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黒原 拓未(関西学院大4年)投手 173/77 左/左 (智弁和歌山出身) | |
4年春のシーズンでは、キャリアハイの圧倒的な内容でチームを全国大会に導いた 黒原 拓未 。しかしこの秋は順調さを欠いたことで、成績も下級生の頃に逆戻り。果たして、黒原 の本当の力はどこにあるのか考えてみた。 (投球内容) 黒原の登板を見ようと関西まで行ったのだが、電車の遅延で乗る飛行機が一本遅くなり、球場に着いた時には彼に代打が出されて降板していた。そのためこの秋は彼の投球を確認できないまま終わってしまっている。 その後、一部映像でこの秋のボールを確認。しかし、球速こそ春の大学選手権の時と変わらなかったが、真っすぐのキレや投球内容は、成績が示す通り、春のと比べるとかなり見劣って見えた。そのため、春の内容より上積みがあっとは到底言えないシーズンだったのではないのだろうか。 (成績から考える) そこで突出した成績を残した4年春の成績と、この秋の成績。そして、4年春の成績を除いた4年間の通算成績を比較しながら、彼の能力について考えてみる。 ちなみに、この秋の成績は、15回 15安 3四死 16三 防 2.40 1,被安打は投球回数の80%以下 △ 4年秋には投球回数と被安打数が同じと打ち込まれ、4年春を除いた4年間の通算成績では、85.4% と基準を満たすほどではないことがわかる。ちなみ圧倒的な内容を示した4年春は、46.8%だったことを考えると、いかに4年春のシーズンが突出していたのかわかる。 2,四死球は投球回数の1/3以下 △ 4年秋は丁寧に投げている感じで、四死球率が20%しかない。しかし、通算では44.1%とかなりアバウトなことがわかる。圧倒的な内容を示した4年春でさえ、35.1%であり基準を満たすほどではないことがわかる。最後のシーズンで制球力が改善したとみるか、元来はかなりアバウトな制球の持ち主と見るかは迷うところではある。 3,奪三振は1イニングあたり 0.8個以上 ○ 4年秋は、投球回数を上回る数の三振を取っていた。通算では、一応0.82個なので先発としての基準をなんとか満たすことができていた。また4年春の成績では、0.82個 だったので、それまでのシーズンとは同じペースだった。これも、最後のシーズンだけ奪三振率は高まっているが、三振を取れる術が磨かれていたかの判断は難しい。 4,防御率は1点台以内 △ 4年春の防御率は、0.70 と圧倒的な内容で最優秀防御率に。しかし、4年春のシーズンを除くと通算では 3.29 と平凡な数字になっている。ちなみにこの秋も、2.40 。ただし、上位指名候補が一度は4年間の間に達成しておきたい、防御率0点台の突出した成績は記録できている。 (成績からわかること) 故障の影響でリセットされたかもと思われていたラストシーズンでも、奪三振と四死球率 という部分では4年春以上の成績をマーク。しかし、防御率や被安打という意味では、完全にリセットされている感じの成績だった。まずプロで活躍するのであれば、4年春の状態に戻さないと厳しいというのは間違い無さそうだ。 (最後に) キャリア最高のシーズンで送った4年春の時の評価が、☆☆ (中位指名級) だった。この秋の一部の映像や残した成績を見る限りは、この評価を下げることはあっても引き上げる要素は見当たらない。したがってまずは、4年春の状態に戻すことから初めないと行けないだろうということ。春見たときは、ガンガンと攻めの投球でリリーフタイプの印象があり、プロでもまずは中継ぎで経験を積んでからといったことになるのではないのだろうか。4年春の攻められるぐらいの状態に戻っていれば、リリーフでは 40試合 防御率 2点台 の活躍も見込めるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2021年 秋季リーグ戦) |
黒原 拓未(関西学院大4年)投手 173/76 左/左 (智弁和歌山出身) | |
今年の全日本大学選手権において、個人的に最も見たかったのが、この 黒原 拓未 だった。豊作の大学左腕の中でも、彼がどのような位置づけになるのか気になっていたからだ。 (投球内容) この春は、8試合 5勝1敗 防御率 0.70(1位) と、関西学生リーグでMVPを獲得して全国大会に駒を進めてきた。 ストレート 常時140キロ~MAX147キロ ☆☆☆★ 3.5 どちらかというと、ストレートでガンガン押してくる力投派です。左腕でコンスタントに140キロ台~後半を投げ込めるボールの勢いや適度にあり、ドラフト指名が有力視されているだけのことはあります。ただし、全体的にボールが高めに抜けることが多く、立ち上がりを中心にコントロールがアバウトなところは気になります。 この春は、51回1/3イニングで24本と、被安打率は 46.8% と極めて優秀です。