20ky-21





笹川 吉康(ソフトバンク)外野手のルーキー回顧へ







笹川 吉康(横浜商業3年)中堅 193/83 左/左 





 「志望届は出すのだろうか?」




 今年の神奈川を代表する野手でもある 笹川 吉康 。しかしドラフト候補を対象として行われる、合同練習会には参加しないことが決定的となった。果たして彼は、プロ志望届を提出するのだろうか?


走塁面:☆☆★ 2.5

 一塁までの塁間は、左打席から4.25秒弱。ドラフト指名される左打者の平均は4.1秒ぐらいなので、それよりはかなり劣る。193センチの大型選手なので、どうしても加速するまで時間がかかるのだ。二塁打や三塁打のような、長打を放つと大きなストライドで、ベースランニングは結構速いのだが・・・・。そのため、積極的に足を売りにするというほどではないのだろう。

守備面:☆☆☆ 3.0

 守備に関しては、打球への反応や最初の一歩目は悪くなかった。また球際でもスライディングして捕球したりと、守備範囲が広いいとは思わないものの、下手だということはないだろう。プロでセンターを任されるほどかは微妙だが、レフトとしてならばかなり動ける部類。元々投手で肩も悪くないので、ライトという選択肢もあるかもしれない。

193センチの大型の割には、かなり動ける身体能力はある。ただし守備でも走力でも、プロで売りにするというほどの身体能力があるのかは疑問が残る。しかし相手の隙きを突く積極的な走塁や、かなり考えてプレーをしている節はあり、その点は買いたい。





(打撃内容)

 フルスイングがモットーの選手で、右に左にも鋭い打球を飛ばせます。ただしボールに角度をつけて飛ばすというタイプではないので、野手の間を抜けてゆく、二塁打・三塁打などが多い類の強打者ではないのだろうか。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 前の足を引いて構え、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしても、平均的ではないのでしょうか。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が沈んでいる途中から~底のあたりで動き出す、「早め」~「平均的」な仕掛けを採用している。対応力を重視したアベレージヒッターか中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多く見られる仕掛けです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を上げて回し込み、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベースから離れ方向に踏み出すように、内角を強く意識したスタイルです。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にはブレずに止まっています。アウトステップでも長い手足を活かし、甘めの外角球や低めの球にも届いてしまいます。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 あらかじめ捕手方向にバットを引いているため、打撃の準備である「トップ」を作るのは早めに作れています。バットの振り出しにも大きなロスは感じられず、インパクトの際にもバットの先端であるヘッドも下がらずに振り抜けています。昨年はインサイドアウトのスイング傾向が強かったのですが、そのへんはかなりオーソドックスなものに。またヘッドの下がりも、かなり修正されているように感じられました。

 ボールを捉えてからも、大きな弧を描いて振り抜いてきます。広い面でボールを捉えるので、打ち損じは少ないものの打球に角度が生まれ難いように感じました。

<軸> ☆☆☆ 3.0

 結構自分からボールを追いかけてしまうところがあるのか? 目線の上下動はそれなりに動いています。それでも身体の開きは我慢でき、軸足の形としては大きくは崩れていません。もう少し内モモの筋肉に強さが出てくると、緩さみたいなものも薄れてくるのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 昨年も書きましたが、この選手の良さは フルスインガーの割に受け止める下半身がブレないところにあります。そして良い打者に共通している形である、ギリギリまでバットを引いた形をキープしスイングできていること。その2つの基本が抑えられている上で、肉体的ポテンシャルにも恵まれているというスケールの大きさを感じさせるのです。


(最後に)

 守備も走塁も、アピールするほどのものがあるかは微妙だと言えます。また自慢の強打も、けして打球が上がるタイプの強打者ではないということ。このことを考えると、そんなに高い順位での指名は考え難いのではないかと。恐らく評価的には、下位指名~育成あたりになるのではないかと思います。それでも、志望届を出すのか?という判断になるのではと。

 しかしこの選手、非常に考えてプレーをするということができています。意識づけは高いだけに、プロの世界ではグングン伸びてゆくのではないかと。大会が終わった頃にはプロ志望だと訊いていたが、果たして志望届は提出されるのだろうか?


