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大川 慈英(明治大4年)投手  180/75 右/左 (常総学院出身)
 




 「中継ぎなら即戦力かも」





 春先の六大学と社会人チームとの対抗戦で 大川 慈英 を見た際、正直、プロの舞台では特徴が埋もれがちで、卒業後は企業チームに進むのではないかと感じた。しかし、リーグ戦でリリーフに転向すると出力が向上し、質の高いストレートで押す場面が目立った。今なら、中継ぎとしてプロでも即戦力になり得る可能性を感じさせる。


投球内容

2025年春季リーグ戦の成績:
8試合登板、1勝1敗、防御率2.45

ストレート(140~150キロ強) 評価:☆☆☆☆ 4.0

 社会人との対抗戦では最速147キロ程度だったが、リーグ戦のリリーフ登板では150キロ台を連発。細かいコースの投げ分けは課題だが
、回転数の高い球質は際立ち、トラックマンなどのデータ評価で注目されるタイプ。リーグ戦では出力が上がり、短いイニングならプロでも通用する勢いを感じる。

変化球(カーブ・チェンジアップなど) 評価:
☆☆☆★ 3.5

 対抗戦では緩いカーブがアクセントだったが、リーグ戦ではストレートとチェンジアップのコンビネーションを多用。ストレートの勢いが強力なため、チェンジアップが効果的な武器として機能している。

その他

 牽制は適度に鋭く、クイックは0.95~1.05秒と素早い。ボールを長く持って間を取ったり、コースを細かく突いたりする繊細さはまだ見られないが、常総学院時代からの豊富な経験を生かし、マウンドさばきは安定している。

投球のまとめ

 オーソドックスなフォームから投げ込む正統派投手で、これまで特筆すべき印象は薄かった。しかし、リリーフでは出力が上がり、ストレートの質が目立つようになってきた。元々のまとまりの良さに球威が加わり、プロの先発としては物足りなくとも、リリーフなら通用するかもしれない。。







成績分析

 春季リーグ戦の詳細な成績を以下の表にまとめた。リリーフ登板のためサンプル数は少ないが、評価基準に照らして分析する。


項目
成績
基準
評価
被安打率
81.8% (15安打/18.1回)
投球回数の80%以下
四死球率
27.3% (5四死球/18.1回)
投球回数の33.3%以下
1イニングあたり奪三振
1.09個 (20三振/18.1回)
0.9個以上
防御率
2.45
1点台以内


被安打率(投球回数の80%以下) △

 六大学のハイレベルな打者を考慮し、基準を緩めに設定。それでも81.8%と基準をわずかに超え、ボールの質の割に打ち返されやすい。コースの投げ分けが甘いことが原因と考えられ、プロではコントロールの向上が課題だが、技術的な調整で改善の余地がある。

四死球率(投球回数の33.3%以下) ◯

 四死球率は27.3%で基準をクリア。出力重視の投球で細かい制球は難しいが、四死球で自滅するリスクは低く、信頼して起用できる。

1イニングあたりの奪三振(0.9個以上) ◎

 リリーフとしては厳しめの0.9個以上の基準をクリアし、1.09個を記録。右投手として高い奪三振率は、プロでも武器になる可能性を示す。

防御率(1点台以内) ✕

 リリーフとしては0点台が理想だが、2.45と平凡。ただし、2年秋に9イニングで防御率1.00を記録した実績があり、さらなる安定感が期待できる。

成績からわかること

 被安打率と防御率が平凡で、プロの打者相手では課題が浮き彫りになる可能性がある。しかし、四死球の少なさと高い奪三振率は強み。コースの投げ分けや配球の工夫を磨けば、プロのリリーフとして活躍できる可能性がある。評価は視点によって分かれそうだが、成長の余地は十分期待できそうだ。


(最後に)

 当初は社会人チーム向きと感じたが、春季リーグ戦のリリーフ登板でプロの可能性が見えた。ストレートの勢いとマウンドでの集中力は、短いイニングで光る。成績には課題もあるが、秋季リーグ戦でさらなる進化を見せれば、プロのスカウトの注目を浴びるかもしれない存在だ。


蔵の評価:
追跡級!


