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金子 京介(神奈川大4年)一塁 185/105 右/右 (盛岡大付出身) 
 




 「進学は正しかったのか?」




 盛岡大附属時代から右の強打者として注目されていた 金子 京介 。高校時代に彼を寸評した際には「木製バットで結果を出してからでもプロ入りは遅くない」と書いた。あれから4年。彼はどこまで成長したのだろうか。


走塁面:
☆☆★ 2.5

 右打席から一塁までの到達タイムは4.3秒強。左打者に換算すると4.05秒前後となり、ドラフト候補としてはほぼ基準レベルの走力と言える。特筆すべきは、足が特別速いわけではないのに、
最後まで勢いを落とさず走り切るところ。この全力疾走のおかげで標準的なタイムを記録できている。ただ、大学4年間で盗塁はゼロ。走力でアピールするタイプではない。

守備面:
☆☆★ 2.5

 4年春のリーグ戦では一塁手として3失策とやや多かったが、最終シーズンは無失策。試合前のノックを見てもグラブ捌きや動きに目立った悪さは感じない。可もなく不可もないといった印象。一塁以外へのコンバート可能性は低く、仮に外野を守らせるならレフトが現実的か。





打撃内容

 春4本、秋2本本塁打と
典型的なプルヒッターで、引っ張って巻き込む打撃が持ち味。

(2025年秋季リーグ戦最終学年成績)


打数  安打  二塁打  三塁打  本塁打 打点 四死球 三振  打率
76 23 5 0 6 22 12 20 .303


構え:☆☆☆ 3.0

 前足をわずかに引き、かかとを浮かせてグリップを高めに構える。腰はほとんど沈まず独特のバランスだが、
両目でしっかりボールを見据えられる姿勢で、錯覚は起きにくい。

仕掛け:
平均

 投手の重心が落ちきるタイミングで始動する「平均的な仕掛け」。確実性と長打力を両立させる中距離ヒッターや勝負強いポイントゲッターに多く見られるタイミング。

足の運び:
☆☆☆ 3.0

 ややアウトステップ気味に真っ直ぐ踏み込む。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球・変化球への対応は可能。内外角どちらにも対応しようとしているが、内角への意識の方が少し強そう。踏み込んだ
足がインパクトの瞬間に地面から早く離れてしまうため、流し打ちや逆方向への長打は難しい。

リストワーク:
☆☆☆ 3.0

 トップは早く作れており、速球に遅れることはない。バットの出し方はインサイドアウトではなく、ヘッドも下がらず力強く振り抜けている。ただ、内角のさばきが特別うまいわけではないが、長打のほとんどは「引っ張って巻き込めた時」のもの。逃げる球や低めへの対応力には課題がありそうで、打てるゾーンは真ん中~やや内寄りに限られる印象。

軸:
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げによる目線の上下動は平均的。体は早く開く傾向にあるが、軸足を中心にきれいに回転できている。


(打撃のまとめ)

 パワフルなスイングで打球速度は強いが、打球が自然に上がるタイプではない。IsoP .263 と高いものの、引っ張り損ねた球を長打にするのは難しく、外角低めに集められると対応が苦しそう。プロでは「ゾーン内甘い球を逃さない」精度と、逃げる変化球への対応力が問われる。OPS .987 という数字は魅力的だが、プロの徹底した攻めの中でどこまで維持できるかが最大の課題。


(最後に)

 
一発長打と勝負強さを売りにする打撃特化型。大学最終年の OPS 約1.000、IsoP .263 は魅力的な攻撃指標だが、一塁(またはレフト)専という守備の幅の狭さもあり、プロで生き残るには「打撃で圧倒する」しかない。それでも野球に取り組む姿勢とガッツは伝わってくる。個人的には支配下級()の評価は付けられないが、大学進学を選んだことでこれだけの数字を残せただけに正解だったと判断したい。


(2025年秋季リーグ戦)









金子 京介(盛岡大付3年)一塁 187/93 右/右 
 




 「進学は妥当か?」





 この夏の岩手大会では、県大会記録となる5本のアーチを架けて魅せた。また注目された甲子園の舞台でも、3安打を放ち存在感を示した 金子 京介 。しかし、彼の進路は大学進学だという。果たして、その選択は妥当なのか? 検証してみた。


