21ky-13





高木 翔斗(広島)捕手のルーキー回顧へ







高木 翔斗(県岐阜商3年)捕手 188/90 右/右  





「特徴が見えづらくなってきた」 





 下級生の頃は、強打の捕手として世代を代表する存在だった 高木 翔斗 。その一方で、年々ディフェンス力が向上する中、自慢の打力の魅力が薄れていってしまった気がする。そう、今の高木は、特徴が見えづらい選手になってしまった気がするのだ。


(ディフェンス面)

 大きな体のために、実に投手としては安心して投げられる捕手ではないかと思います。ミットもしっかり示しますし、ワンバウンド処理にも下からミットがスッと出せます。また一つ一つのキャッチングもしっかりしていますし、捕球全般は合格ラインではないのでしょうか。

 これだけの体格だけに、フットワークの俊敏さには欠けます。また送球の際にも、かなり上体や地肩に頼る部分もあり、速いときでも1.9秒前後~2.0秒台と平凡で、捕ってからのスピード・送球の精度などは、ドラフト指名される捕手としては際立つものはありません。そういった意味では、現時点での送球能力は、プロに混ぜてしまうと 中の下 ぐらいなのではないかと。

 それでも中学時代から名の知られた選手で、チームでも4番・捕手という攻守の要的な存在。お山の大将にもなりそうなものですが、普段は座ったままながら投手への返球は丁寧ですし、走者を背負うとはしっかり立って返すなど、プレーが雑な選手ではありません。ディフェンス全般で言えば、突出したものはないものの、プロの捕手としても許容範囲のレベルにはなってきているので、簡単にはコンバートはされるようなことはないと考えています。


(打撃内容)

 選抜大会では、3打数1安打。この夏の甲子園では、4打数0安打で自慢の打撃でアピールできなかったのは痛かったです。ただし、この夏の岐阜大会では、6試合で 3本 8点 打率.391厘 と、4番打者としての役割と存在感は示せていました。アウトの時も、外野フライが多いなど、角度を付けて打球を飛ばすのが上手い印象です。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前の足のカカトを浮かし、グリップを高めに添えて構えます。背筋を伸ばしつつ、全体のバランスとしてはまずまずで、両眼で前を見据える姿勢は並ぐらいでしょうか。選抜の時はクロスに立っていたのと、結果を残そうと打席でも力んでいたのが読み取れました。しかしこの夏は、かなりオーソドックススタイルに変わって、力みもそこまでは感じませんでした。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が沈む時にベース側につま先して、チョンとステップして来るのですが、再度動き出すタイミングは「遅めの仕掛け」ぐらいであり、極端に始動が遅れていないのは良いところ。基本的には、ボールを引きつけて叩く長距離打者の傾向が強いタイプです。この辺は、春と変わっていませんでした。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 小さくステップして、ベース側にインステップして踏み込んできます。始動~着地までの「間」は短いので、狙い球を絞ってその球を逃さない「鋭さ」が求められます。踏み込んで来るように、外角への意識が強い打者なのではないかと考えられます。

 インパクトの際にも踏み込んだ足元が止まって我慢できているので、逃げてゆく球や低めの球にも喰らいつくことができます。打球も引っ張りだけでなく、右方向に打ち返すことができていました。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、それほど力みはは感じられません。春はバットが引くのが遅れ立ち遅れ気味だったので、そのへんは注意していたのかもしれません。

 バットの振り出しは、少し投手側にバットのヘッドが倒れ過ぎるので、バットが出てくるのに時間がかかる傾向は今も残ります。そのためボールを捉えるまでに遠回りに出てきやすく、ボールの下にバットを潜らせて角度を付けて飛ばすタイプです。それだけ打ち損じは多くなるものの、長打が生まれやすい捉え方だとも言えます。しっかり捉えた時の打球は、フォロースルーも相まって遠くに運ぶことができます。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げ小さい割には、頭は結構動くかなといった感じ。身体の開きは我慢できていますし、軸足の形も悪くはありません。ただし、意外に軸足の内モモの筋肉に強さが感じられず緩さがあるのと、全体的に上背はありますが線は細く見えました。そのへんは、全体的に筋力は不足しているのではないかと感じました。

(打撃のまとめ)

 打撃に関しては構えこそいじっていましたが、他は大きくはいじっていないのでは? 頭の位置の動きが激しいのは、調子が悪く自分からボールに向かっていっていたのかもしれません。この夏みた感じでは、確実性は高い打ち方ではないものの、結構ホームランが出やすいスイングだと実感致しました。


(最後に)

 打撃に関しては、一発は出やすいけれど確実性は高くはないのかなと。打席で力む傾向も強いので、少し気楽な打順で、時々放つ意外性の長打で存在感を示して欲しい部分はあります。ディフェンス面では、地肩は弱くないものの、送球の精度や切り返しなどに課題があり、まだプロに混ぜると見劣るスローイングが気になります。ディフェンス全般には、プロに指名されるレベルの基準は満たすものの、何かが突出しているというものはないように感じました。

