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大川 慈英(明治大4年)投手  180/75 右/左 (常総学院出身) 





 「一時期ものなのか成長なのか?」




 これまで 大川 慈英(おおかわ じえい)の投球を見てきて、ボールの勢いの割に被安打数や防御率が平凡な点がずっと気になっていた。今秋の投球を見て、一時的に調子が良かっただけなのか、それとも実力そのものが底上げされてきたのか? その見極めは正直難しい。


(投球内容)

今秋の成績(12回)

WHIP 0.33(被安打+四球)÷投球回 → 
リーグトップクラスの出塁抑止力
K/9 7.50(9イニング換算の奪三振数) → まずまずの三振奪取能力
FIP 1.80前後(守備に左右されにくい純粋な投手指標) → 実際の防御率0.75よりやや高めだが、それでも非常に優秀



投球回数
被安打
四球 奪三振 防御率
12回 4 0 10 0.75


ストレート 145~150キロ台強 ☆☆☆☆(4.0)

 今秋は春よりも明らかにボールの勢い・迫力が一段上がっていた。その勢いがそのまま成績に直結しており、
回転数の多そうなホレボレする球質は本物だ。ただ、ゾーン内での制球は依然として粗さが残る。ボールの走りが少しでも鈍ると一気に打たれ、そこから失点する可能性は捨てきれない。したがって、今のボールの勢いをどれだけ維持できるかが最大の鍵となるだろう。

横の変化(カット・スライダー) 
☆☆☆(3.0)

 小さく横にズレるカットボールと、大きめに曲がるスライダーを両方持っているように見える。しかしリリーフ起用が多いこともあり、基本的には真っ直ぐ中心の配球で変化球の割合は少ない。

縦変化(チェンジアップ) 
☆☆☆(3.0)

 春はチェンジアップをかなり多投していた印象だったが、今秋はあまり見られなかった。意図的に減らしていたのか、たまたま観戦した試合で使わなかっただけなのかは不明。この球の精度・キレは悪くないだけに、今後また復活する可能性はある。

緩急(カーブ) 
☆☆☆★(3.5)

 ブレーキの効いたカーブを積極的に混ぜてくる。カウントを整えるだけでなく、
明確な投球のアクセントにもなっていた。

その他 
☆☆☆★(3.5)

 クイックは0.9秒台と非常に速く、走者にもしっかり目配せをしてから投げるため、盗塁はかなり切りづらいはず。コースを一杯に使った出し入れやボールを長く持つような投球術は見られないが、高校時代から好投手だっただけにマウンドさばきは安定している。

(投球のまとめ)

 春に比べて真っ直ぐの勢いが格段に増したことで、課題だったボールの割に「打たれすぎ」が大幅に改善された。実際、WHIP 0.33という数字は今秋のリーグでも断トツで、FIPも1点台後半と守備に左右されない部分でも優秀さを示している。ただ、四死球が極端に少ない12イニングというサンプルの数字であり、運の要素(BABIPの低さ)も多少絡んでいる可能性はある。それが
一時的なピークなのか、それとも実力が本格的に引き上がったのかはまだ判断は難しい。その答え次第で、この選手の評価は大きく変わってくるだろう。





(投球フォーム)

 セットポジションから足を上げる高さ・勢いは平均的。軸足一本で立ったときに
膝から上がピンと伸び切ってしまうため、やや力みが見られる。この形だと無理にバランスを取ろうとして制球を乱す要因になりやすい。

<広がる可能性> 
☆☆★(2.5)

 着地時に足を地面に向けて下ろすため、お尻が一塁側に落ちにくい。そのため捻り出すスペースが不足し、カーブやフォークなど変化球には不向き。着地も比較的早めで、捻り出す時間も短いため、今後も球速のある小さな変化球を中心に組み立てていく形になりそうだ。

<ボールの支配> 
☆☆☆★(3.5)

 
グラブが後ろで解けてしまうため遠心力が外に抜けやすく、軸がブレて両サイドのコントロールが付きにくい。実際、ゾーン内でもバラつきが目立つ。一方で足の甲での地面の捉えはできているので、ボールは高めに浮きにくく、球持ちも前で放せている。抜け球は少なく、高低のミスより左右の投げミスが目立つタイプ

<故障のリスク> 
☆☆★(2.5)

 お尻の落としが浅い割に縦のカーブを多投するため、肘への負担は少し気になる。ただ腕の振り自体は肩に無理がなさそうに見える。かなりの力投派なので疲労蓄積には注意が必要で、思わぬ箇所を痛める可能性もある。いずれにしても体のケアは徹底してほしい。

<実戦的な術> 
☆☆☆(3.0)

 着地が早く
ボールの出どころも見やすいため、ボールの質の割に打たれてしまう理由がここにある。一方で、腕の振りは素晴らしく、フィニッシュでパ~ンと地面を強く蹴り上げる姿は今年のドラフト候補投手中でも随一。これは、最後までエネルギーを伝え切れている証拠だ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作では
「着地」「開き」に課題がある一方、「球持ち」「体重移動」は抜群に優れている二面性を持つ。制球面では特に両サイドのコントロールに難あり。故障リスクは肘の負担と力投派ゆえの疲労蓄積が懸念材料。将来、決め球級の変化球を習得できるかは疑問で、いかに「高次元の真っ直ぐ」を投げ続けられるかが鍵となる投手だ。


