引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばせており、お尻の一塁側への落としも悪くない。したがって身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークなども無理なく投げられている。

　「着地」までの地面の捉えも、しっかり前に大きくステップすることで身体を捻り出す時間確保できている。武器になるだけの、大きな曲がり変化球を投げられる下地は整っている。

＜ボールの支配＞　☆☆☆　3.0

　グラブ最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、元来は両サイドにはボールが散りやすいのでは？　しかし、足の甲での地面の捉えが浮いてしまっているので、力を入れて投げようとするとボールが上吊ってしまう。それをなんとか「球持ち」の良さで制御しようとするが、全体的にボールは高めに集まりがち。

＜故障のリスク＞　☆☆☆☆　4.0

　お尻は落とせているので、カーブやフォークを投げても肘への負担は少なそう。それでもフォークを多く投げれば肘への負担は大きいので、その点は充分注意して頂きたい。また腕の送り出しを観ていても、肩に負担がかかっている感じはしない。またリリーフタイプではあるが、そこまで力投派というほどでもないので、疲労の溜まりもそれほどでもないのでは？　ただし、過去に肩を痛めたりしたこともあるようなので、フォームに負担は少なくてもケアに務めて欲しい。

＜実戦的な術＞　☆☆☆☆　4.0

　「着地」までの粘りはそれなりにあるのですが、ボールの出どころは平均的。特別合わされやすいわけではないものの、コースを突いたはずの球が打ち返されたり、縦の変化球を振ってもらえない可能性も高いかもしれない。

　腕は強く振れており勢いはあるが、ボールが見やすいと打者は吊られ難い。ボールにもしっかり体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで力強いボールは投げられている。

（フォームのまとめ）

　フォームの４大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」が平均的なこと以外は問題のないフォーム。故障のリスクは低くは見えるが、故障で悩まされてきたので、そのへんは注意したい。制球を司る動作は、足の甲が浮いてしまうなど高低のコントロールに課題がある。将来的には、武器になる変化球を習得できても不思議ではない。

（最後に）

　まだ本当のコントロールがなかったり、絶対的な武器がないなど、年齢の割には未完成な印象を受けます。それだけに、ロッテの育成力に期待して数年後にといったタイプではないのでしょうか。しかし、素材としての奥行き・スケールを感じさせる投げ方になっており、大化けしても不思議ではないとみています。こういった選手を育てるのが上手い球団だけに、楽しみにそのときを待ちたいところ。可能性という意味を評価して、☆　を付けたいと思いました。

蔵の評価：☆　（下位指名級）

（２０２１年　都市対抗）