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三浦 瑞樹(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ








三浦 瑞樹(東北福祉大4年)投手 173/78 左/両 (盛岡大付属出身) 





 「丹念に集めて来る」





 盛岡大付属時代から甲子園で多くの試合で登板をし、東北福祉大に進んでからも下級生から公式戦で活躍してきた 三浦 瑞樹 。これまで何度も観てきていながら、じっくりと考察したことは一度もない。そこで今回は、一体どんなピッチングをしているのか、検証してみることにした。


(投球内容)

 ノーワインドアップから、かなり肘を下げた左のスリークォーター。リーグ戦では、39回1/3イニング連続無失点を記録するなど、通算防御率が1.33という安定感が売りの実戦派

ストレート ☆☆★ 2.5

 球速は、常時135ロ~140キロ台前半ぐらい。ドラフト指名される選手としては、左腕だとしても球威・球速はやや物足りません。1年生の時の大学代表平塚合宿に招集されたときに、平塚のガンで147キロを記録しました。しかしマイガンでは、88マイル(142キロ)ぐらいだったので、平塚のガンの表示の方が怪しかったのかなと。

 ただし、ボールを両サイドに投げ分けるコントロールは高く、実際の投球でも速球の割合が多いです。そういったコマンドの高さはあるのですが、球筋としては真ん中~高めのゾーンに多く、投げミスをすると怖いです。今年の大学選手権・共栄大でも、真ん中高めに甘く入った球を運ばれ被弾していました。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆★ 3.5

 右打者の外角に沈むチェンジアップが有効で、この球は右打者にも時々織り交ぜてきます。また左打者の外角には、スライダーを集めてきます。その他にも緩いカーブなどがあり、主にこの3つの変化球と真っ直ぐとのコンビネーションです。ただし元来は、それほど三振をバシバシ奪うタイプではないようで、コースに丹念に集めて打たせて取るのが身上ではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.3秒前後と遅いのは気になります。走者をしっかり観て投球ができる左投手ということもあり、素早く投げようというよりはフォームのバランスを重視しているのか? それでも、フィールディングやマウンドさばきなどは安定しています。コーナーに集めて、微妙なゾーンを粘っこく突いてきます。

(投球のまとめ)

 「コントロールの良い左腕は買い」という私の格言で言えば、彼は買いなのでしょう。しかし、ボールの球威や球速などは、プロのそれではありません。そのため、育成枠での指名というのも納得できるところがあります。制球力や変化球は良いので、あとは、いかに真っ直ぐにプロ入り後磨きがかかるかではないのでしょうか? あまり大きな上積みが望めそうなイメージは沸かないのですが、ソフトバンクの育成力に期待したいところです。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみます。ノーワインドアップから足をゆっくりと引き上げ、高さは並ぐらいも幾分二塁側に送り込むことでバランス良く立ちます。膝にも余裕があり、力みのない立ち方ができています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 比較的足を高い位置でピンと伸ばせているのですが、その後の前に身体を倒して来ることで、お尻はバッテリーライン上に落ち気味です。したがって身体を捻り出すスペースは充分とは言えず、カーブやフォークといった球種を投げるのには適しません。

 それでも前に大きくステップさせて着地までの時間を遅らせることができ、身体を捻り出す時間は稼げています。カーブやフォークといった球種は適さないものの、スライダー・チェンジアップなどで、曲がりの大きな変化球の習得は期待できそうです。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで身体の近くに抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。そのため、両サイドに投げ分ける制球力は安定しやすいです。しかし、足の甲の地面の捉えが浮いてしまい、浮き上がろうとする力を充分抑え込めていません。そのため、ボールは高めに集まりやすいのかと。それでも「球持ち」の良さや指先の感覚の良さで、制球で苦労することはなさそう

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としは充分ではないが、カーブを投げる頻度は少なく、フォークも観られない。そういった意味では、窮屈になる機会は少なく、肘への負担は少ないのでは?

 腕の送り出しを観ていても、それほど肩に負担が大きな投げ方には見えない。また力投派でもないので、消耗は激しくはないのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの地面の捉えは遅く、ボールの出どころも隠せている。そのため打者としては、見えないところからピュッと出てくる感覚に陥るのではないのだろうか。また腕も適度には振れていて空振りを誘いやすいところはあるが、前の足が突っ張ってブロックしてしまい重心が上手く移動できていない。したがって、打者の手元まで生きた球が行き難いのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題を残している。足の甲の地面への捉えが浮いてしまってボールが上吊りやすい欠点はあるが、故障のリスクは比較的低そうで、武器になる変化球の習得も望めないことはなさそう。良い部分と悪い部分は混在したフォームであるが、比較的打ち難いフォームの技巧派と言えるのではないのだろうか。


(最後に)

 今までドラフト候補として見たことがなかったのは、前にしっかり重心が移ってゆかず速球に魅力が感じられなかったからだろう。それでも両サイドに散らすコントロールがあり、打ち難さで球威・球速不足を補えている。あえて球速の部分は、プロ入り後改善できると考え、投球の基礎がしっかりしている投手獲得するというコンセプトを育成枠で実践しているのだろうか? そういった新たな試みで、ソフトバンクがどんな成果をあげるのかのか注視してみたい。ただし、個人的には、 を付けるほどの魅力までは感じられなかった。


(2021年 大学選手権)