(最後に)

 少しでもボールの勢いが落ちると、フォームが見切られやすく、かつ武器になる変化球が少ないため、一気にパフォーマンスが落ちる危険性が高い。今秋はWHIP・FIPともにリリーフとして即通用する数字を出しているが、それが「150キロ台の真っ直ぐがゾーンに決まり続けた12イニング」だけで成り立っている面も否めない。もし4年秋の勢いをプロでも維持できれば、
リリーフとして即戦力級の活躍は十分可能だと評価する。ただし、春に見せた物足りなさが本質的な部分もあるように感じられ、活躍するとしても短期的に留まるのではないのだろうか。そのためドラフト1位指名選手ではあるが、個人的にはやや控え目な評価に留めておきたい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2025年 秋季リーグ戦)


 








大川 慈英(明治大4年)投手  180/75 右/左 (常総学院出身)
 




 「中継ぎなら即戦力かも」





 春先の六大学と社会人チームとの対抗戦で 大川 慈英 を見た際、正直、プロの舞台では特徴が埋もれがちで、卒業後は企業チームに進むのではないかと感じた。しかし、リーグ戦でリリーフに転向すると出力が向上し、質の高いストレートで押す場面が目立った。今なら、中継ぎとしてプロでも即戦力になり得る可能性を感じさせる。


投球内容

2025年春季リーグ戦の成績:
8試合登板、1勝1敗、防御率2.45

ストレート(140~150キロ強) 評価:☆☆☆☆ 4.0

 社会人との対抗戦では最速147キロ程度だったが、リーグ戦のリリーフ登板では150キロ台を連発。細かいコースの投げ分けは課題だが
、回転数の高い球質は際立ち、トラックマンなどのデータ評価で注目されるタイプ。リーグ戦では出力が上がり、短いイニングならプロでも通用する勢いを感じる。

変化球(カーブ・チェンジアップなど) 評価:
☆☆☆★ 3.5

 対抗戦では緩いカーブがアクセントだったが、リーグ戦ではストレートとチェンジアップのコンビネーションを多用。ストレートの勢いが強力なため、チェンジアップが効果的な武器として機能している。

その他

 牽制は適度に鋭く、クイックは0.95~1.05秒と素早い。ボールを長く持って間を取ったり、コースを細かく突いたりする繊細さはまだ見られないが、常総学院時代からの豊富な経験を生かし、マウンドさばきは安定している。

投球のまとめ

 オーソドックスなフォームから投げ込む正統派投手で、これまで特筆すべき印象は薄かった。しかし、リリーフでは出力が上がり、ストレートの質が目立つようになってきた。元々のまとまりの良さに球威が加わり、プロの先発としては物足りなくとも、リリーフなら通用するかもしれない。。







成績分析

 春季リーグ戦の詳細な成績を以下の表にまとめた。リリーフ登板のためサンプル数は少ないが、評価基準に照らして分析する。


項目
成績
基準
評価
被安打率
81.8% (15安打/18.1回)
投球回数の80%以下
四死球率
27.3% (5四死球/18.1回)
投球回数の33.3%以下
1イニングあたり奪三振
1.09個 (20三振/18.1回)
0.9個以上
防御率
2.45
1点台以内


被安打率(投球回数の80%以下) △

 六大学のハイレベルな打者を考慮し、基準を緩めに設定。それでも81.8%と基準をわずかに超え、ボールの質の割に打ち返されやすい。コースの投げ分けが甘いことが原因と考えられ、プロではコントロールの向上が課題だが、技術的な調整で改善の余地がある。

四死球率(投球回数の33.3%以下) ◯

 四死球率は27.3%で基準をクリア。出力重視の投球で細かい制球は難しいが、四死球で自滅するリスクは低く、信頼して起用できる。

1イニングあたりの奪三振(0.9個以上) ◎

 リリーフとしては厳しめの0.9個以上の基準をクリアし、1.09個を記録。右投手として高い奪三振率は、プロでも武器になる可能性を示す。

防御率(1点台以内) ✕

 リリーフとしては0点台が理想だが、2.45と平凡。ただし、2年秋に9イニングで防御率1.00を記録した実績があり、さらなる安定感が期待できる。

成績からわかること

 被安打率と防御率が平凡で、プロの打者相手では課題が浮き彫りになる可能性がある。しかし、四死球の少なさと高い奪三振率は強み。コースの投げ分けや配球の工夫を磨けば、プロのリリーフとして活躍できる可能性がある。評価は視点によって分かれそうだが、成長の余地は十分期待できそうだ。


(最後に)

 当初は社会人チーム向きと感じたが、春季リーグ戦のリリーフ登板でプロの可能性が見えた。ストレートの勢いとマウンドでの集中力は、短いイニングで光る。成績には課題もあるが、秋季リーグ戦でさらなる進化を見せれば、プロのスカウトの注目を浴びるかもしれない存在だ。


蔵の評価:
追跡級!


