20sp-9
池谷 蒼大(21歳・ヤマハ)投手 175/80 左/左 (静岡高出身) | |
昨秋の日本選手権で見た時は、テイクバックを小さくして投げていた 池谷 蒼大 。しかし、今年の都市対抗では、足を前に大きく上げて、身体に巻き付くようなフォームで投げ込むなど、かなり前年から変わっていた。これからも、日々フォームを変化させながら野球を続けてゆくのではないのだろうか。 (投球内容) 今年の都市対抗・日立製作所戦では、1イニングを打者3人相手に、三者連続三振で切り捨てた。 ストレート 130キロ台後半~143キロ ☆☆☆ 3.0 ストレート自体の球速は140キロ前後と、左腕と言えドラフト指名される左腕としては平均以下ぐらいなのかもしれない。球質もキレ型でタイミングが合うとスコーンと飛ばされる恐れがあるのだが、上記で記した変則フォームゆえに打者としてはタイミングが合わせずらい。その証に、東海予選で登板した17イニングでも被安打は8本(47.1%)と極めて低い。 球威・球速の無さも、ピュッと切れる球質であり、それを補うことができている。昨年は制球力がアバウトだった印象だが、都市対抗予選では3四死球(17.6%)と、かなり少なくなっていた。しかし続くNTT東日本戦では、2安打・2四死球と不安定内容を示し、好不調の波を少なくすることが求められる。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆ 3.0 静岡高校時代から、曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーションが中心でした。チェンジアップややカーブなども投げますが、それほど投球において大きなウェートは占めていません。17イニングで14奪三振であり、1イニングあたり0.82個と先発投手としては合格ラインですが、リリーフとしてはやや決め手不足のところがあります。 その他 クィックは1.3秒前後と遅いのは気になりますが、フィールディングの動きは良かったです。左投手特有の見極めの難しい牽制が入れられるようだと、クィックの遅さも補うことはできそうです。 (投球のまとめ) 都市対抗予選の成績を見る限り、足の上げ方を変えたフォームでいっそう打ち難くなったようです。さらに、四死球も少なくなっており、そういった投球ができれば抑えられるといった感じはします。しかし、都市対抗2戦目のNTT東日本戦の投球を見ると、やはり甘く入るとスコーンと飛ばされたり、本当の制球力があるのかには不安が残りました。 (投球フォーム) 今度はフォームの観点から、何処が打ち難いのか考えてみましょう。ライアン小川泰弘(ヤクルト)のように足を高く前方に引き上げ、それでいてテイクバックは小さめにとり、身体に巻き付くような感じで投げ込んできます。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を高い位置ではピンと伸ばせているのだが、かなり二塁側に送り込むので、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としには甘さを残します。それでもカーブやフォークが投げられないというほど、窮屈ではないと考えられます。 「着地」までの地面の捉えはそれなりで、身体を捻り出す時間はある程度確保できています。武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙ですが、いろいろな変化球でピッチングの幅を広げてゆくことは可能ではないかと考えられます。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで身体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げわけはつけやすい。しかし、足の甲への地面への押しつけは浅く、浮き上がろうとする力は抑え込めていない。したがって、力を入れて投げるとボールが抜けてしまうこともあるのかもしれない。それでも「球持ち」自体は良いので、ある程度手元まで力を伝えられるので、制球に大きな狂いはなくなってきている。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としには甘さがあるが、カーブを投げる頻度は少なく窮屈になることも少ないだろう。腕の送り出しにも無理はあまり感じられなくなり、思ったよりも肩への負担も減りつつあるのかもしれない。結構腕を強く振ってくる力投派なので、疲労は溜めやすいかもしれないが。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りはそれなりな上に、足を高く引き上げて曲げ伸ばしたり、テイクバックを小さめにとったりと、あらゆる動作を混ぜて相手のタイミングを外そうとしてくる。それでいて球の出どころも隠せており、ボールも想像以上にキレて来る。甘く入ると球威・球速の無さが怖い部分はあるが、甘く入らなければ痛手は喰らい難いはず。 腕は強く振られており、勢いがあるので空振りを誘いやすい。「球持ち」も悪くないが、充分に体重を乗せてから投げられているかは微妙な気はする。この辺の「体重移動」がもう少しシッカリできると、打者の手元までキレではなく球威を兼ね備えた球も投げられるようになるかもしれない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、もう少し「体重移動」が良くなると、球威などが変わってきてストレートのボリュームの無さを解消できるのではないのだろうか。足の甲の押し付けが浅いので、上手く制御できなくなるとコントロールを乱しやすい。故障のリスクは変則上に思わぬところに負担がかかる恐れはあるものの、見た感じでは平均的ぐらいなのでは? 将来的に武器になるような変化球を習得できるかは微妙だが、多彩な球種で的を絞らせない投球は期待できそうだ。 (最後に) 打ち難さを追求したフォームに磨きがかかり、さらにその度を増した印象がある。その一方で、ボールの勢い・球速はあまり変わっていなかったが、コントロールの粗さは薄まった。こういったタイプはハマるかハマらないかだと思うが、創意工夫の方向性が確かで、そういったものを嗅ぎ分けるセンスも高いのではないかと。派手な活躍が期待できるかは疑問だが、しぶとく進化を続けながら生き残って行けるのではないのだろうか。まだ球威の無さや好不調の波は感じられるものの、そういったものを払拭できるようになると、プロでも貴重な活躍ができるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2020年度 都市対抗) |
