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木村 大成(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







木村 大成(北海3年)投手 181/78 左/左 





 「宮城大弥と変わらないのでは?」





 夏の甲子園・神戸国際大付属戦の模様を観ていて、木村 大成 のピッチングは、興南時代の 宮城 大弥 とそんなに遜色はないのではないかと思えた。しかし、この神戸国際大付戦は、立ち上がりからガンガン飛ばした感じ。南北海道大会での木村は、立ち上がりは130キロ台後半で丁寧にピッチングをしていた印象だった。


(投球内容)

 夏の神戸国際大付属戦では、選抜に続いての対戦のためか? 木村の武器である低めに切れ込むスライダーを振ってもらえない場面が目立ち苦しかった。それでも途中から、ストライクゾーンにスライダーを集める配球に切り替え、3回ぐらいから力みも消え元来の彼の投球できていた。そういった試合の中での修正力には目を見張るものがあった。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5

 選抜も夏の大会でも、最速は146キロと変わらず。しかし、打者の手元までのボールの強さという意味では、春よりもワンランクが強くなっているように感じられます。春までは、キレ型の軽い球質で甘く入ると長打を浴びやすい球質だったので。またこの真っ直ぐを打者の内外角に投げ分けてきます。特に、右打者のインローに集められる点は高く評価できるポイントではないかと。

 一方で、春も指摘しましたが、左投手ながら左打者への球筋がバラついて安定しません。また球速の割には、打者は苦になく合わせてきている感じで、「着地」までの粘りの無さから打者としてはタイミングが合わせやすいフォームなのではないかと感じます。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆★ 3.5

 ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むスライダーを振らせるのが最大の武器で、この点は高校時代の 宮城大弥 も同様でした。宮城は夏の沖縄大会決勝戦で、この球を見極められてしまい延長の末敗れました。しかし、木村の場合は、見極められてもストライクゾーンにスライダーを集めることで、投球を修正することができていた点は評価できます。他にも緩いカーブを混ぜてきたりしますが、外に小さく逃げるチェンジアップのキレ・精度がまだ頼りなく、この点が物足りない部分でしょうか。

その他

 クィックは、1.15~1.25秒ぐらいと、左腕だけに少し遅め。ただし、左投手だけに中々走者としては踏み出し難いのは確かです。牽制自体は、見極めは難しいのですがモーションが大きいので刺せないのでは? フィールディングの反応などは、なかなか良い選手だと思います。

(投球のまとめ)

 春に比べると、打者の手元までのボールに強さが出てきたところは明るい材料。また、低めの変化球を見極められても、違う引き出しで組み立てられ、試合中の修正力・精神力は見事なものがありました。その一方で、左打者へ不安定な球筋は改善されておらず、また右打者にも合わされやすいフォームなのは変わっていません。そのへんは、プロ入り後の宿題となりそうです。


(成績から考える)

 春にフォーム分析はしているので、夏の投球内容から傾向を考えてみましょう。地区大会からの南北海道大会の6試合と甲子園での1試合を元に算出してみました。

7試合 47回 33安 16四死 69三 16失 防 3.06

1,被安打は投球回数の80%以下 ○

 被安打率は、70.2%と低い。南北海道大会の準決勝・決勝あたりでは、投球回数を上回る安打も浴びていた。そのため、絶対的な数字ではないものの、相手に的を絞らせない引き出しは多く持っている。

2,四死球は投球回数の1/3以下 △

 四死球率は、34.0%。基準である、投球の回数の1/3(33.3%)以下には僅かに届かず。上記でも触れたように、左打者への制球が、あまり制御できていない点が気になる。右打者に関しては、低めにも球が集まるし、内角外角をしっかり投げ分けられることはできるのだが・・・。

3,1イニングあたりの奪三振は、0.9個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振は、1.47個と優秀。多少安打を浴びたり、四死球でランナーを許しても、三振で切り抜けられる術を持っている。

4,防御率は1点台以内 ☓

 しかし、これだけのボールを持っていながら、甲子園を除いた南北海道大会の成績でも、防御率は3点台であり絶対的ではなかった。観ているとと、捕手の 大津 綾也 のサインに首を振ったり、結構表情に現れるタイプなので、気持ちのムラが投球に現れやすいタイプなのかもしれない。

(成績からわかること)

 強豪の神戸国際大付戦の成績を除いても、南北海道大会での成績は思いのほか平凡だったのは気になるところ。それだけに、甲子園での投球だけで、高く評価するのは危険なのかもしれない。


(最後に)

夏の甲子園では、初回から飛ばしてボールが強くなったことを印象づけた。また、ボールを降ってもらえない中でも、配球を換え試合中に修正できた能力などをみて、上位指名も有力ではないかと評価しました。しかし、南北海道大会の成績や投球も観てみると、幾分それは割り引いた方が懸命なのではないかと思うように変わってきた。それでも、春からの成長が観られたのは確かなので、選抜よりもワンランク評価を高めて、最終評価としてみたい。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2021年夏 甲子園) 



 