(2025年 春季リーグ戦)





大川 慈英(常総学院3年)投手 178/70 右/左 
 




 「真っ直ぐはドラフト級」





 コンスタントに140キロ台を超える、速球の勢い・威力はまさにドラフト指名級のものを持っていた 大川 慈英 。果たして、高校からプロにゆくには、何が必要なのか考えてみた。


(投球内容)

 中背の体格から、セットポジションから投げ込んできます。選抜では試合・9イニングに登板し、9回・5安打・3四死球・5三振・自責点1 といった内容でした。

ストレート 130キロ台後半~MAX146キロ ☆☆☆ 3.0

 球速こそドラフト候補としては平均的ですが、ボールの勢い・強さという意味では関東でもトップクラスの投手だと言えます。ストレートは大まかに両サイドに投げ分けられますが、左打者への制球力がアバウトなのと全体的に球筋が高い傾向にあります。それでもボールの勢いや球威はあるので、そのへんはあまり気になりません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カット ☆☆ 2.0

 小さく横に滑るカットボールやスライダー系の球に、チェンジアップ系の球でカウントを整えてきます。しかし、この変化球が高めに浮いてあまり変化しないで、狙い打たれてしまったり決まらないことが多い。そういった変化球の精度・キレというものが、この選手の最大の課題ではないかと。一番の理由は、手首を立てて投げられないのでボールがみな抜け気味になるところに問題があるように感じます。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと極めて素早く投げ込むことができる。牽制も非常に鋭く、容易に次の塁を陥れることはできないのではないのだろうか。マウンドさばきは冷静で、ある程度で踏ん張れる気持ちの強さは感じました。

(投球のまとめ)

 中背の体格と変化球レベルを考えると、例えストレートが指名級でも厳しいのではないかと。今後に向けて、フォームはどうなのか考えてみて判断してみたい。腕の振りなどを見ていると、かなりサイドに近いスリークォーター的な動作になっている。


(投球内容)

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としはバッテリーライン上に残ってしまう。そのためカー ブで緩急を付けたり、フォークのような縦の変化球には適さない。

 それでも「着地」までの地面の捉えにはそれなりに粘りがあり、身体を捻り出す時間はそこそこ確保。このフォームだと、スライダーやチェンジアップ・球速のある小さな変化で投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えれず解けてしまっているので、どうしても外に逃げようとする遠心力が抑え込めていない。そのためか? 軸がブレやすく左打者への投球中心に制球が乱れやすい。

 足の甲での地面への捉えはできているので、ボールが上吊り難そうに見えます。しかし手首を立ててリリースできないので、どうしてもボールが抜けてしまうことが多くなってしまう。「球持ち」自体が悪いというよりも、縦に振れないことが問題なのかと。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻は一塁側には落とせないものの、カーブやフォークといった球種は観られない。そのため窮屈になる機会も少なく、肘への負担は少ないのではないかと。

 腕の送り出しを観ていても、肩への負担は少なそう。また、けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは適度に作れていて、打者としてはそれほど合わせやすいわけではないのでは? ボールの出どころは平均的だったが、ボールが見えてからも想像以上に手元まで来ていたので、並の高校生では押されてしまうのかもしれない。

 気になるのは、思ったほど投げ終わった腕が身体に絡んで来ないこと。そのため、より変化球での空振りが望み難いのかもしれない。また、もう少し体重を乗せてからリリースできているのかと思ったが、まだまだ充分に体重が乗せきれている感じではなかった。このへんが、股関節の柔軟性を養いつつ下半身の筋力を強化されたら、さらにストレートに凄みを増すことができるかもしれない。

(フォームのまとめ)

 投球フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」も、どれも極端に悪いわけではないが良い部分も見当たらない。これを未熟とみるか、伸び代 があるものと見るかで意見は別れてきそう。制球を司る動作は、手首が立てられないリリースにグラブの抱えがしっかりできていない。故障のリスクや投球の幅を広げて行けるのかという部分でも平均的で、動作全体は可も不可もなしといったレベルに留まっている。このへんを、今後本人が意識して高めて行けるかで、この選手の未来は大きく変わってきそうだ。


(最後に)

 一学年先輩である 菊地 竜雅 や 一條 力真 といった先輩逹ですら進学を選択したことを考えると、大川選手も進学の可能性が高いのではないかとみています。また夏までによほど内容を高めてこない限りは、ちょっと高校の間に指名圏内に入ってくると評価する球団はないのかもしれません。夏まで追いかけてみたいとは思いますが、現時点では限りなく  を付けるまでには至らないのではないかという風に傾いています。しかし今後、課題に向き合いつつ総合力を引き上げられれば、指名候補へと成長していっても不思議ではありません。


蔵の評価:追跡級!


(2021年 選抜大会)