仲三河　優太（大阪桐蔭３年）右翼　１８０／９４　右／左

「雰囲気のある打者」

　旧チームから中軸を任されるなど、将来を嘱望されてきた　仲三河　優太　。しかし最後の夏は、足の指を怪我するなど、甲子園での代打一打席で終わり充分なアピールができないまま終わってしまった。改めて、この選手の能力を考えてみたい。

走塁面：☆★　1.5

　一塁までの塁間は、左打席から４．６秒ぐらいと相当遅い。計測ときがたまたまだったのかと思ったが、別の機会でも４．６～４．７秒ぐらいなので、走力はかなり遅いとみて良さそうだ。

守備面：☆☆☆★　3.5

　しかし右翼手としては、落下点までの打球の入りに狂いはなく目測がしっかりできている。どうしてもこの走力の無さから、前へのチャージが重苦しかったりするが、球際での守備も悪く無さそうだった。投手をやっていた選手だけに、地肩もプロに混ぜても上位クラス。あとは、送球のコントロールが粗いので、しっかり守備のいるところにコントロールすることを徹底させたい。

　プロの右翼手としては、動きが重く守備範囲が狭いのはどうだろうか？　それでもキャッチング・肩などは良いので、左翼にしたらかなりレベルの高い選手となりそう。チーム事情にもよるが、右翼よりも左翼で勝負できたらアドバンテージが高そうだ。走力に関してはかなり重そうなので、その点で塁が詰まる危険性は感じられる。

（打撃内容）

　基本的に引っ張った時に長打を飛ばす選手であり、広角に打つというよりも引っ張る打撃を好む傾向が強いように見える。むしろ夏の甲子園・交流試合では、きっちりレフト方向にはじき返していたのは成長の証だったのかもしれない。

＜構え＞　☆☆☆☆　4.0

　前の足を引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとよく、打席でも非常に雰囲気を持った打者だという印象。昨秋の頃はもっと足を引いて構えており、全体のバランスがイマイチだったのですが、その辺だいぶ良くなってきていました。

＜仕掛け＞　平均的

　昨秋までは投手の重心が下がり始める頃には動き出す、「早めの仕掛け」を採用。しかしこの夏観ていると、投手の重心が沈み込んだあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」に変わっていました。始動を遅らせるぶん、足の動きを小さくして対応するように変わっています。この始動は、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く観られる仕掛けです。

＜足の運び＞　☆☆☆★　3.5

　足を軽く上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動～着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。踏み込んだ前の足もしっかりブレずに止まっていて、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつけ、レフト方向にもきっちり打ち返すことができていました。

　昨秋までは、引き上げた足が早く地面を捉えてしまっていて、下半身がロックされて手打ちになってしまうようなスイングが観られました。彼の場合は、返って始動を少し遅らせたことが良い方向に出たのではないかと考えられます。ただし一つ気になるのは、上半身が柔らかく使えるのに比べると、膝が固いのか？少し下半身の柔軟性が悪いように感じるのは気のせいでしょうか？

＜リストワーク＞　☆☆☆☆　4.0

　打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、力みなくボールを呼び込めるところは良いところ。バットの振り出しは、外角の球をさばくのにロスは感じられず、インパクトの際にもバットの先端であるヘッドが下がらずに広い面でボールを捉えられている。それだけフェアゾーンに飛びやすい反面、打球には角度がつき難いのかなと思える部分も。

　内角の球にも対しても、肘をうまくたたんでボールをさばけており、元来腕がしっかり伸びるゾーンよりも、肘をたたんで引っ張る打撃の方が力の入る選手なのではないのだろうか（右投げ左打ちによく観られるように）。それほどスイングの弧が大きいとか、フォロースルーを使って打球を運ぶというタイプではないので、うまく引っ張って巻き込んだ時にホームランが出るタイプではないのだろうか。

＜軸＞　☆☆☆☆　4.0

　目線の上下動は小さく、錯覚を起こし難いのは良いところ。身体の開きも我慢でき、軸足の内モモの筋肉にも強さが感じられ、強烈な打球を生み出す原動力になっている。

（打撃のまとめ）

　この一年で、かなり打撃は彼に合った形へと進化を遂げていたのではないかと思われる。またヘッドスピードもかなり上がっており、緩かった身体に鋭さが出てきた印象。それだけに、最後の夏は万全の状態の彼を観たかったという思いが強い。技術的にもしっかりしたものを持っており、こと打つことに関しては、間違いなくドラフト級の素材ではないかと評価したい。

（最後に）

　走力の無さと下半身の硬さが気になるところではあるが、強肩ぶりと上半身を中心とした打力には目を見張るものがあります。特にポジションの多いパ・リーグからの指名ということで、彼が打撃で存在感を示せればチャンスは広がる可能性があります。７位での指名ということを考えれば、アリの指名ではないかと思いました。秋からの成長の跡も感じられ、☆　を付けてみたいと思わせてくれる選手に成長したと言えるでしょう。

蔵の評価：☆　（下位指名級）

（２０２０年夏　甲子園交流戦）