蔵の評価: (下位指名級)


(2020年夏 神奈川大会) 








笹川 吉康(横浜商業2年)投手&中堅手 192/81 左/左 
 




 「高いレベルでみてみたい」





 192/81 という恵まれた体格の選手で、長い手足を生かしてフルスイングしてくる強打者。身体能力も高く、高校通算でも30本塁打近い数をすでに放っている。外野手というだけでなく、長身左腕としても、強豪校相手に好投するなど一定のレベルには達している。しかしその将来性は、断然野手なのではないのだろうか。


(守備・走塁面)

 一塁までの到達タイムは計測できなかったが、二塁までのタイムは8.2秒を切るような俊足。大型でも緩慢さはなく、ベースランニングも速い。盗塁をバシバシ決められるかは別にしても、動ける身体能力があるのは間違いないだろう。

 中堅手としても、打球への反応も悪くなく最初の一歩目は鋭かった。そのへんは、投手をやっている時のフィールディングを観ていても感じるものはある。そのため、旧チームから中堅を任されるように守備範囲も広い。大型左腕としても130キロ台のボールを投げられる投手で、地肩も悪くないはずだ。

 190センチの体型でも、動きの良さが目を引く。また投手としても、結構多彩な変化球も操る器用さも併せ持つ。性格的にも積極性が感じられ、打撃でのフルスイングにもそれが現れている。守備もドラフト候補として平均レベルぐらいありそうだし、走力も 中の上 ぐらいはある素材ではないのだろうか。何よりプレーに、集中力を感じさせる「鋭さ」がある。





(打撃内容)

 長い手足を生かして、それでいて非常に大きな弧を描くスイングで思っきり振って来る。まだまだ線も細く荒削りだが、素材としての魅力に溢れている。

<構え> ☆☆☆★ 3.5

 前足を引いた左オープンスタンスで、グリップを高めに添え懐を大きく空けてボールを呼び込みます。腰の据わり具合・全体のバランスとしては並ぐらいだが、両眼ではしっかり前を見据えられている。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈みきったところで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の長打力や確実性を備えた、中距離ヒッターやポイントゲッターに観られる仕掛けです。大型ですが、スラッガーというよりは中距離打者のイメージです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を上げて回し込み、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地まで「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応できる。またアウトステップするように、内角への意識が強いタイプ。そのため打球も、引っ張ることが多い。

 アウトステップも踏み込んだ前の足がしっかり止まるので、甘めの外角球や高めの球ならば対応できる。腕が長いのもあり、外角低めでも届いてしまうことがある。素晴らしいのは、レフト方向にもキレイに流すというより強く打ち返すスイングができている点にある。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 あらかじめ「トップ」に近い位置にグリップを添えているので、速い球に立ち遅れる心配はない。その分リストワークに遊びがないので、柔軟性に欠ける部分は出てしまう。彼の一番素晴らしいのは、ボールをギリギリ引きつける形をキープできており、良い打者に共通して観られる、バットを引いた形を長く維持できる点は非凡だと言えよう。

 スイング軌道は、基本的に上から下に振り下ろすインサイドアウトのスイング軌道。そのため内角寄りの球をさばくのにはロス無くさばけるが、外角の球を叩くにはあまりバットのしなりを活かせるスイングではない。またインパクトの際にバットの先端であるヘッドが下り気味なので、打ち損じてファールになったりフライが上がったりと確実性は高くはない。それでもインパクト後は、非常に大きなスイングをして、強烈なフルスイングで振り抜いてくる。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げは大きくはなく、目線の上下動は少なめ。身体の開きも我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びてスイングできている。これだけバットを振れても、下半身が負けないのは素晴らしいところ。

(打撃のまとめ)

 ちょっとヘッドが下り気味で、打ち損じが多いのが残念。しかしフルスインガーでありながら、下半身がしっかり止まって上半身の強さに負けていないところが素晴らしい。そして何より、ボールをギリギリまで引きつけて叩けるのは、非凡な可能性を感じさせる。


(最後に)

 現状はフルスイングをしてくる強打者だが、さほど打球が上がるというよりも野手の間を強烈に抜けてゆく中距離ヒッターの印象が強い。身体能力は高くても、走・守で図抜けているわけではない左の強打者。それだけに一つ間違うと、特徴なく埋もれてしまう危険性も捨てきれない。素材として魅力があるので、下位~育成あたりで大化けを期待してという球団は出てくるかもしれないが、あまり最終学年でアピールできないのであれば、強豪や名門の大学・社会人に混ぜてみて様子を観てからという判断になってしまうかもしれない。しかし今年の神奈川の左打者の中では、屈指のロマン溢れる素材ではないのだろうか。


(2019年夏 神奈川大会)