木村 大成(北海3年)投手 180/76 左/左 
 




 「左の有難みは薄い」





 右打者の内角低めに切れ込むスライダーを振らせるのが上手く、左腕ながら右打者相手に素晴らしいピッチングをする 木村 大成 。その反面、左投手ながら左打者への投球はやや投げ難そうなのが気になった。そのため、左腕のメリットである左打者に強いといった観点ではやや物足りない印象を受けた。


(投球内容)

 センバツの神戸国際大付属戦では、9回1/3イニングを投げて、11安打 3四死球 8三振 3失点 という内容で甲子園を去った。

ストレート 130キロ台後半~MAX145キロ ☆☆☆ 3.0

 左投手の球速が出難い甲子園のスピードガンにおいて、130キロ台後半~145キロの球速は、今大会に出場した左腕でも屈指のレベルにありました。ストレートの球筋は結構荒れ気味に見えるのですが、適度に両サイドに散ることで的を絞らせない効果があります。ボールにも適度な勢いがあり、変化球をより活かすことができています。この時期の高校生としては、合格圏内。ボールが切れ型なので、甘く入ると長打を浴びやすい危険性があります。そのへんは、試合序盤まで無安打抑えておきながら、試合通しては11安打と投球回数を上回っているところからも伺えます。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 カウントを稼ぐ横滑りするスライダーと、打者のストライクゾーンからボールゾーンに切れ込む。スライダーを振らせるのが非常に上手いし空振りが奪えます。逆に右打者の外角に逃げるチェンジアップ系が少なく、緩いカーブも滅多には投げてきません。

その他

 牽制は適度に鋭く、フィールディングも落ち着いて処理していました。クィックは使って来ないことが多いのですが、使おうと思えば1.2秒台と素早くはないのですが投げることはできるようです。元々マウンド捌きも良く、野球センスに優れたタイプなのではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 まだストレートのコマンド・強さという意味では物足りないものは残るものの、充分な練習も積んではこられなかった北海道のチームだということを考えれば基準レベルなのかなと。特に変化球でカウントを整えられるだけでなく、狙って空振りを取れるボールを持っているのは多いなる強味ではないかと感じます。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみましょう。ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、足を高い位置まで引き上げてきます、軸足一本で立った時には、膝に余裕がありバランス良く立てています

<広がる可能性> ☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残ります。そのため身体を捻り出すスペースは充分に確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さないと考えられます。

 また「着地」までの地面の捉えにも粘りは感じられず、身体を捻り出す時間も不十分です。それでもスライダーのキレはすでに武器にできるレベルですので、チェンジアップや球速のある小さな変化でピッチングの幅を広げてゆく方向で、投球の幅を広げてゆくことになるのではないでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸がブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのではないかと。その一方で、足の甲の地面の押しつけは浮いてしまい、浮き上がろうとする力は抑えられていません。そのため、ボールが上吊りやすい要因を作っています。「球持ち」自体は前で放せているのですが、ボールの押し込みという意味でも抜け気味になっているので、力を入れて投げるとボールが浮きやすいと考えられます。両サイドのコントロールよりも、高めへ集まりやすい球筋に課題があります。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 確かにお尻は落とせないフォームなのですが、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種は滅多にみられません。そのため肘への負担という意味では、窮屈になる機会も少なく現状は悲観するほどではないと考えられます。

 また腕の送り出しを観ていても、肩への負担は少ないのではないかと。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいというほどでもないのでしょう。そういった意味では、現状の持ち球ならば故障のリスクはさほど高くはないのではないかと捉えています。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りに欠けタイミングは合わされやすいのですが、ボールの出どころは隠せているのでピュッと来る感じは抱きやすいのでは? そのためイメージよりも、ボールが手元までキレてくる感じで打ち損じるケースは結構出てくるのではないかと。

 腕はしっかり振れていているので、打者としては勢いで空振りは誘いやすいはず。気になるのは、前の足がブロックしてしまい「体重移動」を阻害するので、手元までグッと来る感じの球ではないということ。あくまでも腕や上半身の鋭い振りで、キレを生み出すタイプ。空振りは奪える球質ではありますが、球威に欠け甘く入ると長打を食らいやすい側面があります。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、ボールの出どころは隠せて「開き」は良いのですが、「着地」と「体重移動」に課題を抱えます。すなわち、球威のある相手を押し込むようなボールに欠けるということ。高めに集まりやすい球筋はありますが、故障のリスクはさほどではなく、動作の割にスライダーという絶対的な武器は身につけられています。技術的には、良いところと悪いところが混在し、実戦的とは言い切れない部分があります。


(最後に)

 昨秋のピッチングを少しみた感じでは、根本 悠楓(苫小牧中央-日ハム5位)のような実戦的な左腕をイメージしていました。しかし、このセンバツでじっくり見てみて、むしろ 松本 隆之介(横浜-DeNA3位)のような、どっちに転ぶかイメージし難いタイプかなと思えてきました。

 春の時点で指名圏内には入ってきているとは思いますが、個人的には5位前後ぐらいの内容かなと感じます。もう少し課題を克服するなりストレートに凄みを増すようならば、3位前後ぐらいまでの評価に夏には至っても不思議ではないとは思います。しかし個人的には少しまだ疑問な部分も残るので、春の時点では控え目の評価に留めることにしました。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年 選抜大会)