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高田 琢登(静岡商3年)投手のルーキー回顧へ







 高田 琢登(静岡商3年)投手 177/77 左/左 





「未来像は描きやすい」 





 高校生ながらピッチングをしっかりできる投手で、完成度の高い 高田 琢登 。あとは、プロで戦うだけの体力と筋力を身につけることができればといった段階なので、将来像を描きやすい投手である。その一方で、大きく今後化けるとかそういった凄みは感じられなかった。


(投球内容)

 安定感のある投球とは裏腹に、結構上下動が激しいフォームに見えました。それでも先発タイプの、正統派のサウスポーといった感じがします。

ストレート 常時130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0

 打者を圧倒するような凄みのあるボールを投げ込むわけではないが、適度な勢いのある球を内外角に集めることができている。そういったコマンドの高さを持っており、四死球で自滅するような危うさは観られない。

変化球 スライダー カーブ・チェンジアップ ☆☆☆☆ 4.0

 むしろ関心したのは、一つ一つの変化球の曲がりが良いことに驚かされる。ブレーキの効いたカーブが投げられるだけでなく、スライダーも曲がりながら鋭く沈むので空振りが誘える。また右打者の外角のチェンジアップにも落差があり、この球でも空振りを誘える。そういったカウントをしっかり変化球で取れる、追い込むと三振を奪えるという変化球があることは大きい。

その他

 クィックは1.05秒前後と基準以上で、フィールディングも落ち着いてボールを処理することができていた。牽制に関しても、まずまずの鋭さ。マウンドさばきも良く、U-15の日本代表投手だったらしく洗練されている。

(投球のまとめ)

 今後の伸び代がどの程度の残されているのかといった不安は残るものの、プロのトレーニングで肉付けすれば、近い将来ローテーション投手としてやって行ける投手ではないかという、イメージは描きやすい。何より左腕でありながら、制球力・変化球に良さがあり、今年の高校生左腕でも最も安心して指名できる投手ではないのだろうか。


(投球フォーム)

 今度はフォームの観点から、今後の課題と可能性について考えてみたい。ノーワインドアップから、比較的勢いよく高く足を引き上げてきます。軸足の膝に余裕は感じませんが、全体的にはYの字になりバランス良く立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 少し前に屈むようにして重心を落としてくるので、お尻の落としはバッテリーライン上に残りがち。そのためカーブやフォークなどを投げられないことはないと思いますが、甘さが残り無理は感じます。

 また「着地」までの地面の捉えも並ぐらいであり、身体を捻り出す時間が充分というほどではありません。こういった投手は、スライダーやチェンジアップ・それに高速で小さく変化するボールで投球を組み立ててゆくことになると思いますが、すでにそういったスタイルになっています。ただしこのフォームでも、スライダーやチェンジアップの変化・精度には優れています。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に最後まで抱えられ、外に逃げようとする遠心力は内に抑え込めています。そのため、両サイドへの投げわけは安定しやすいと考えられ、実際の投球でもそういった感じです。

 足の甲での地面の捉えは少し浅く、力を入れて投げるとボールが高めに浮きやすいのかもしれません。低めに集めるというよりも、速球は真ん中~高めに、変化球は低めのボールゾーンにといった球筋になります。「球持ち」はそれなりで、指先の感覚は悪くないので制球を乱して自滅するという荒っぽさはありません。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としがバッテリーライン上に残りがちで、カーブやフォークを投げようとすると窮屈になりがち。それでもカーブの頻度も多くはないですし、フォークも特に観られないので悲観する必要は無さそう。

 ボールを持っている方の肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がって投げるなど、腕の送り出しには肩に負担がかかっているように見えます。それでも力投派といったことはないので、疲労は溜め難いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的ですが、ボールの出どころはある程度隠せています。そのため打者としては、ピュッとワンテンポ差し込まれる感覚に陥るかもしれません。

 腕はしっかり振れて勢いがあるので、空振りは誘いやすいのでは? ボールにも適度に体重を乗せてリリースできているので、投げ終わったあとは、地面を強く蹴り上げることができています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に大きな欠点は見当たりません。コントロールを司る動作は比較的良いのですが、少々肩に負担のかかるフォームなのではないかと。将来的に決め手になる球を習得できるだろうか?という不安がありそうなものの、すでにスライダーやチェンジアップのキレは良いのでその辺もあまり気にしなくて良さそうだ。上下動の激しいフォームなので、安易にいじるのはバランスが損なわれそうで怖いなといった印象を受けた。


(最後に)

 ある程度形ができている上に、投手としてのセンスも兼ね備えているので、比較的短期間で一軍の戦力になっても不思議ではありません。ストレートに驚くべきものがないので、この辺がプロ入り後どう変わるか将来像が決まってきそう。ヤクルトの 寺島 成輝(履正社)あたりが、意外に苦労しているのは気になりますが。

