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 滝口 琉偉(日大山形3年)投手 182/82 右/左
 




 「球速は指名級」





 夏の甲子園では、コンスタントに145キロ前後を記録していた 滝口 琉偉 。最速では、150キロまで到達。こと真っ直ぐの球速だけで言えば、充分のドラフト指名級だと言えよう。そんな彼の、現在の位置づけについて考えてみた。


(投球内容)

 夏の甲子園では、3試合に登板。7回2/3イニングで、7安打 9四死 8三 3失 。この数字が、今の彼の投球を如実に物語っているようにも思えます。

ストレート 常時145キロ前後~MAX150キロ ☆☆☆ 3.0

 スピード能力に関しては、充分にドラフト指名されるだけの球速・勢いは感じられます。気になるのは、左打者を中心にボールが外角に抜けたり、シュート回転して質が低下することが多いこと。また収まりが悪く、制球力の悪さが気になります。ときには打者のインハイを突くこともありますが、基本外角中心に集めてきます。また、これだけのボールを持っている割に、7回2/3イニングで7安打と、力で抑えきるほどの圧倒的なものはまだありません。

変化球 スライダーやスプリットなど ☆☆ 2.0

 スライダーでカウントは整えられるのですが、高めに甘く入ることが多いのは気になります。たまに緩いカーブを混ぜたり、縦にスプリットなども織り交ぜます。ただし、縦の変化球も、落ちるのですが振ってもらえないことが少なくありません

その他

 フィールディングの動きはまずまずで、クィックも1.15~1.2秒ぐらいと平均的です。ただし、投げるタイミングを変えるとか、微妙なコーナーの出し入れをするとか、そういった投球術は無さそうです。あくまでも現段階では、ストライクゾーンめがけて投げ込んでいるといった感じの投球でした。

(投球のまとめ)

 確かに真っすぐの勢いや球速は高校からプロに指名されても不思議ではないぐらいですが、変化球の精度やキレ、制球力などをみると、かなりまだ物足りません。それだけに、フォームを分析して今後の可能性について考えてみましょう。


(投球フォーム)

 セットポジションから、軸足に体重を乗せきる前に膝を折ってしまいます。ようするに、クィックで投げるようなフォームで、常に投げていることになります。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は比較的一塁側(右投手の場合は)に落とせており、身体を捻り出すスペースは確保。カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるのにも、負担は少ないと考えられます。

 「着地」までの地面の捉えもそれなりで、身体を捻り出す時間が足りないわけではありません。そういった意味では、多彩な球種でピッチングの幅を広げて行ける選手ですし、変化球の投げ方やコツを身につければ、もう少し変化球レベルが引き上げられるフォームはしているのではないかとみています。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールもそれなりにできるかと。ただし、足の甲での地面への捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが高めに集まりやすい傾向にあります。けして「球持ち」が悪いようには見えないのですが、ボールも押し込めていないのか? 左打者への球が抜けることが少なくありません。そのへんは、今後股関節の柔軟性を養いつつ筋力を強化したり意識できれば、かなり変わってくるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げるのにも無理は感じられません。カーブの頻度は少ないですし、縦の変化も握りの浅いスプリット気味だそうで、肘への負担は気にしなくても良いのでは?

 腕の送り出しは、多少ボールを持っている肩は上がりグラブを持っている肩が下がり気味も、神経質になるほど無理は感じれません。その点でも肩への負担も、それほどでもないように思えます。腕もしっかり振れていますが、物凄く力投派かと言われれば、そこまででも無いように見えました。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で可も不可もなしといった感じですが、ボールの出どころがやや早い。このため甘くない球でも踏み込まれたり、縦の変化球を見極められてしまっていると考えられます。

 また腕はしっかり振れて身体に絡んで来るのですが、上記のようにボールが見やすいことで空振りを誘い難いこと。またボールのへの体重の乗せが悪いとは思わないのですが、身体が真っ直ぐミットに向かって投げられていないので、しっかりダイレクトに最後まで力が伝わらないのではないかと考えられます。このへんも、今後の課題としてあげられます。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」を中心に全ての部分でまだ改善の余地が残されています。故障のリスクは高くないものの、現状は高めに集まりやすい制球力や武器になるほどの変化球がまだない点、さらにストレートの質という意味でも課題を残しています。土台となるフォームを見る限りは、これらの改善は可能であるとはみますが。


(最後に)

 個人的には、大学などワンクッション置いて課題の改善に務めた方が良いのかなというのが率直な感想。ただし、甲子園などでのアピールにより、育成枠あたりならば指名して来る球団があっても不思議ではありません。あとは、本人が現段階でどの程度プロ志向が高いかによるのではないのでしょうか。しかし個人的には、 を付けるまでの評価には至りませんでした。


(2021年夏 甲子園)