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泰 勝利(神村学園3年)投手 173/82 左/右 | |
この夏の鹿児島実業戦で、150キロを記録したサウスポー 泰 勝利 。そのボールの威力は圧巻なのだが、いかんせんコントロールが悪い。しかし、力みが消えた試合途中からは、無四球のイニングも続いた。そういった力の抜き加減の感覚を完全に身につけたら鬼に金棒の選手ではないのだろうか。 (投球内容) この夏の鹿児島大会では、4試合で 20回2/3 14安 21四死 28三 14失 防 5.23 と、投球回数以上の四死球の多さは気になります。 ストレート 常時140キロ台~MAX150キロ ☆☆☆★ 3.5 ボールの球威・勢いだけで言えば、大学・社会人のドラフト候補の左腕と比べても、遜色のない威力があります。しかし、力みまくってボールが暴れて、思い通り操れていません。時々ズバッと良いところに決まることもありますが、とっちらかって何処にゆくかわからないときも少なくありません。しかし球速を抑えて力が上手く抜けた時には、ボールも徐々に集まり出します。力を多少抜いても、140キロ台中盤ぐらいの真っすぐは投げられる馬力がありますから。 変化球 スライダー・カットボールなど ☆☆☆ 3.0 130キロ台のカットボールと、120キロ前後の曲がりながら沈むカーブのようなスライダーがあります。カットボール気味の球は、ストレート同様に結構制御できないのですが、このスライダーはそれなりにストライクゾーンに決まってきます。荒れ球のストレートを魅せられてからのスライダーは、高校生では中々手を出せないで見逃してしまいます。 その他 牽制は平均的な技術がありますし、クィックは0.9秒ぐらいと高速です。むしろクィックも、少々タイムを落としてでもフォームのバランスを崩さない程度に投げた方が良いのではないのでしょうか。細かい駆け引きや微妙なコントロールはなく、いかにズバッと投げ込む爽快感で勝負するタイプです。 (投球のまとめ) 鹿児島実業戦でも、3回以降無四季球のイニングが続いたように、コントロールが安定しはじめる時があります。どうしたらそうなるかを自分自身つかめるようになると、投球内容は全然変わってくるのではないのでしょうか。ただし現状は、ボールは凄くくても中々使うのには怖いなといった印象があります。こういった選手は、下位~育成あたりになりやすいのですが、志望届を提出したら指名される公算は高いとみています。ただし本人のことを考えると、確かな感覚をアマで掴んでからでもと思う部分と、アマでは起用されず経験値を積めないかもと、進む進路でも全然変わってきそうです。育成ならば指名の打診もあったという、藤嶺藤沢時代の 矢澤宏太(日体大)に似た印象を持ちます。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を勢い良く高い位置まで引き上げてきます。軸足の膝に余裕がないので、力みが生じやすいのは気になるところ。それでも軸足一本で立った時には、バランス良くは立てていました。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 お尻の三塁側への落としは、やや甘さを残します。したがって身体を捻りだすスペースとしては充分ではないものの、カーブやフォークが投げられないほどではないように思えます。 「着地」までの地面の捉えは平均的、身体を捻り出す時間は並。そういった意味では、キレや曲がりの大きな変化球は微妙ですが、スライダーの曲がり自体は悪く有りません。カーブで緩急を聞かせたり、フォークのような縦の変化などは鈍くなる可能性があります。 <ボール支配> ☆☆★ 2.5 グラブは比較的最後まで身体の近くにあるので、外に逃げようとする遠心力はある程度内に抑えられています。したがって、両サイドの投げ訳は悪く有りません。ただし、足の甲での地面の捉えは浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。まして「球持ち」はまだ浅く、ボールが押し込めていないのでボールが抜けてしまうことも少なくありません。制球の粗さは、サイドよりも高低に課題があると言えるでしょう。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻の落としに甘さはあるものの、カーブやフォークを投げられないほど窮屈にはならないと思います。またカーブの頻度は少ないですし、フォークも投げているようには見えないので悲観するほではないでしょう。 ただしボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が大きく下がるほどの送り出しをしているので、肩への負担は大きいように思えます。またかなりの力投派なので、疲労も溜めやすいのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは平均的でそれほど苦になるほどのフォームではないものの、ボールの出どころは適度に隠せています。 また腕は強く振れているので、吊られて空振りは誘いやすいのでは? しかしステップの幅が狭いのか? 投げ終わったあと三塁側に流れてしまうなど、「体重移動」に課題を残します。このへんが改善されると、もっとダイレクトにボールに力が伝えられ、球質も良化すると考えられます。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」こそ悪く有りませんがあとは改善の余地があります。高低の制球力・肩に負担のかかるフォームに不安があり、武器になる変化球の修得にも不安が残ります。そういった意味では、リスキーな素材だと言えるのではないのでしょうか。 (最後に) プロでもアマでも進む環境で、その未来は大きく左右されそうです。というのは、実力不足でアマに残ったところで、投げる機会が限定され経験を積めないで伸び悩む可能性もあるからです。左腕であり速い球が投げられるという部分を売りに、育成でもプロに進む方が得策かもしれません。ただし、高校の段階で力の抜き加減を身につけつつある部分もあるので、これを完全にものにできれば安定感は劇的に変わるのではないのでしょうか。そういったところを期待して、不安は残りますが ☆ を付けてみたいと思いました。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2021年夏 鹿児島大会) |