 それでも変化球の精度・キレは非常に良いのが特徴だけに、面白い存在にはなりそうです。ドラフトでは3位前後になると思いますが、左腕であることを考えると2位~3位ぐらいの間には指名される可能性が高いのではとみています。粗っぽい大学・社会人投手をとるよりは、結果的に早くモノになるかもしれませんね。


蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級)


(2020年夏 静岡大会)










高田 琢登(静岡商2年)投手 177/72 左/左 
 




 「センバツに来て欲しかった」





 2年秋には東海大会まで進出したが、惜しくも敗退してセンバツへのキップを逃した 高田 琢登 。もし甲子園に来ていたら、大会でも話題のサウスポーになっていたであろう存在だった。


(投球内容)

 中背の体格で、非常にバランスの取れたフォームから投げ込んでくる。11月に行われたオータムフレッシュリーグでは、早稲田大戦で大学生相手に好投して一躍注目された。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX142キロ ☆☆☆★ 3.5

 球速は常時140キロ前後と驚くほどではないが、適度なキレと勢いがあり悪くない。またそのボールを、打者の外角にしっかり集めることができている。ストレートのコマンドがしっかりしているということは、非常に大きな強味となる。力を入れて投げれば140キロ台中盤ぐらいまで投げられるキャパはあると思うが、今は少しコントロール重視で投げているのかもしれない。

変化球 スライダー・ちんぇんじアップなど ☆☆☆★ 3.5

 スライダーの曲がりや精度は平凡ではあるが、この球でカウントを整えて来る。さらに追い込むとチェンジアップ系の球が低めに決まり、この球のキレや精度が高く決め球として機能していた。

その他

 クィックは、1.00~1.05秒 ぐらいと素早く投げ込んでくる。牽制もまずずうまく、投球以外の技術・センスも悪くない。中学時代はU-15の日本代表として、全米遠征に参加するなど早くからその才能は注目されてきた。

(投球のまとめ)

 凄みのあるボールを投げ込むほどではないが、一定のレベルのストレートと基準以上のコントロールや変化球のキレを誇っている。そういった総合力の高さは、全国でもトップクラスの左腕だと実感する。問題は、この冬の間にパワーアップを図れるかどうか? それができていれば、高校からのプロ入りも現実味を帯びてくるだろう。逆にあまり変わらないようだと、有力大学などに進むことになるかもしれない。





(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 軸足一本で立ったあとに、少し前に倒れるような感じで重心を落としてきます。そのため、お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としはバッテリーライン上に落ちがち。したがってカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球には適さない投げ方です。

 しかし「着地」までの粘りは作れており、身体を捻り出す時間はある程度確保。武器になるほどの曲がりの大きな変化球を習得できるかは微妙ですが、キレの良い変化球は期待できそうです。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは抱えられているので、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。最後後ろにグラブが行ってしまうのは多少気になるものの、軸のブレが少なく両サイドへの投げ分けは安定しています。

 足の甲でも地面をしっかり捉えているので、浮き上がろうとする力も抑えることができています。「球持ち」は平均的ですが、ボールが高めに抜けることは少ないと言えます。投げ終わったあとのバランスも良いですし、コントロールは安定しやすいフォームです。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻は落とせていませんが、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種はほとんど使って来きません。したがって窮屈になり難く、肘への負担も少ないと考えられます。

 しかしボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている方の肩は下がり気味なので、多少肩への負担は感じられます。しかし力投派ではないので、それほど疲労は溜めやすいタイプでは無さそうです。しっかりケアすれば、動作の割には故障に繋がり難いのかもしれません。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れている上に、ボールの出どころもある程度隠せています。そのため苦になるほどではないと思いますが、けして合わせやすいフォームでもありません。

 腕はしっかり投げ終わったあと身体に絡んで来るなど勢いがあり、空振りを誘いやすいです。ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできており、投げ終わったあと地面を強く蹴り上げています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に悪い部分は見当たりません。ただし「開き」や「球持ち」は並なので、もう少し動作が粘れるようになるとさらに厄介になります。

 故障のリスクが多少高いのは気になりますが、コントロールを司る動作には優れ、キレの良い変化球を投げられる下地はあります。速球だけでなく、変化球でも一定レベルの水準に行けそうです。


(最後に)

 総合力とセンスに優れたサウスポーという感じで、凄みが感じられるほどではありません。このへんが一冬越えて変わってくるようだと、一気にドラフト指名も現実味を帯びてきそうです。東海地区屈指のサウスポーから、全国屈指のサウスポーに。その真価が、このオフの過ごし方で問われことになりそうです。


(2019年秋 交流戦)