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田上 奏大(ソフトバンク)投手のルーキー回顧へ







田上 奏大(履正社3年)投手 185/85 右/左 
 




 「投球の映像すらない・・・」





 田上 奏大 が、投球をしている映像すらない。それもそのはずで、この選手公式戦で登板したことがなく、彼の投球を見るには練習試合で確認するしかなかったからである。ドラフト後の報道で、一部投げている映像が確認できたので、フォーム分析とその印象を述べてみたい。


(印象)

 なるほどす凄いボールを投げ込むという噂通り、全身を使って投げる力投派。そのため、150キロぐらいは出ているのではないかという迫力の球を投げ込んでいました。純粋に素材だけで言えば、なるほど破格のロマン枠といった感じがします。しかし履正社において投手として公式戦で投げられなかったのは、それなりの理由はあったからなはずで、その辺は少し割り引いて考えた方が良さそうです。

 また彼の登板した練習試合には、指名したソフトバンクバンクだけでなく中日のスカウトも視察に訪れていたという。しかしその中日がまだ指名して来なかったので、ソフトバンクは育成会議では先に指名されるのを恐れたのか? 本会議での指名にしたのではないのだろうか。


(投球フォーム)

 腕の振りが凄いので、スライダーの曲がりも尋常ではないらしい。ただし、それが制御できているのかどうかは不明ではある。ちょっとこういった話を聞くと思い出すのが、北方 悠誠(元DeNA)のことである。彼のその後を考えると、ちょっと気になるところではあるのだが・・・。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻の一塁側への落としには甘さが残る。そのためカーブやフォークといった捻り出して投げる球種が投げられないことはないと思うが、ブレーキや落差が鈍る危険性は否定できない。現時点で変化球が、スライダー・チェンジアップ・カットボール・ツーシームなどだそうで、球速のある変化球が多いのも頷ける。

 「着地」までの粘りはある程度あって、身体を捻り出す時間はそれなりに確保できている。したがって武器になるほどの変化球を身につけられるかは微妙だが、いろいろな球種を投げられる下地はあるのではないかとみている。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできている。そういった意味では軸のブレを抑えて、両サイドへのコントロールはつきやすいのではないかと。しかし全身を使って投げ込む力投派なので、そのぶんブレてしまうことも否定できない。

 足の甲の地面への捉えができているようには見えるのだが、その時間が短めなのではないかと。ゆえに充分に浮き上がろうとする力を、抑え込めているのかは微妙。球持ちもけして良いというほどではないので、やはりコントロールはかなり暴れるのではないのだろうか。これだけのボールを持っていてボールを制御できていれば、試合に出さないはずはないのだから。それでもフォームの観点で言えば、そこまでめちゃくちゃにはみえない。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、適度に一塁側には落ちている。またカーブやフォークといった捻り出して投げるボールも使っていないようなので、窮屈になり難く肘への負担はかかり難いとみている。

 その一方で、ボールを持っている肩は上がりグラブを持っている肩が上がるなど、ボールの送り出しには多少の無理が感じられる。したがって、肩への負担は少なくはないだろうと。また最後には前に覆いかぶさるほどのフィニッシュのため、登板過多になれば疲労は溜めやすい。そういった部分ことでフォームが崩れ、故障に繋がらないかは心配にはなる。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは適度に作れており、さらにボールの出どころも隠せていたので、合わされやすいということは無さそう。腕の振りが尋常ではないので、それだけ勢いがあるだけに空振りを誘いやすいのでは? しかし投げ終わったあと、一塁側に大きく流れるなど、作り出したエネルギーをダイレクトにボールに伝えきれずロスしている、球速ほど速く感じられるのか? には少し懐疑的にはなっています。

(フォームのまとめ)

 ほんの僅かな映像だけではわかり難いところもあったのですが、フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「体重移動」などに改善の余地があるのではないかと感じました。将来的に武器になる変化球を習得できるかも微妙なのですが、やはり課題は制球力や故障のリスクだと考えます。それだけに日頃から、身体のケアには充分気をつけて欲しいものです。


(最後に)

 本当に僅かな映像を元に書いているので、レポートを作成するのにも無理は感じます。そのため実際の投球とは、かなり違っている可能性もあります。ぜひ投球を確認できた時に、このときのレポートの内容と比較して、彼の実像とどのぐらい開きがあるのか、私自身楽しみにしています。当然これだけの材料では評価付けはできませんし、こういった超素材型をソフトバンクがどう育成するのかにも大変興味深いものあります。第二の千賀滉大になりうる選手なのか、少し長い目で見守りたいと思った次第です。