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鵜飼 航丞(中日)外野手のルーキー回顧へ







鵜飼 航丞(駒沢大4年)DH 182/100 右/右 





 「新井貴浩二世」





 今年のドラフト候補の中でも、最もアマチュアで将来長距離打者としての大化けが期待できそうなのが、この 鵜飼 航丞 。駒大の先輩であり、ドラフト6位から球界を代表する強打者に成長した 新井 貴浩(広島-阪神) を彷彿とさせる文句なしの長距離候補だ。


(守備・走塁面)


 この春の守備位置は、DHであった。それでも、右打席から4.25秒前後で一塁まで駆け抜ける脚力があり、左打者に換算すると4.0秒前後に相当するタイム。プロに混ぜても、中の上 レベルの脚力はあるといえるであろう。その証に、3年秋のシーズンでは4盗塁を記録。けして、動けない選手ではない。

 また地肩も悪くない選手で、それでもDHを担うのは、やはり打球勘やキャッチングなどに大きな欠点があるからだろう。身体能力はプロ級だが ・・・ みたいな選手が今年は多い気がする。ただし、プロの左翼手の守備レベルは打撃偏重でかなり低い。一塁&左翼 あるいはDHの候補として、長距離砲としての可能性に期待するという球団が出てきても不思議ではない。





(打撃内容)

 数多くのプロ野球選手を輩出してきた中京大中京の監督をして、飛距離は歴代NO.1 と公言するパワーは間違いない。当たれば飛ぶということ以上に、安定して打球が角度良く飛んでゆく「天性のスラッガー」だといえよう。3年秋・4年春の2シーズンで6本のホームランを量産しているが、打率は2年秋・3年秋のシーズンに記録した、打率2割5分が最高打率という確実性に課題がある。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを下げて構えます。腰の据わり具合はまずまずで、両眼で前を見据える姿勢は良いです。ただし、全体的に猫背気味でバランスとしてはどうでしょうか。それでも打席ではリラックスして構えられていて、悪くはないように感じます。

<仕掛け> 早すぎ

 投手の重心が下がり始める前から足を引き上げているという、「早すぎる仕掛け」を採用。通常ここまで早い段階で動き出すと、投手がまだ投げるタイミングを変えることができるので、タイミングが狂わされる恐れがあります。そのため、投手の重心が下がり始めて以降に動き出す選手が圧倒的に多いのは確かです。始動のタイミングだけで言えば、早めに動き出すことで、いろいろな球に対応しようというスタイルであり、確実性を重視した打者に多く観られる仕掛けとなります。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を空中で長くキープし、ほぼ真っすぐに踏み出してきます。始動~着地までの「間」は充分ぐらいあるので、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいのでは? まっすぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。

 踏み込んだ前の足は、なんとかブレないで地面捉えています。そのため逃げてゆく球や低めの球にもついて行けそうなものの、何処までセンターから右方向への意識があるのかは微妙です。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 ボールを呼び込む際にグリップを引き上げるヒッチが観られるものの、投手がリリースを迎える前であり、これはあまり気にしなくても良いのでは? そのため「トップ」を作るのも、けして遅れる心配はありません。ただし、ボールを打ちにゆくまでに、いろいろ忙しいスイングをする選手との印象は持ちます。

 バットの振り出しは、けしてインサイドアウトで内からバットが出てくる感じではありません。それでもインパクトの際にはバットの先端であるヘッドが下がらず、脇も閉じて上手く振り抜けて大きなロスを回避できています。

 インパクト後も、大きな弧とフォロースルーが高い位置まで引き上がってくるように、ボールに角度をつけて飛ばすのが上手い選手。タイミングを図る精度が上がってくれば、必然的に長打を打てる確率も増してゆくと感じられます。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 早めに足を上げることで、ボールを迎える時の目線の上下動は抑えられている。身体の開きもなんとか我慢できており、軸足を起点に上手く軸回転でスイングできている。引きつけてセンターから右方向の打撃ができるのか?という疑問は残るものの、引っ張って巻き込めた時の飛距離は圧巻のものになる。

(打撃のまとめ)

 かなり特殊なメカニズムの上に成り立っているので、いじってしまうとおかしくなってしまう恐れはあります。ただ言えるのは、やはり無駄な動きが多いということと、センターから右方向への意識も持たないと率は上がってゆかず、打てる球は限られてしまうだろうなということ。この辺と長打とバランスを、いかにとって行けるかが、これからの課題ではないのでしょうか。


(最後に)

 非常に危ういバランスの上に成り立っている打撃ではあるのですが、プロでも飛距離を売りにできる資質を持っており、その点では興味深い素材あるのは間違い有りません。特にわかりやすい一発屋であり、こういった選手を育てるのが上手いプロだけに、下手に条件を付けての社会人入りなどやめて、一かバチかでも条件を付けずにプロの話があれば挑んで欲しいと思う部分はあります。そういった意味では、今年一番のロマン砲ではないのでしょうか。


蔵の評価: (下位指名級)


(2021年 春季リーグ戦)