その一方で、四死球は18個で四死球率は 35.1% とややアバウトなことがわかります。それでも、2イニング目あたりからは、だいぶ落ち着いて投球できていましたが。 変化球 スライダー・カットボール・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 スライダーやカットボールなどでカウントを整え、チェンジアップ系の球やフォークのような落差のあるボールにも威力を感じます。51回1/3イニングで、三振は42個。1イニングあたり0.82個と、先発投手の基準である0.8個は上回っています。ただし、左腕であることや学生の奪三振率という意味では、そこまで突出したものではありません。 その他 クィックは、1.1秒前後とそれなり。牽制やフィールディングに関しては、ちょっとみた感じではよくわかりませんでした。「間」を上手く使った投球や、コースの微妙な出し入れをするような投球術は観られませんでした。 (投球のまとめ) 勢いのある真っ直ぐをガンガンストライクゾーンに投げ込みつつ、変化球も結構いろいろ織り交ぜてきます。どちらかというと、ゲームメイクする先発よりも、プロではリリーフ向きなのではないかと感じます。その辺、将来的にもどうなのか? フォームを分析して考えてみます。 (投球フォーム) ランナーがいなくても、セットポジション軸足足に体重を乗せることなく重心沈ませてきます。そのため、常にクィックようなフォームで投げ込んできます。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、お尻はバッテリーライン上に落ちがち。したがって身体をひねり出すスペースは充分には確保できず、カーブで緩急を付けたりフォークのような縦に鋭く落ちる球には適していません。 「着地」までの地面の捉えも平均的で、身体をひねり出す時間も並ぐらい。こうなると、武器になるほどの変化球を、今後も修得できず伸び悩む危険性があるかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで身体の近くにあるので、外に逃げようとする遠心力は抑え込めている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすい。しかし、足の甲での地面の捉えが浮いてしまっており、力を入れて投げると浮き上がろうする力を抑え込めずボールが上吊ってしまっている。 また「球持ち」もさほど良いという感じではなく、指先の感覚もどうだろうと疑問も残る。制球を司る動作には、課題を残すのではないのだろうか。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻の落としが甘い割に、フォークなどを使ってくることもあるので肘への負担は気になる材料。それ以上に、ボールを持っている方の肩は上がり、グラブを持っている方の肩がお大きく下がる送り出しになっている。こうなると、肩への負担も少なくは無さそう。 全体的に小さな身体をめい一杯使う力投派だけに、疲労も適度には溜めやすいのではないのだろうか。フォームとしては、身体のケアに充分に注意して頂きたい感じがする。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘っこさは感じられないが、ボールの出どころは適度に隠せている。そのため、けして打者にとって苦になるフほどのフォームではないものの、投げミスをしなければ痛手も喰らい難いのではないのだろうか。 腕は適度に振れて勢いがあるので、打者の空振りを誘いやすい。その一方で、ボールに充分にウエートを乗っけて投げられているかというと、まだまだ不十分だと言わざるえないであろう。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外はまだまだ課題を感じさせるフォームだった。身体への負担が大きなフォームであり、コントロールを司る動作も特に高めに抜けやすいのは気になる。また将来的には、武器になるほどの変化球を修得しピッチングの幅を広げて行けるかではないのでしょうか。フォームとしては、かなりリスキーな素材だといった感じがする。 (最後に) 左腕で適度に試合を作り、勢いで押せるという意味では、当然指名圏内に入ってくる投手だろう。しかし、コントロールがアバウトで、フォームにも課題が多く実戦的とは言えない。それだけリスキーな素材であり、少し割り引いて考えた方が良いかもしれない。個人的には、エネルギーを爆発させるリリーフでならば、プロでも即戦力になりうるかもといった気がするがが、上位候補なのかと言われれば、疑問の残る内容だった。イメージ的には、東 克樹(立命館大-DeNA1位)を、かなりリリーフ寄りにしたタイプではないかとみている。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2021年 大学選手権) |