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阿部 和広(日ハム)外野手のルーキー回顧へ







阿部 和広(平塚学園3年)中堅 170/65 右/両 
 




「完全にノーマーク」 





 私の地元である神奈川の球児ながら、全くノーマークの選手が指名された。その男の名前は、阿部 和広 。その気持ちの良いぐらいの全力プレーに、一部の関係者の間では話題になっていたようだが、個人的には指名されるまで全く良く知らない選手だった。夏の神奈川大会の模様を見直し、慌ててどんな選手なのか確認してみた。


(守備・走塁面)

 小柄な体型の選手ながら、大きなストライドで走るのが印象的。そのため打ってから加速するまでは時間がかかるのか? 一塁までの到達タイムは4.1秒前後と、ドラフト候補としては平均的だった。ただ、最後の試合となった夏の日大藤沢戦では、第一打席に三塁打を放ち、その時の到達タイムは 11秒2 と尋常ではないタイムを出していた。そのため、この選手の走力は、短い塁間ではなくベースラニングでより活きるタイプかと。また最後で勢いを緩めない、力を出し惜しまないプレースタイルには好感が持てる。

 守備に関してはあまりよくわからなかったが、特に動きは悪くなくバックアップなどもしっかりしていた。送球に関しては、けして強肩には見えなかったがどうだろうか? ここまで観ている限り、この選手の魅力は加速する走力と手抜きをしないプレースタイルではないかと思ってしまう。





(打撃内容)

 夏の神奈川大会では、背番号18で一番打者として出場していた。小柄ながら当てにゆくということはなく、しっかり最後まで振り切る潔さがある。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰を深く沈め全体のバランスとしてはそれなりで、両眼でしっかり前を見据えられている。打席では、高い集中力が感じられるところは良いところ。

<仕掛け> 遅すぎ

 投手がリリースを直前に動き出す、「遅すぎる仕掛け」を採用。ここまで遅いタイミングでの始動となると、プロレベルのキレや球速のある球に対し、日本人の筋力やヘッドスピードで打ち返すことは困難になる。特に、プロとしては小柄な部類になるであろう彼にとっては、余計にその傾向が強くなるのでは?

<足の運び> ☆☆ 2.0

 足のカカトをその場で上げ降ろすだけという感じで、その時の形はクロスになってインステップのような形で踏み込んでいる。始動~着地までの「間」が取れないので、打てるポイントは  に。それだけ狙った球を、逃さない「鋭さ」が求められる。

 クロスに踏み込んでいることからも、外角への意識が高いのではないのだろうか? ただその割には、ステップの幅が狭いのか? 強い上半身の振りに対し、足元が動いてしまって「開き」を我慢できていないのは気になる。逃げてゆく球や、低めの球に対し我慢できるのかには疑問が残る。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めている。しかしながら、「トップ」を作るのが遅れがちなので、もう少し早く作ることを意識した方が良いのではないのだろうか?

 バットの振り出し自体は、インパクトまで無駄なく振り下ろせている。けしてインサイドアウトで最短距離にというよりも、外の球をしなりを活かして強く振り抜けている点もプロ仕様。ただし、外の球を拾おうとヘッドを立てる意識が強すぎて、こねてしまうことが多く引っ掛けてしまっている。そのため高めの球をバチンと叩けないと、ゴロで討ち取られるケースが多いのでは?

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げが小さいので、目線の上下動は少ない。ただし、前の足がしっかり止まっていないので、「開き」が我慢しているとは言い難い。また軸足の形は崩れていないものの、まだまだ内モモの筋肉が華奢なので、これからプロで内転筋など鍛えて強い打球を打てる体作りをすることになりそうだ。

(打撃のまとめ)

 始動が遅すぎるのと、強い上半身の振りに対し下半身が負けているアンバランスを修正する必要がありそうだ。打撃に関しては、思いっきりの良さはあるものの、NPBレベルとはかなり開きがある。それでもスイング軌道には悪いクセはないので、まだまだ修正も期待できるだろう。


(最後に)

 走力と手抜きをしないプレースタイルの良さを評価しての指名ではないかと思うが、時間はかなりかかるのではないのだろうか?非常に好感の持てる選手で、下から這い上がってくる強い精神力が感じられる。こんな選手が、プロの世界で何処までやれるのか見守って行きたいと思わせてくれる選手だった。


(2021年夏 神奈川大会)