池谷 蒼大(20歳・ヤマハ)投手 174/77 左/左 (静岡高出身) | |
都市対抗の時にはMAXで137キロしか記録できなかった 池谷 蒼大 。球速が厳しめな東京ドームに比べ、大阪ドームは球速が出やすい。果たして、球速の違いは単なるスピードガンの違いだからなのだろうか? (投球内容) ノーワインドアップから、小さめなテイクバックで投げ込んでくるサウスポー。気持ちを全面に出した、攻撃的なピッチングスタイルに特徴がある。 ストレート 常時140キロ前後~MAX143キロ ☆☆☆ 3.0 日本選手権の時の球速は、リリーフで常時140キロ前後から最速で143キロ。プロの左腕としてもやや物足りないぐらいの球威・球速ではあるが、テイクバックが小さくボール見難い上に、キレがあってピュッと来る感じで補えている。実際19年度の公式戦では、17イニングで18奪三振と投球回数を超える奪三振が奪えている。映像を見る限りは、球速の物足りなさは感じられなかった。 その一方でコントロールは粗く、とりあえずストライクゾーンの枠の中に投げ込むといった感じに。17イニングで7四死球ですから、四死球率は41.1%。アバウトでも四死球は、40%以内には抑えたい。プロを目指すのであれば、もうワンランク上の制球力は身に付けておきたい。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆★ 2.5 静岡高校時代から、曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーションでした。チェンジアップ系の球もありますが、精度・キレがもう一つで信頼できるといったレベルでないことはあまり変わりません。以前はカーブも観られましたが、今回確認した投球では観られませんでした。以前はスライダーも甘く入る時があって結構痛打されていたのですが、昨年は17イニングで12安打と、被安打率は70.6%と低く、そういった球は減ってきた気がします。特に変化球が、低めに集まることが多くなった気がします。 (投球のまとめ) 高校時代などは、マウンドさばきは良かったものの、ボールの勢いやまとまりに物足りなさが残る内容だった。しかしボールに勢いが出てきた上に、以前よりはコントロールの粗さが気にならないレベルまで来ている。社会人の2年間で、プロを意識できるところまで来ているのは確か。再び解禁を迎える今年、あと一歩の総合力を引き上げられるのか注目したい。そのためには何が足りないのか? フォームを分析して考えてみる。 (投球フォーム) 足を引き上げる勢いはそれほどでもないのだが、高い位置まで引き上げてきます。軸足一本で立った時に膝に余裕があり、力みはなく立てています。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を、かなり二塁側に送り込む。そのためお尻はバッテリーライン上に残ってしまい、身体を捻り出すスペースは充分には確保できない。したがって、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さない投げ方ではある。 前には軽くステップすることで、地面を捉えるまでの「間」は平均ぐらい。身体を捻り出す時間は並なので、変化球のキレや曲がりは中途半端にはなりやすい。球速のある、小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで身体の近くで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすいように見える。それでもかなりの力投派なので、軸はブレてしまっている恐れはあるが。 足の甲の地面の捉えが浅く短いので、浮き上がろうとする力を充分抑え込めていない。そのため力を入れて投げると、どうしてもボールは上吊りやすいのではないのだろうか。球持ち自体は、けして悪くは無さそうに見える。しかし投球を観ている限りは、あまり指先の感覚に優れているようには見えない。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としは充分ではないものの、カーブは滅多に投げないし、フォークのような捻り出して投げる球種は観られない。すなわち、窮屈になる機会は少なく肘への負担は少ないのではないかと。 多少ボールを持っている肩は上がり、グラブを抱えている肩は下がる形にはなっている。しかし極端ではなく、送り出しに違和感は感じられない。そういった意味では、肩への負担も大きくはないように見える。しいて言えば力投派なので、登板過多になった時に消耗が激しいのではないかという部分。そこからバランスを崩して、故障にという不安があるぐらいだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均的だが、テイクバックが小さめでボールの出どころも隠せている。そのためボールが見えてから、一瞬でミットに収まっている感覚に打者は陥っているのではないのだろうか。また球質もキレがあり、打者としては差し込まれやすい。 腕は鋭く振れているので、勢いがあり空振りは誘いやすい。足の甲の地面への捉えが浅いので、下半身のエネルギーをボールに伝え切れていない。どうしてもこうなると球威のある重い球は投げられず、上半身や腕の振りの鋭さでキレを生み出してゆくしかなくなる。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、下半身のエネルギー伝達ができない「体重移動」に課題を残す。「開き」はよく抑えられており、「着地」「球持ち」は平均的だろうか。 故障のリスクや将来的に投球の幅を広げられるかは微妙なラインで、制球を司る動作に課題を残している。実戦での投球内容次第ではあるが、打ち難さはあるものの、技術的に高いとは言えない。 (最後に) マウンドさばきの良さを生かした、リリーフタイプとしてどうだろうか?といったタイプ。果たして勢いとキレで、プロの一軍打者を抑えこめるほどかは微妙な印象は受けた。しかし今シーズンの成長次第では、指名圏内に入ってきても不思議ではないレベルまでは来ている。その成長ぶりを、注意深く見守ってゆきたい。 (2019年 日本選手権) |