(2025年 春季リーグ戦)





大川 慈英(常総学院3年)投手 178/70 右/左 
 




 「真っ直ぐはドラフト級」





 コンスタントに140キロ台を超える、速球の勢い・威力はまさにドラフト指名級のものを持っていた 大川 慈英 。果たして、高校からプロにゆくには、何が必要なのか考えてみた。


(投球内容)

 中背の体格から、セットポジションから投げ込んできます。選抜では試合・9イニングに登板し、9回・5安打・3四死球・5三振・自責点1 といった内容でした。

ストレート 130キロ台後半~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0

 球速こそドラフト候補としては平均的ですが、ボールの勢い・強さという意味では関東でもトップクラスの投手だと言えます。ストレートは大まかに両サイドに投げ分けられますが、左打者への制球力がアバウトなのと全体的に球筋が高い傾向にあります。それでもボールの勢いや球威はあるので、そのへんはあまり気になりません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カット ☆☆ 2.0

 小さく横に滑るカットボールやスライダー系の球に、チェンジアップ系の球でカウントを整えてきます。しかし、この変化球が高めに浮いてあまり変化しないで、狙い打たれてしまったり決まらないことが多い。そういった変化球の精度・キレというものが、この選手の最大の課題ではないかと。一番の理由は、手首を立てて投げられないのでボールがみな抜け気味になるところに問題があるように感じます。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと極めて素早く投げ込むことができる。牽制も非常に鋭く、容易に次の塁を陥れることはできないのではないのだろうか。マウンドさばきは冷静で、ある程度で踏ん張れる気持ちの強さは感じました。

(投球のまとめ)

 中背の体格と変化球レベルを考えると、例えストレートが指名級でも厳しいのではないかと。今後に向けて、フォームはどうなのか考えてみて判断してみたい。腕の振りなどを見ていると、かなりサイドに近いスリークォーター的な動作になっている。


(投球内容)

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としはバッテリーライン上に残ってしまう。そのためカー ブで緩急を付けたり、フォークのような縦の変化球には適さない。

 それでも「着地」までの地面の捉えにはそれなりに粘りがあり、身体を捻り出す時間はそこそこ確保。このフォームだと、スライダーやチェンジアップ・球速のある小さな変化で投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えれず解けてしまっているので、どうしても外に逃げようとする遠心力が抑え込めていない。そのためか? 軸がブレやすく左打者への投球中心に制球が乱れやすい。

 足の甲での地面への捉えはできているので、ボールが上吊り難そうに見えます。しかし手首を立ててリリースできないので、どうしてもボールが抜けてしまうことが多くなってしまう。「球持ち」自体が悪いというよりも、縦に振れないことが問題なのかと。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は一塁側には落とせないものの、カーブやフォークといった球種は観られない。そのため窮屈になる機会も少なく、肘への負担は少ないのではないかと。

 腕の送り出しを観ていても、肩への負担は少なそう。また、けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは適度に作れていて、打者としてはそれほど合わせやすいわけではないのでは? ボールの出どころは平均的だったが、ボールが見えてからも想像以上に手元まで来ていたので、並の高校生では押されてしまうのかもしれない。

 気になるのは、思ったほど投げ終わった腕が身体に絡んで来ないこと。そのため、より変化球での空振りが望み難いのかもしれない。また、もう少し体重を乗せてからリリースできているのかと思ったが、まだまだ充分に体重が乗せきれている感じではなかった。このへんが、股関節の柔軟性を養いつつ下半身の筋力を強化されたら、さらにストレートに凄みを増すことができるかもしれない。

(フォームのまとめ)

 投球フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」も、どれも極端に悪いわけではないが良い部分も見当たらない。これを未熟とみるか、伸び代 があるものと見るかで意見は別れてきそう。制球を司る動作は、手首が立てられないリリースにグラブの抱えがしっかりできていない。故障のリスクや投球の幅を広げて行けるのかという部分でも平均的で、動作全体は可も不可もなしといったレベルに留まっている。このへんを、今後本人が意識して高めて行けるかで、この選手の未来は大きく変わってきそうだ。


(最後に)

 一学年先輩である 菊地 竜雅 や 一條 力真 といった先輩逹ですら進学を選択したことを考えると、大川選手も進学の可能性が高いのではないかとみています。また夏までによほど内容を高めてこない限りは、ちょっと高校の間に指名圏内に入ってくると評価する球団はないのかもしれません。夏まで追いかけてみたいとは思いますが、現時点では限りなく  を付けるまでには至らないのではないかという風に傾いています。しかし今後、課題に向き合いつつ総合力を引き上げられれば、指名候補へと成長していっても不思議ではありません。


蔵の評価:追跡級!


(2021年 選抜大会)