 年々捕手らしくなってディフェンスが磨かれてきた一方、打撃は以前ほどアピールできなくなり、特徴が見えづらくなってしまった気がします。その点プロに入れば、少し気楽な打順で打たせてもらえるでしょうから、時々一発を放ち存在感を示しつつ、ディフェンスでも信頼を得られるようになって欲しいところです。

 そういった意味では、プロに混ぜたときに何処でアピールしてゆくのか? というのがわかりずらくなってしまったのと、注目された夏の甲子園でアピールできなかったのが評価を下げてしまった原因かもしれません。それでも彼の売りは、長打力を秘めた打撃だと思うので、そこを全面に出して激しい競争を乗り越えていって欲しいものです。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年夏 岐阜大会) 










高木 翔斗(県岐阜商3年)捕手 186/90 右/右 





 「だいぶ捕手らしくなってきた」





 下級生までの 高木 翔斗 は、地肩は強く打撃も良かったものの、あまり捕手としてのセンスを感じる選手ではなかった気がする。しかし、一冬越えて、捕手として勝負できるだけの総合力を身につけつつあるのではないのだろうか。


(ディフェンス面)

 ミットをしっかり投手に示し、ランナーがいない時は座ったまま返球しテンポの良さを意識しています。それでもランナーが出ればしっかり立って「間」をとりますし、けして雑な選手ではありません。キャッチングも下手ではないですし、ワンバウンドするような球にも下から素早くミットが出るなど、捕手としても鍛えられています。

 リードも内外角・高低を意識し、それなりに考えてプレーしている印象。しいて気になる点をあげるとすれば、フットワークが重苦しくスローイングも地肩に頼っている点でしょうか。それでも地肩自体は強いので、体勢が崩れても結構正確な送球ができていましたし、元来1.9秒前後で投げられるスローイング能力もプロの基準レベルにあると言えます。こと打撃型との評価されがちですが、現時点ではディフェンスでも充分プロを意識できる能力があり、大物感も感じさせる捕手であるように思えます。


(打撃内容)

 長打力を含めて、打力が目立つ捕手であるのは確かです。ただし、個人的には、あまりタイミングを取るのがうまくなく、対応力ではプロでは苦労するかもと思う部分はあります。それでも、根本的な打力は持っている選手です。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 少しクロス気味に構え、グリップは高めに添えます。腰の据わりはそれなりで、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしてはクローズドスタンスなので故に少し癖があるといえるでしょう。全体的に感じるのは、選抜では結果を残そうと力が入りすぎているのかなといった気がしました。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が沈む時にベース側につま先して、チョンとステップして来るのですが、再度動き出すタイミングは「遅めの仕掛け」ぐらいであり、極端に始動が遅れておないのは良いところ。基本的には、ボールを引きつけて叩く長距離打者の傾向が強いタイプです。

<足の運び> ☆☆☆ 3.0

 小さくステップして、ベース側に踏み込むインステップ。始動~着地までの「間」は短く、あらかじめ狙い球を定めて、その球を逃さない「鋭さ」が求められるスタイル。一度重心が下る時に、自分のカカトも下ろしてタイミングを図ります。

 ベース側に踏み出すように、外角を強く意識したスタイル。踏み込んだ前の足はしっかり止まっており、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができています。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 足を小さくステップし直しても始動が遅れ過ぎないようにできているのに、バットを引くのが遅れがちで「トップ」を作るのが立ち遅れているのは気になります。選抜がたまたま調子が悪くそうなりがちだったのか? それとも元々そういう打者なのかはわかりませんが、これが身についてしまっているとなると、一定レベル以上の投手には苦労する可能性があります。

 またボールを打ちにゆく時に、バットの先端が投手側に倒れるので、少しインパクトまで遠回りになりがち。極端ではないのですが、そのへんがロスにはなって確実性を損なっています。バットの先端であるヘッドはそれほど下がっていないので、広い面ではボールを捉えられそう。まだスイングの弧の大きさやフォロースルーなどはとれていないので、この辺はもっと磨いてボールを力ではなく技術で運びたいところはあります。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は抑えられています。身体の開きも我慢できていますし、軸足も大きくは崩れません。そういった意味では、軸は安定していると言えます。

(打撃のまとめ)

 足のアクションが小さい分、打てる球は限られているように感じます。それでいて、甘い球を打ち損じないのか?と言われると、そこまでの精度の高さはまだありません。むしろその点では、対戦相手の捕手であった 松川 虎生(市立和歌山)の方が上だったと言えるでしょう。

 ただし、確実性はまだ低いものの、ボールを飛ばせるという素材としての魅力は感じます。まだ上半身の使い方に課題があり、脆い部分が残ります。そのへんが良くなってくると、「長打の打てる捕手」との期待も膨らみます。


(最後に)

 下級生の頃は、攻守に粗くあまり良い印象は持っていませんでした。しかし、一冬越えてだいぶ捕手らしくなってきたことで、攻守に可能性を感じさせる素材として見ることができます。まだまだ課題も多く、そのぶん伸びしろを秘めています。強肩で長打の打てるスケールは、前出の松川よりも素材としては上をゆくように感じます。プロに入っても時間はかかりそうですが、夏の大会でのアピール次第では中位(3位~5位)ぐらいでの評価になっても不思議はないのではないのでしょうか。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年 選抜大会)