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中川 拓真(オリックス)捕手のルーキー回顧へ






中川 拓真(豊橋中央3年)捕手 177/86 右/右 





「攻守にバランスは取れている」 





 夏の愛知大会・小坂井戦ではタイミングが合わず、高校からプロに入るのには脆いのかな?という印象を受けていた 中川 拓真 。しかしその後、別の試合もチェックしていると、なかなか攻守にバランスの取れた捕手だとわかってきた。


(ディフェンス面)

 投手にジェスチャーで、細かく指示を送ります。身体を小さくかがめ、的を大きく見せようとする配慮が感じられる構え方。ミットを投手にシッカリ示し、地面に着けるような癖もありません。キャッチングの押し込みなどは平均的ですが、ワンバウンドするような球にも下からミットを出すことができます。投手に軽く返球するように、叱咤激励して投手をガンガン引っ張ってゆくとかそういったタイプというよりは、細かく考察して指示を出すタイプなのでしょう。捕手としては、結構動ける選手なので逆に投手としては少し投げづらいかなと思える部分も。バント処理なども非常に素早く前にチャージして来るなど、意欲が感じられるプレーヤーです。

 この試合では確認できなかったのですが、イニング間送球では1.8秒前後を記録するなど、地肩・球筋には光るものがあります。肩以外の部分ではプロに入るとしては平均的だと思いますが、スローイングに関しては充分にプロに混ぜても勝負して行けるのではないのでしょうか。





(打撃内容)

 小坂井戦ではタイミングが合ってませんでしたが、豊川戦では4安打を放ちライトスタンドへの本塁打も魅せてくれました。打球も強烈でパワフルな打撃をする選手といった感じがします。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとそれなりなのですが、構えた時にどこも動かさなで立っているので、少し硬く感じさせる構えです。それでも、打席では強打者の雰囲気がプンプンと漂ってきます。

<仕掛け> 早すぎ

 投手の重心が下る前に足を上げてしまうときがあり、投手によっては投げるタイミングを変えられて崩されてしまうときがあります。早めに動きすぎて早く足を降ろしてしまい、下半身がロックされた形で手打ちで打たされてしまう危険性を感じます。根本的には、対応力を重視したスタイルなのですが。

<足の運び> ☆☆☆☆ 4.0

 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は充分あり、、速球でも変化球でのスピードの変化には対応しやすい打ち方。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプなのでしょう。

 踏み込んだ前の足はしっかり止まっており、早く地面を捉え過ぎた時でもタイミングを取り直して打ちつことができます。また内角のスペースが窮屈だと判断すると、瞬時に軸足を下げてスペースを確保するなど、とっさの反応にも優れています。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0 

 打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、力み無くボールを呼び込めている。バットが出がスムーズに出てくるタイプではないものの、内角の球にも対しても肘をたたんで引っ張ることも厭わない。外角の球に対しては、インパクトまで少し遠回りに出てくるのでロスは感じられる。それでもバットのしなりは活かせているので、大きな打球を飛ばすことができている。

 バットの先端であるヘッドも下がっておらず、広い面でボールを捉えている。そのため、フェアゾーンにもボールが飛びやすいのだろう。まだまだ腕っぷしの強さ・金属バットの反発力に頼った打ち方ではあるが、パワフルな打者なのは間違いない。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動は平均的。それでも身体の開きは我慢できており、軸足の内モモにも強さが感じられ強烈な打球を生み出す原動力になっている。足元が窮屈で軸足を後ろにずらしたり、打ち終わったあと前に傾いていたりと、打撃の波は結構ある、あるいは打てる投手と打てないタイプがハッキリしているのかもしれない。

(打撃のまとめ)

 タイミングのとり方とスイング軌道・足元の安定感など、対応力に課題があるように感じます。木製バットへの対応やプロのスピードへの順応には、少し時間がかかるかもしれません。当たれば確かに大きいのですが、確実性という意味ではやや難があり、最初の何年かはディフェンスに力を注いている間は率も上がって来なく、たまに一発が出るタイプになるかもしれません。


(最後に)

 捉えた時の打球の強烈さや飛距離・素晴らしい強肩の持ち主というスペックを考えれば、やはりプロの素材なのでしょう。少々時間がかかりそうな素材ですが、本会議で指名されたことは納得はできます。確かに飛距離はいいのですが、脚力がある選手ではないので、やはり捕手として勝負した方が良さそうな選手です。一歩一歩階段を上がってゆき、将来正捕手争いを演じて欲しいと思います。


蔵の評価: (下位指名級)


(2020年夏 愛知大会)