走塁面:☆☆★ 2.5

 一塁までの到達タイムは、右打席から4.4秒前後。これを左打者換算すると、4.15秒ぐらいに相当するので、本気で走ればそこまで足が遅いわけではない。それでも岩手大会の5試合で盗塁はなく、基本的に走るということへの意識が高そうに見えない。現状は、中の下~下の上 ぐらいかの走力と観て良いのではないのだろうか。

守備面:☆☆ 2.0

 一塁手としても、格段動きの良い選手との印象は受けなかった。それでも、鍛えたられた今年の盛岡大付属の守備のなか、5試合で無失策。一塁の守備でならば、それほど足を引っ張るほどではないのかもしれない。しかし、今のところ他のポジションを担っていた姿は見たことがない。現状、別のポジションへの融通は見えて来ない。





(打撃内容)

 それでも上のレベルでも長打を売りにできるようであれば、一塁を担っても問題はないだろう。基本的に、引っ張る傾向が強い打者だと言えるのではないのだろうか。この夏の全ての本塁打も、レフトスタンドへのものだった。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰はあまり据わらず全体のバランスとしては平凡だが、両目で前を見据える姿勢はそれなりといった感じだろうか。ただし、腰が据わってどっしりとした感じはして来ない。

<仕掛け> 早め

 追い込まれるまでは、投手の重心が下りはじめると動き出す「早めの仕掛け」を採用。この始動のタイミングは、対応力を重視したアベレージヒッターに多く見られる仕掛けです。また追い込まれると、ノーステップにしてリリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」へとシフトする。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 足を軽く上げて、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応。ベース側に踏み出すように、外角への意識が強いことがわかります。

 踏み込んだ前の足は、なんとか地面にめり込ませて開きを抑えています。元来腰が早く開いてしまう感じなのを、クロスに踏み込むことと足元を止めることで、開きをある程度のところまでで抑えています。逃げて行く球や低めの球に対しては厳しそうでも、こういった動作によりある程度までは外角へ低めにも対応できるようになっていると思われます。ただし、基本的に引っ張りにしか興味がないらしく、甘めの外角球~甘めの内角球を巻き込むという、さばけるコースが狭いのは気になります。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球には立ち遅れないのではと。バットの振り出しも、けしてインサイドアウトで内から出てくるわけではないのですが、思ったよりは遠回りに出ているわけではありません。そのため内角寄りの球も、無理せずにバットが出ていました。

特にボールを捉えてからは、フォロースルーでボールを遠くに運びます。このへんが、県大会で5本塁打という記録を作る原動力になったのではないのでしょうか。

<軸> ☆☆★ 2.5

 足の上げ下げが静かそうにも見える割には、目線は結構動いていました。そのため、打ち損じが多くなりがちに。また身体の開きも、腰が早く開く傾向が強くこの点も微妙。軸足も形が崩れてしまいがちなので、体軸の安定感はイマイチのように見えます。特に引っ張りを重視する打者だけに、キレイに軸を起点にまわりたいのですが。

(打撃のまとめ)

 もう少し癖のあるドアスイングなのかなと思ったのですが、思ったよりもインパクトまでの動作に大きなロスは感じられませんでした。それでも頭の動きや腰の開きなどは、気になる部分ではあります。フォロースルーなどを上手く使えるあたりは非凡ですが、木製バットを握ったときに、思うように長打連発とゆくのかどうかには疑問が残りました。


(最後に)

 そういった意味では、木製バットでの順応してからプロ入りを考えるのは悪い選択ではないと思います。確かに注目度も高い今はプロ入りのチャンスではあると思いますが、確かな実力を身につけてからでも私は遅くないと考えます。ぜひ進んだ先で、文句なしの和製大砲ぶりを発揮して、即戦力候補としてプロの世界に飛び込んできて欲しいところです。そのため現時点では、「旬」ではないと判断して、 を付けるのは控えることに致しました。


(2021年夏 甲子園)